あおしろみどりくろ

楽園ニュージーランドで見た空の青、雪の白、森の緑、闇の黒の話である。

全く子供ってヤツは世話がやけるぜ。

2016-06-18 | 
今は冬が始まる前に色々な家の仕事をする時期である。
大体、秋と春に2回石鹸作りであったり、土作りであったり、そういったイベントがあるのだが1年に1回のイベントもある。
ニワトリの入れ替えである。
まあ簡単に言うと古くなったニワトリを絞めて食っちまって、新しく買ってくるのだ。
まず古いヤツ、と言っても一昨年買ったヤツを絞めるところから始まる。
もう卵を産まなくなって久しいので可哀想だがあの世にいってもらおう。
捕まえる前に手を合わせ感謝の意をブツブツと唱える。
「今まで美味しい卵を産んでいただきありがとうございます。君の命は余すことなくいただきますので、ちょっと怖いだろうけど堪忍ね」
そして鶏を捕まえて足を縛り、木にぶら下げて頭に血を昇らせる。
犬のココは既に察したのか興奮しているが、家の中に閉じ込めておく。
ガラス越しに外に出たそうにして恨めしそうにこちらを見ているが、ニワトリの貴重な命はココのおもちゃではない。
しばらくして鶏がぐったりとしたら、首元の血管をナイフでザクッと切る。
毎度のことながらあまり気持ちの良いものではないが、これもまた避けては通れない道である。
手を合わせお経でも唱えてあげたいところだが、あいにくお経を知らないのでナンマイダナンマイダと唱える。
鶏は血をたらーっと流して時折痙攣したが、やがて静かになった。
人間も動物も鳥も死ねば全てホトケ様、ここからは作業である。
先ず羽根を毟るのだが、そのために熱い湯に浸す。
もう死んでしまったから犬が来ても恐怖を感じないだろうと、出たがっていた犬を出したら、そののココがやってくれた。
僕が家の中でお湯を汲んでいるわずかな隙にニワトリの首元をかじっていたのだ。
「あー、このバカ!お前、それはフライングだぞ!」
ココの頭に拳骨をゴツン。
あたりは既に毛が散らばり、噛み千切られた胃袋から未消化の餌がこぼれた。
きれいにやらないと、後片付けが大変なのだ。
まずお湯に浸し毛穴が開いたところから毛を毟っていくのだが、ココは毟った毛の根元を噛んだり食べたりしている。
あらかた毟ったところで頭を切り落とし、そこに転がしておくと、ココは尻尾を振りながら、バキッガキッと食い始めた。
まあ食うのは勝手だがそれを見たくないので背中を向けて作業を続ける。
次に足を切り落とすと、それも生のままバキバキとやっている。
よく犬に鳥の骨を与えるのは悪いなどと聞くが、我が家の場合、これで死んだらそれが寿命だと思ってあきらめてもらおうという方針だ。
なので鳥の骨も豚の骨も鹿の足も魚の頭も全部与える。
食えるものは自己責任で食え。
手羽も元から切り落としたら、細かい羽根ごと食っちまった。
ワイルドだなあ。
さてここからは家の中での仕事だ。
はらわたを出す作業は肛門の周りを切り取り、腸を傷つけないように手で掻きだす。
何回もやるうちにコツを掴んできたのだな、今回はレバーも崩れないように出来た。
レバー、心臓、砂肝は人間用にとっておいて塩焼き。
モツは中のウンコを洗い流し、卵管や卵巣、その他の何か分からない器官と一緒に茹でたらココが喜んで食った。
あとは骨から肉を外しガラにする。
肉はとても固いので後から叩いてつくねにしよう。
ガラはスープを取りカレーにした。
その鶏ガラもココが喜んで食う。
こうやって名無しの鶏一匹、跡形も無く消滅した。
これでいいんだと思う。

