記念講演「ヒューマンエラーを防ぐためのマニュアル作り~認知心理学からの提案」
講師:テクニカルコミュニケーター協会会長 筑波大学心理学系 海保博之さん
総会に先立っての記念講演では、「ヒューマンエラーを防ぐためのマニュアル作り」と題して、この総会を最後に協会会長の任を離れることになった海保博之さんが次のようなお話をされました。
●ヒューマンエラーを分類する
人間がなにかを為すときには、使命(MISSION)があり、それに基づいて計画(PLAN)・実行(DO)・評価(SEE)のサイクルを実行する。人間の行為の、このM-PDSの枠組みに沿ってヒューマンエラーを分類してみる。使命(行為の意義、大枠)の段階では、「使命の取り違えエラー」(やってはいけないことをしてしまう)がある。計画においては「思い込みエラー」(勝手な思い込みによるミステイク)が、実行においては「うっかりミス」(やるべきことをしない、余計なことをしてしまう)が、そして評価においては「確認ミス」(やるべきこと、やったことを確認しない)がある。
これから、仕事の手順書を制作することを念頭において、これらのエラーを防ぐための指針を探ってみたい。
●使命の取り違えエラーを防ぐ
使命の取り違えエラーの例を、タクシーの運転手さんのケースで見てみる。この運転手さんの属している会社が「安全第一」を使命としている場合、「飛行機に乗り遅れそうだから空港まで飛ばしてくれ」という客に対しては「当社は安全運転第一。お急ぎならばほかの車を探してください」ということができれば正解。ところが、親切心からあえてこの使命を無視する、ということが起こりやすい。こういった使命の取り違えをさせないためにはどうすればよいか。手順書においては、「使命を明確に書く」とともに、「その手順で仕事をすることの意味や理由を明示する(納得させる)」ことが重要になる。
●思い込みエラーをさせない
思い込みエラーを定義的に記述すると、ある状況のもとで誤った計画を立ててしまい、それを忠実に実行した結果生じるエラー、ということになる。たとえば、引越しで寝室のレイアウトが変わったにもかかわらず引越し前のレイアウトを想起してベッドにぶつかってしまう、など。思い込みエラーをさせないためには、手順書においては「新しい仕事の手順説明にはたとえや具体例を使ってわかりやすさを組み込む」、「違いを強調することで、誤った旧知識の投入をふせぐ」、「局所と全体、ミクロとマクロを往復することで適切な状況認識を導く」、「意義、因果を説明する」といった指針が考えられる。
●うっかりミスをさせない
うっかりミスは、そのほとんどが注意不足から起こる。頻度からするともっとも起こりやすいのがうっかりミス。注意資源を正しく活用し、注意の自己管理のくせを知った上で手順書を作る必要がある。「フロッピーをセットしてください、というような、手順をマクロ化した表現は避ける」、「1動作ごとに1文を充て、そのとおりに操作できるようにメリハリをつけ、ビジュアル表現を利用する」、「予想される危険、エラーはあらかじめ書き、かつ起こりそうなところにも書く」といった方策がある。
●確認ミスを防ぐ
エラーを防ぐために確認をするのだが、確認が習慣化してしまうと、確認することを怠ったり、確認そのものを間違える、ということが起こる。確認ミスは起こるもの、という前提で、「操作の結果を示す」、「確認行為も手順のひとつとして記述、指示する」といった対応が考えられる。
講師:テクニカルコミュニケーター協会会長 筑波大学心理学系 海保博之さん
総会に先立っての記念講演では、「ヒューマンエラーを防ぐためのマニュアル作り」と題して、この総会を最後に協会会長の任を離れることになった海保博之さんが次のようなお話をされました。
●ヒューマンエラーを分類する
人間がなにかを為すときには、使命(MISSION)があり、それに基づいて計画(PLAN)・実行(DO)・評価(SEE)のサイクルを実行する。人間の行為の、このM-PDSの枠組みに沿ってヒューマンエラーを分類してみる。使命(行為の意義、大枠)の段階では、「使命の取り違えエラー」(やってはいけないことをしてしまう)がある。計画においては「思い込みエラー」(勝手な思い込みによるミステイク)が、実行においては「うっかりミス」(やるべきことをしない、余計なことをしてしまう)が、そして評価においては「確認ミス」(やるべきこと、やったことを確認しない)がある。
これから、仕事の手順書を制作することを念頭において、これらのエラーを防ぐための指針を探ってみたい。
●使命の取り違えエラーを防ぐ
使命の取り違えエラーの例を、タクシーの運転手さんのケースで見てみる。この運転手さんの属している会社が「安全第一」を使命としている場合、「飛行機に乗り遅れそうだから空港まで飛ばしてくれ」という客に対しては「当社は安全運転第一。お急ぎならばほかの車を探してください」ということができれば正解。ところが、親切心からあえてこの使命を無視する、ということが起こりやすい。こういった使命の取り違えをさせないためにはどうすればよいか。手順書においては、「使命を明確に書く」とともに、「その手順で仕事をすることの意味や理由を明示する(納得させる)」ことが重要になる。
●思い込みエラーをさせない
思い込みエラーを定義的に記述すると、ある状況のもとで誤った計画を立ててしまい、それを忠実に実行した結果生じるエラー、ということになる。たとえば、引越しで寝室のレイアウトが変わったにもかかわらず引越し前のレイアウトを想起してベッドにぶつかってしまう、など。思い込みエラーをさせないためには、手順書においては「新しい仕事の手順説明にはたとえや具体例を使ってわかりやすさを組み込む」、「違いを強調することで、誤った旧知識の投入をふせぐ」、「局所と全体、ミクロとマクロを往復することで適切な状況認識を導く」、「意義、因果を説明する」といった指針が考えられる。
●うっかりミスをさせない
うっかりミスは、そのほとんどが注意不足から起こる。頻度からするともっとも起こりやすいのがうっかりミス。注意資源を正しく活用し、注意の自己管理のくせを知った上で手順書を作る必要がある。「フロッピーをセットしてください、というような、手順をマクロ化した表現は避ける」、「1動作ごとに1文を充て、そのとおりに操作できるようにメリハリをつけ、ビジュアル表現を利用する」、「予想される危険、エラーはあらかじめ書き、かつ起こりそうなところにも書く」といった方策がある。
●確認ミスを防ぐ
エラーを防ぐために確認をするのだが、確認が習慣化してしまうと、確認することを怠ったり、確認そのものを間違える、ということが起こる。確認ミスは起こるもの、という前提で、「操作の結果を示す」、「確認行為も手順のひとつとして記述、指示する」といった対応が考えられる。
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