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福島時代と北海道転居後の記事へのアクセス数について

2013-05-09 00:38:32 | 運営方針・お知らせ
すでにお気づきの方も多いと思うが、gooブログの仕様がいつの間にか変更されたらしく、個別の記事をクリックで表示させると、記事の下にそのブログにおけるアクセス数上位5エントリが表示されるようになった。スマートフォンでの閲覧では、このランキングが10位まで表示される。詳細なアクセス解析を導入していなくても、どんな記事に人気があるのかの大まかな傾向をつかむことができる。

当ブログでも、福島時代の3月頃からこのランキングを利用し、どんな記事に人気があるのかの傾向をつかむ作業を続けてきた。そのランキングに、福島時代と北海道移転以後、明確な変化が現れた。

福島時代、上位に来るエントリは原発関係記事が多かった。当ブログが鉄道メインであるにもかかわらず、筆者の活動や執筆が原発関係に偏っていたこともあり、原発関係の記事が最もよく読まれていたようだ。

これに対し、北海道移転後は明らかに鉄道関係記事が多く読まれるようになった。特に、JR北海道で再びトラブルが増えているためか、JRの安全問題関係の記事がとても読まれている。

特に人気がある記事は、安全問題ではないが、「メリットなく納得できない田子倉駅廃止」の記事だ。ランキングを確認するようになってから、ほぼ毎日トップ10入りしている。田子倉駅に目を向け、存続を訴える記事が他に少なく、珍しいのかもしれない。

いずれにせよ、北海道への移転は当ブログにとってひとつの区切りになったことは確かだ。鉄道関係の記事が多く読まれるようになったことは、本来の姿に戻ったともいえるが、とはいえ6年(震災以降は2年)もの期間を過ごした福島の問題を忘れるわけにもいかない。引き続き、鉄道や福島原発の問題を中心に、情報発信を続けていきたい。

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JR北海道で再び相次ぐトラブル~背景に規制緩和、マニュアル違反のずさん検査

2013-05-07 23:37:02 | 鉄道・公共交通/安全問題
このところ、JR北海道で再び安全に関するトラブルが目立ってきている。4月8日、特急「北斗20号」でエンジンから出火するトラブルが起きたのに続き、5月5日には特急「スーパーカムイ」で床下から出火、大型連休の繁忙期輸送を直撃した。特に、「スーパーカムイ」はこれまでになかった新しい形のトラブルとして注視する必要がある。過去のJR北海道の車両トラブルがほぼすべて特急用気動車であったのに対し、「スーパーカムイ」は電車であり、しかも床下から出火した789系1000番台車は2007年の登場からわずか5年の若い車両だからである。常識的に考えて、物持ちの良いこの業界で登場から5年でのトラブルなどあり得ない。

JR北海道に関しては、トラブル全国の倍 車両不具合多く(毎日)という報道も行われており、まさに異常事態というべきである。

<参考資料1>4月8日発生 特急北斗20号のエンジンが破損した事象について(JR北海道プレスリリース)

<参考資料2>特急スーパーカムイ6号の床下から出火したトラブルについて(JR北海道プレスリリース)

4月にエンジントラブルを起こした特急北斗の車両は、過去に発煙が発生した「スーパー北斗」(キハ283系)とは異なり、キハ183系である。国鉄時代に開発されたキハ183系と同系列で、JR北海道では1989年から製造が始まっている。古い車両ではあるが、これよりも古いキハ181系が、つい最近まで山陰地方などで問題なく使用されていた事実から考えれば「古い」がトラブルの理由とは考えにくい。

先日の「スーパーカムイ」に関しても、寒冷地仕様で車軸に凍結防止用のゴム製カバーを装着していたことが原因とする報道もあるが、同じ寒冷地であるJR東日本(東北地区)の車両でもこのような事例は起きていない。やはり、これを原因とするには材料不足といえる。

当ブログと安全問題研究会は、こうした一連のトラブルが続いている原因として、北海道特有の鉄道事情があるのではないかと考えている。通常の在来線車両の場合、40~50年も現役で活躍するものもあるが、こと北海道に関する限り、同じような考え方をしてはならない。なぜなら、北海道の特急気動車には、新幹線と同じように1回あたりの走行距離が長く、しかも高速運転が多いという特徴があるからである(たとえば、2011年に石勝線トンネル内で火災を起こした特急「スーパーおおぞら」が走る札幌~釧路間の営業キロは348.5キロメートルもあり、東京~名古屋間にほぼ匹敵する)。こうした使用条件の下では車両の劣化も新幹線車両並みのスピードで進行していく。1985年に登場した東海道新幹線100系が2005年には東海道区間の「ひかり」運用から引退したことを考えると、北海道の特急用気動車も概ね20年程度が限界といえるのではないだろうか。

