第5回 多重課題ミスを防ぐーー配分・受動
●集中力の配分も思いのままとはいかない
前回は、ミスを防ぐために、集中力の配分を自分でコントロールする際の工夫について考えてみました。
今回は集中力の配分も、思いのままにはならないところで起こるミスを防止することを考えてみます。
●あれこれ同時にやるとミスが起こりやすい
当たり前のことですが、我々は、よくよく考えると、実に巧みにいくつかの仕事を同時に行っています。
・歩きながら音楽を聞きゲームをする
・運転しながら隣の人と会話する
・TVを見ながら料理し、子どもを見守る
これを多重課題と呼びます。これをしている本人の中の頭のなかでは、複数の課題に巧妙に集中力を分割して使っている状態です。
ここでは、能動的な集中力と受動的な集中力とがせめぎあいをしています。そのせめぎ合いの中で、ミスが多発することになります。
●多重課題事態でのミス防止のための集中対策
①自分の聖徳太子度を知る
自分はてきぱき仕事ができると自負しているような人は、だいたい多重課題をこなすのが巧みです。さらに次のような項目に当てはまる人も多重課題が好きなほうです。
・何かしながら人の話を聞くことが多い
・電話などの割り込みがあまり気にならない
・ながら族である
・あれこれ気くばりをするほう
こうした人は、周りからの評価が高く、自分でも有能感にかられやすいところがあります。しかし、集中力を目一杯使って、しかも頻繁に集中力を向けるところを変えますから、周囲からのちょっともう一つの割り込みで集中力が乱れミスを犯すことになります。
たとえば、運転の難しい個所での同乗者との会話、細かい作業中の携帯電話の呼び出し音などなど。
というわけで、リスクの高い仕事をしているときには、聖徳太子の真似はしないと決め込むのがよいことになります。
② 大事なものに集中力を向ける方策を工夫する
多重課題状態にしないのが王道です。一つの仕事をしているときに割り込みがあっても、無視するか、待ってもらうことです。
さらに、自分の頭のなかとの多重課題化も要注意です。たくさんの患者からあれこれの頼みごとを記憶にとどめながらの目先の仕事をするような状態は危険です。
こんなときは、外化が有効です。看護師が手のひらメモでしのいでいるのを病棟でみたことがありますが、記憶情報を外に出して見えるようにしておくのは、非常に有効です。
あるいは、状況によっては、「作業中です。話かけないでください」の看板を立て戦略もあってよいと思います。ある職場では、集中タイムに入っていることを周りに知らせるために風船を上げるそうです。それがあがっているときは、話しかけられたりしないので、仕事に集中できるそうです。
③ 自動化している行為との多重課題にも要注意
歩きながらの携帯電話や脇見もまぎれもない多重課題なのですが、歩くほうにはほとんで自動的で無意識的なので集中力はほとんど使いません。したがって、携帯電話や脇見にその分、集中力を割くことができます。しかし、たとえば、携帯電話での話が込み入ったものになると、そちらに集中力を余分にとられてしまい、歩くほうに振り向ける集中力が足りなくなってしまいます。かくしてちょっとした段差につまずいてころんでしまうことになります。
自動化した行為が自動的に実行できるような状況でも、こういうことがあるので、多重課題は、避けるに越したことはありません。
④ 瞬間処理を必要としない多重課題は見える化と優先順位が決め手
多重課題の範疇からはややはずれますが、たとえば、締切り仕事が3つ重なったという状況も日常的にはよくあります。
こうした多重課題は、これまで想定していた時間切迫時の多重課題の処理よりは余裕がありますので、対応も楽です。
原則は、締切(納期)からの逆算による工程表を見えるようにしておくことです。それによって、今日は何を優先的にするべきかもおのずと見えてきます。そして、同僚との情報共有もできますから、自分一人ですべてを引き受ける重さもなくなります。
こういう配慮を怠ると、締切り(納期)パニック状態になります。ここでは、ミス発生のリスクが異常なほど高まってしまいますから、絶対に避けたいところです。
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