◆アージ理論(urge theory of emotion)
進化論的な立場から、感情を認知システム全体との関連でとらえようとした戸田正直によって提唱された理論。
アージとは、人間を有無を言わせず駆り立てる強い力の意で、人間は、野生のなかで生き残るために、次の4種類のアージを発展させてきた。食や性など基本的な欲求に対応する維持アージ、恐怖や不安など外界の脅威に対応する緊急事態アージ、認知的情報をつかさどる認知アージ、協力や援助など他人とのかかわりに関する社会関係アージ。それぞれのアージは、それを始動させる認知システム、内的活動と行動リストを有する。このうち、内的活動は、行動の準備活動としての身体活性化と、事態に対処する最適行動を選択するための集中的な情報処理とを行う。
戸田によれば、こうしたアージ・システムは、野生の欠如した文明環境下では適切に作動しないことが多く、そのことが、感情の非合理的、反知性的、破壊的側面を強調させることになっているとして、心のソフトウェアとしての感情の正当な位置づけを試みている。