特急「北斗20号」のトラブルについては、4月17日付「北海道新聞」が興味深い報道をしている。「JR特急出火・交換間隔短縮に甘さ~同一部品、昨年21万キロで破損 『25万キロ』再発防げず」との見出しがついたその記事は、JR北海道が定めている基準では事故を防止できない、として以下のように伝えている。「…特急北斗の出火トラブルに関連し、昨年9月にも今回と同じ走行距離21万キロで同じエンジン部品が破損していたにもかかわらず、JR北海道がその後の再発防止策で、部品交換の基準を『25万キロ』としていたことが16日、分かった。基準はそれ以前の『50万キロ』の半分になったが、実際に部品の破損が起きた距離よりは長く、結果的にトラブルの再発を防げなかった」

JR北海道は、2012年9月にトラブルが起きるまで、なんと走行距離が50万キロにならなければ部品の交換をしなくて良いことにしていたのである。さすがにこれでは安全確保ができないと見て基準を半分にしたが、部品劣化のスピードが早く、それでも追いつかなかったわけだ。

もちろん、甘すぎて無意味とまではいわないが「ないよりはマシ」程度の基準しか定めていなかったJR北海道に対し「安全意識が足りない」と批判することは簡単だし、それは必要かつ正当な批判である。しかし、当ブログと安全問題研究会は、もうひとつ重大な事実を指摘しなければならないと考えている。それは国土交通省の責任である。

国土交通省は、内燃動車(いわゆる気動車のこと)の検査周期について重大な規制緩和を行っている。「鉄道運転規則の一部を改正する省令の制定について」と題された平成13(2001)年9月12日付の発表文には次のように記されている…「従来より、検査周期については、安全規制の合理化の観点から鉄道車両の各装置の耐久性の向上等を踏まえ、延伸を行ってきているところである。今般、鉄道車両のうち内燃動車及び内燃機関車について走行試験等の結果より、検査周期の延伸に対する安全性が確認されたことから所要の改正を行うこととする」

そして、内燃動車の検査周期(エンジン、車輪、ブレーキなど重要な装置の検査)については次のとおり緩和し、2001年9月11日から実施している。(参考資料

(改正前)「3年を超えない期間(ただし、新車は使用開始から4年を超えない期間)または走行距離が25万キロメートルを超えない期間のいずれか短い方」に1回

(改正後)「4年を超えない期間または走行距離が50万キロメートルを超えない期間(ただし、予燃焼室式の内燃機関又はクラッチが乾式である変速機を有するものについては、25万キロメートルを超えない期間)のいずれか短い方」に1回

JR北海道の「ないよりはマシ」程度の安全基準は、国土交通省が「お墨付き」を与えたものだったのだ。JR北海道が昨年9月のトラブル後、走行距離50万キロから25万キロに部品の交換周期を改正したとしても、結局は国土交通省による規制緩和前に戻しただけに過ぎないのである。

(厳密に言えば、国土交通省の規制は検査周期に関するもの、JR北海道の基準は部品交換の周期に関するものだから、その意味は微妙に異なるが、検査が50万キロに1回しか行われなければ、大規模な修繕のチャンスも50万キロに1回しか来ないから、実態としては同じことである)

昨年、そして今回の「北斗20号」のトラブルは走行距離21万キロで発生しているから、仮にこの規制緩和がなかったとしても防ぎ得なかったことになる。しかし、当ブログと安全問題研究会は、そのことをもって国土交通省を「免罪」にする気はない。規制緩和は鉄道事業者を心理的に弛緩させる効果を持つからである。この規制緩和がなければ、鉄道事業者はもっと緊張感を持って安全維持に努め、その結果、今回のトラブルは起きずにすんだかもしれないのだ。

JR北海道の検査もきわめてずさんなものだった。昨年秋、JR北海道に対し、会計検査院が行った会計検査(注)により、交番検査を自社のマニュアル通りに行っていなかった例、検査記録の管理が車両基地ごとにまちまちなため、車両の保守管理に支障を来している例があることなどが指摘されている。会計検査院は、こうした事態を看過できないとして、JR北海道に対し、「是正改善の処置」を行うよう求めている。

