文章表現力アップ
なお、以下、コミュニケーション力アップのすべてにわたり、その基礎には、受け手の頭の働きのくせに配慮したコミュニケーションという観点――私は、これを認知表現学と称していますがーーがあります。
●メリハリ表現をーー文章表現力アップその1
図の左側に示したのは、バスの非常口の開け方です。実例です。しっかりと読めば、内容的には正確で情報的にも充足しています。しかし、いざというときに、こんな表示を読んでもらえるでしょうか。
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「実例」
非常のときは、レバーをまわし、座席を前に倒し、
非常ドアをあけて、外に出る。
「メリハリをつけた表現に改訂」
非常のとき
(1)レバーをまわす
(2)座席を前に倒す
(3)非常ドアをあける
(4)外に出る
かりに文字ばかりで書かれた文書であっても、図右に示したように、メリハリのある書き方をすれば、それなりの表示効果を期待できるはずです。
メリハリ表現とは、意味のまとまり(区別化)と大事さの程度(階層)が、一目でわかるようにしたものです。
●意味のまとまりが見えるようにする
メリハリをつけるためには、まずは、意味のまとまり(チャンキング)の可視化が必要です。
さきほどの例なら、箇条書きの形で「1文1動作」になっているところです。
文書は、読んでわからせるのが王道なのですが、見ただけで読み方がわかるようにすることもまた大事なのです。
お遊び例を一つ。次のひらがな文はどうでしょうか。
「うらにわにはにわにわとりがいる。なかにわにもにわにわとりがいる」
「うりうりがうりうりにきてうりうりのこしうりうりかえるうりうりのこえ」
見た目では、なかなか理解しにくいですね。
日本の通常表記である漢字かな混じり文にして、読点を入れれば、正確かつ迅速にわかってもらえるはずです。
文書作成でよく使う小見出しにも、大きな意味的まとまりを見せる効果があります。
一定の長さの文書になると、内容的にもいくつかのユニットに分かれます。その分かれ目に小見出しを入れます。
なお、小見出しをつけるようにすると、書くときにも、より一層、内容の精選をするようになる副産物もあります。
●大事さを見せる
意味的なまとまりの可視化の次は、内容の大事さの可視化です。
話は簡単です。大事さの程度に応じて、目立ちやすさを変えるだけです。
たとえば、本書では、部―>章―>節―>小見出しの順に活字の目立ちやすさを変えています。
これを階層化と呼んでいます。
目立つものには注意が向きます。注意されたものは、深く処理をされます。ですから、大事なものを目立つようにしておくのです。
●適切なタイトルをーー文章表現力アップその2
一定の長さの文書には、タイトルを付けます。そのことは誰もが知っているのですが、どんなタイトルを付ければよいかについては、意外に無頓着なところがあります。
まず、タイトルは、文書をわかりやすくする要(かなめ)であることを知っておく必要があります。
ここでまたお遊び。下に示した文書を読み、これが何のことを述べたものか考えてみてください。
「その手順はまったく簡単です。まずものをいくつかの山に分けます。もちろんその全体量によっては、一山で十分でしょう。もし次の段階に必要な設備がないためどこか他の場所へ移動する場合を除いては、準備完了です。一度に沢山やりすぎないことが大切です。沢山にやりすぎるより、少なすぎる方がましです。すぐにはこの重要さがわからないかもしれませんが、めんどうなことになりやすいのです。」
(ブランスフォードによる)
この文書にタイトル「洗濯をする」を付ければ、たちどころに内容が理解できるようになってくるはずです。試しにもう一度、読んでみてください。
どうしてこういうことになるかと言うと、タイトルを見ると、それに関する頭の中の知識が活性化するので、文書に書かれたあいまいな内容が取り込みやすく(既有知識と関連づけしやすく)なったからです。
そこで、タイトルをつける際のポイントを一つだけ紹介しておきます。
それは、具体的でイメージのわきやすい内容にすることです。
多くのタイトルは、マクロで抽象的なものになりがちです。「かぜの予防」「かぜをひかないように」といった類です。
これはこれで、文書全体で言いたいことをおおまかにわかってもらう効果はあるのですが、それが、かえって、「そんなこと自分は関係ない」「また風のはなしかー」となりがちです。
それよりも、「うがいでかぜを防ごう」「冷えすぎによるかぜに注意」のように、その文書で言いたいことの核心をずばりタイトルにもってきたほうが、読み手の注意を引く効果は大きし、場合によっては、タイトルだけしか読んでくれない人にもそれなりの効果を期待できます。
マクロで抽象的なものをサブタイトルとして使うと、なお効果的です。
●読ませる工夫もーー文章表現力アップその3
文書は作る側からすると、かなりしんどい仕事になります。そのためもあってか、自分の作った文書は受け手に読まれて当然との錯覚をしがちです。
しかし、考えてもみてください。読み手も、読んで理解するのは、かなりの努力がいるのです。努力に値する文書かどうかをタイトルや小見出し、さらにはレイアウトなどから瞬時に判断することに長けています。その点の配慮も必要です。
時には、「ぜひ、この文書は読んでほしい」との気持ちを文書に込めることも必要なのです。それには、広告宣伝で使うアイドマ(AIDMA)の法則を知っておくとよいかと思いますので紹介しておきます。
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Attention 目立たせて注意を引く
例;大事なところに色を付ける
Interest 興味、関心、利益に訴える
例;「かぜの予防はクラスを救う」
Desire 欲求に訴える
例;「かぜのつらさよりうがいをする ほうが楽」
Memory 覚えてもらう
例;手を変え品を変えて何度も繰り返して伝える
Action 行動してもらう
例;先着順です
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