さて残りは1歳のニワトリ3羽。
ここに3羽買い足すのだ。
女房と一緒に家から30分ぐらいのドライブでアカロアへ行く途中のリトルリバーという所へ行く。
ギャラリーを覗き気に入った小物を買い、こ洒落たカフェでコーヒーとケーキの後で養鶏場へ。
養鶏場と言っても牧場の一角にあり、建物の中ではなく放し飼いである。
女の人が慣れた手つきでニワトリを箱の中へ押し込む。
「はいはい、そんなに暴れなくていいわよ。新しいお家へ引っ越すんだから」
なんかほのぼのしてていいなあ。
今回買ったニワトリは生まれて3ヶ月ぐらいのもの。
ちなみに気になるお値段は1羽$28なり、3羽で$84毎度あり~、ちーん。
この種のニワトリは卵をたくさん産む種類で、1日1個毎日産む。
2歳近くまで産み続けるから400から500個ぐらいの卵を産むだろうか。
多い時には1日6個の卵である。
家で食べきれない時には近所や友達へおすそ分け。
我が家だけでなく友達家族をも幸せにしてくれる。
その投資として考えれば安いものだ。

さて無事に我が家へ着き、ニワトリ達が恐る恐る箱から出てくる。
そうそう最初に羽根を切らなきゃ。
ある程度大きくなってからだが重くなると飛ぶのをあきらめるが、若くて軽いうちは習性なんだろうな、高いところへ飛ぼうとする。
ニワトリエリアに植えてあるいちじくの木の枝の、上の方へ上の方へと行きたがる。
いちじくの木に登るぐらいならかわいいものだが、飛んでフェンスを飛び越えたら、そのままココの餌食になってしまう。
なので羽根を切るのだ。
そして毎回恒例だが、いじめ問題。
ニワトリの世界にもいじめはある。
これはもうどうしようもない。
どこぞの教育委員会のように「君たちいじめはいかん。やめなさい」などと言ってもやめるわけがない。
なので本人達でなんとか解決してもらうしかないのだ。
先輩方は後輩が餌をつつくのが気に入らないようなので、最初のうちは餌をふんだんに与える。
そうするとだいたい1週間ぐらいで逃げ方も上手くなり、そのうちに仲良くやるようになるのだ。
人間の世界でもこれぐらい上手くやってくれたらなあ。
よく人間の世界でのいじめは「いじめられる方は悪くなくいじめる方が悪い」と思われがちだがそれは違うと思う。
どちらが悪いという考え方では解決しない問題だろう。
極論で言えば、どちらも悪くなくどちらも悪く、どちらにも責任はある。
僕も昔いじめられたこともあるし、いじめたこともある。
一つの事柄を被害者は善で犯人は悪という考えではなく、双方で一つの事柄を起こしたという考え方。
ちなみにこの考え方は今の世の中ではあまり受け入れられない。
人間は表面だけ見て全てを把握したいのだが、目に見えないことが鍵になっているということはいくらでもある。
もっと言えば目に見えない物事の方が大切なのに、人間はそこから目を背けている。
話が脱線したな。
夕方になると先輩方はさっさと止まり木に登り寝る体制になるのだが、若い奴らは鳥目の癖に宵っ張りなのか、新居になれていないのか、いつまでもうろうろしている。
そいつらを捕まえて止まり木に止まって寝ることを教えてやるのだが、そのままちょこんと座る物もあるが、落ち着かないヤツもいる。
落ち着かないヤツは先輩方の方へ行き、つつかれることもあるし、時には先輩を止まり木から下ろしてしまうこともある。
暗くなってからニワトリ小屋へ行き、下で寝ているヤツを止まり木の上へ乗せてあげる。
真っ暗になるとさすがに下が見えなくて観念するのか、そのまま寝る。
これまた慣れるのに1週間ぐらいかかる。
全く子供ってヤツは(人間でも動物でもニワトリでも)世話がやけるもんだぜ。
そこが可愛いんだけどね。



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