<参考資料3>平成23年度決算検査報告~団体別の検査結果

●北海道旅客鉄道株式会社
鉄道車両の定期検査及び検査修繕において、実施基準等に基づく実施と検査記録の適切な整備を図るとともに、車両システムを車両の保守管理に有効に活用することができるよう改善の処置を要求し、請負契約による車両部品の検査修繕の結果が適切に記録されて報告されるよう是正改善の処置を求めたもの

同様のずさんな車両検査体制はJR四国にも見られるとして、会計検査院はJR四国に対しても「是正改善の処置」を求めている。

<参考資料4>平成23年度決算検査報告~団体別の検査結果

●四国旅客鉄道株式会社
請負契約による鉄道車両の定期検査において、実施基準等に基づいて実施され、検査の結果が適切に記録されて報告されるよう是正改善の処置を求めたもの

JR北海道は、特急「北斗20号」のトラブルを受け、部品の交換周期を当面、6ヶ月に1度とすることを決めた。これにより、走行距離で見れば10万キロ程度に1回の頻度で部品交換が行われることになる。国の基準より大幅に厳しい「自主規制」を行うことになるが、ここまでトラブルが続発した以上、やむを得ないと思う。

会計検査院からの指摘もふまえ、JR北海道にはより抜本的なトラブル防止対策を強く望む。

注)民間企業であるJRに対し、なぜ会計検査院が検査に入るのか、と疑問を持つ読者もいるかもしれない。会計検査院法23条により、「国が資本金を出資したものが更に出資しているものの会計」について、必要があれば会計検査院が検査を行うことができる旨が定められている。JR三島会社(北海道・四国・九州)の株式は、現在、独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構(鉄道・運輸機構。旧・国鉄清算事業団)が全て保有しており、鉄道・運輸機構には国が出資しているから、JR三島会社はこの条件に該当する。これに対し、本州3社は全株式が民間に放出された純粋な民間企業であり、会計検査院が検査に入ることはできない。

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<再掲>JR北海道列車脱線・炎上事故の意味するもの

2013-05-06 22:31:46 | 鉄道・公共交通/安全問題
(この記事は、当ブログ管理人が2011年7月に季刊誌に発表したものです。2年近く前に執筆したものですが、最近、JR北海道で安全に関するトラブルが再び相次いでいることをふまえ、当ブログにも掲載することとしました。なお、掲載に当たり、文字化けのおそれがある丸数字のみ、カッコ付き数字に改めました。)


 北海道占冠(しむかっぷ)村のJR北海道・石勝(せきしょう)線のトンネル内で今年五月、走行中の特急列車「スーパーおおぞら一四号」が脱線・炎上した事故は、乗客四〇人が病院に搬送される重大事故となった。幸いにして死者はなかったが、トンネル内の列車火災としては戦後最悪の死者三〇名を出した北陸トンネル急行「きたぐに」列車火災(一九七二年)を上回る惨事になりかねなかった。

 犠牲者がゼロですんだのは、(1)長さ一三,八七〇メートルという長大トンネルのほぼ中央で火災が発生した「きたぐに」に対し、今回の事故が起きたトンネルが長さ六八五メートルと短かったため乗客の脱出が容易であったこと、(2)「きたぐに」の火災では食堂車の燃料(木炭)が火元となって有害な一酸化炭素が発生したのに対し、今回はそのような事態が起こらなかったこと…などいくつかの幸運が重なったこともある。しかし、最大の要因は車掌の制止を振り切り、機転を利かせて自主的に脱出した乗客がいたことだ。脱出した乗客は「JRから避難誘導はなく、自分で逃げなければ死んでいた」という。

 ●利益優先の高速化と酷使による車両老朽化

 今回の事故は推進軸の破損から始まったとみられている。推進軸とはエンジンやモーターなどの動力を車輪に伝えるきわめて重要な部品であり、細長い形状をしている。自動車でいえばシャフトに当たるものだが、鉄道車両の中でも常に強い力がかかり続ける部品であるため、高い強度を持つように設計されている。それでも、鉄道車両の中で最も酷使される部品であり、現在でも時々、破損事故が起きている。

 運輸安全委員会による事故調査の結果はまだ発表されていないが、推進軸が破損した後、その一部が車輪とレールの間に入り込み、その上を通った車輪が乗り上げて脱線が起きたとみられている。火災に関しては、破損した部品の一部がエンジンか燃料タンクを傷つけたことが発生原因であろう。

 今回事故を起こした車両はキハ二八三系と呼ばれ、民営化後の一九九六年から登場したものである。登場から今年で十五年目だ。鉄道ではそれほど古い部類には入らないが、この車両がよく事故を起こしている。二〇〇九年二月、函館本線で起きたブレーキ部品脱落事故もこの形式の車両である。

 在来線車両の場合、四〇~五〇年も現役で活躍するものもあるが、こと北海道に関する限り、在来線車両なのだから本州と同じように長期の使用に耐えるという考え方をしてはならない。新幹線がなく、札幌都市圏を除けばほとんどの路線が非電化区間(=ディーゼル運転)である北海道では、気動車特急が都市間輸送の重要な役目を果たしている。北海道の特急気動車には、新幹線と同じように一回あたりの走行距離が長く、しかも高速運転が多いという特徴がある(特急「スーパーおおぞら」が走る札幌~釧路間の営業キロは三四八・五キロメートルあり、東京~名古屋間に匹敵する)。こうした使用条件の下では車両の劣化も新幹線車両並みのスピードで進行していくのである。一九八五年に登場した東海道新幹線一〇〇系が二〇〇五年には東海道区間の「ひかり」運用から引退したことを考えると、北海道の特急用気動車も概ね二〇年が限界といえる。

 JR北海道の無謀ともいうべき高速化も指摘しておく必要がある。あまり知られていないが、鉄道車両のディーゼルエンジンは自動車のエンジンのように、走行中ずっと動力をかけ続けるような使用を想定していない。むしろ、規定速度に達したら動力をかけるのをやめて慣性によって走行し、速度が落ちてきたらまた動力をかけるという運転形態のほうが一般的である。

 そのような中、JR北海道の特急気動車は、走行中ほとんど動力をかけたまま最高速度を維持するという運転形態が採られている。JR北海道では六月にもエンジンから煙が上がる事故があったが、こうした想定外の酷使と無関係ではない。

 背景には、北海道内輸送を巡る航空との競争がある。一〇七人の命を奪ったJR西日本と同じ利益優先、安全軽視の暴走はJR北海道でも顕著である。

 ●消えた座席…不十分な安全基準

 ところで、全焼後の車両の写真をメディア報道で見たとき筆者は強い衝撃を受けた。車内にあったはずの座席が完全に焼け落ち、姿を消していたからである。

 筆者が二〇〇八年、情報公開制度を利用して入手した「鉄道に関する技術上の基準を定める省令の解釈基準」(国土交通省鉄道局長通達)を見直してみた。驚くことに、新幹線と地下鉄以外の車両では座席の表地にこそ難燃性の材料の使用を義務づけているが、詰め物にその義務はない。多くの乗客の命を預かる鉄道車両の安全基準がこんなものでいいはずがない。

 新幹線や地下鉄以外の路線でも、近年開業した新線を中心に長大トンネルが次第に増えてきている。全ての鉄道車両で座席の表地も詰め物も難燃性の材料使用を義務づける方向で安全基準の改正が必要である。

 ●安全闘争に取り組まない労働組合

 安全を厳しく監視すべき労働組合はどうしているのか。JR北海道労働組合は事故から一か月近く経った六月二一日になってようやく「安全確保に向けたアピール」を出し、五月三〇日に「原因究明を求める会社への申し入れ」を行ったことを公表した。しかし、列車は日々走っているのだ。労働組合としてこの動きはあまりに遅い。JR東日本や西日本の国労組合員のように、会社の安全対策を現場から問い直す試みもほとんど見られない。労働組合も機能不全だ。

 二〇〇九年一月、江差線で下請業者の信号配線ミスにより、赤が表示されるべきところに黄が表示され、あわや追突という事態が起きた。同年一二月には富良野駅で除雪車と快速列車の衝突事故も起きている。これらの事故の深刻なところは、通常のようなフェイルセーフ(事故の際、最も安全な措置がとられること)の作動による事故ではなく、フェイルセーフ欠落が招いた事故であるということだ。これは尼崎事故直前のJR西日本と酷似している。このままではいずれ死亡事故の発生は避けられない。

 筆者は今この原稿を福島で書いている。福島では母親や子どもが避難の権利を求めて闘っているが、現状では自主避難に経済的・社会的補償はない。原発もJRもグローバル資本が引き起こした事故で避難しなければ命も危ないのに、避難命令はどこからも来ず、避難は決断も実行も全て自己責任だ。こんな呆れた「自己責任」社会はいったいいつまで続くのか。

(2011年7月)

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