語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【震災】広瀬隆の、福島原発事故の真相・・・・の補足

2011年03月17日 | 震災・原発事故
(1)当面の危機
 14日に水素爆発で建屋が吹き飛んだ3号機で使われているMOX(プルトニウム・ウラン混合酸化物)燃料は、従来のウラン燃料よりも大量の放射能を出す。3号機は炉心の溶融が相当進行していた、と推定される。非常に危険な放射性物質が、すでに外部に出ている可能性は高い。
 13日午後、1時間あたり1557・5マイクロシーベルトを記録した。これを年換算すると、通常の年間被曝量の1万3千倍を超える。
 現場に行ったジャーナリストの広河隆一によれば、13日夜、3台のガイガーカウンターが1千マイクロシーベルトの目盛りを振り切っていた。3キロ離れていてもそういう状態だったのだ。
 15日に2号機も水素爆発、炉心溶融の最後の危機に直面している。
 もし1基でもメルトダウンから爆発という最悪の事態が起きれば、容易に近づくことはできなくなる。今は止まっている4、5、6号機も含めて6基すべてがメルトダウンし、さらに福島第二原発にも被害が拡大する、という事態も考えられる。

(2)長期的な危機
 今起きていることは、ほんの始まりに過ぎない。
 大事故に至る危機が終息するのは、電気系統が回復して、ポンプで冷却水を循環させることができたときだ。
 しかし、原子炉への水の注入を消防車のポンプに頼っている現状では、復旧のめどはまったく見えてこない。水を入れただけではダメだ。循環させなければ、いずれは行きつくところまで行ってしまう。
 1基の原子炉が全部放射能を放出するような事態が起きた場合、風向きや風力次第だが、台風が日本を横断する時間と同様に、ほぼ1週間で日本全土が放射能に包まれる可能性がある。広い範囲にわたって田畑が放射能汚染を受ける。缶詰しか食べるものがない、というような世界になる。
 テレビに出ている自称専門家は、今そこにある危機について、正しい知識を伝えていない。

(3)他の原発
 M9.0の巨大地震に続き、長野や茨城沖でも大きな地震が続いている。太平洋プレートの境界で大地震が続くだけでなく、過去の歴史から見ると、フィリピン海プレートも絶対に動く。地震が比較的少ない静穏期から、江戸時代や関東大震災前後のような地震多発の時代に入ったのだ。東海や相模湾でいつ大地震が起きてもおかしくない。だから、静岡の浜岡原発は、どんなことをしても止めなくてはいけない。
 戦前の記録で地震がかなり起きていた若狭湾も同様だ。若狭には13基の原発がある。地理的に津波が危ないし、活断層も通っている。
 全国の54基すべての原発が、危ない状態にある。

  *

 以上、 「週間朝日」によるインタビュー記事(3月15日午後4時現在)に拠る。
 その内容は、ダイヤモンド・オンラインに掲載の、著者による特別レポートと内容はほぼ重なる。要点は、「事故の経過を見ると、悲観的にならざるを得ない」ということだ。
 特別レポートの要約を補足する形で、インタビュー記事からさわりを抜いた。

【参考】広瀬隆/堀井正明(聞き手)「福島原発で本当に起きていること [11/03/17]」(アスパラクラブ ブックclub)
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【震災】広瀬隆の、破局は避けられるか――福島原発事故の真相

2011年03月17日 | 震災・原発事故
(1)「想定外」を濫用する電力会社とマスメディア
 3月11日14時46分頃に三陸沖で発生した巨大地震のマグニチュードが、当初8.4、次に8.8、最後に9.0に修正された。
 これは疑わしい。原発事故が進んだため、「史上最大の地震」にしなければならない人たちが数値を引き上げたのだ。四川大地震の時に中国政府のとった態度と同じだ。
 地震による揺れは、宮城県栗原市築館で2,933ガルを観測した。しかし、2008年の岩手・宮城内陸地震では、マグニチュード7.2で、岩手県一関市内の観測地点で上下動3,866ガルを記録した。今回より大きい。
 建物の崩壊状況を見てわかるとおり、実際の揺れは、阪神大震災のほうがはるかに強烈だった。東北地方三陸沖地震の実害と、原発震災を起こした原因は、津波だった。
 では、津波の脅威は、誰にも予測できなかったのか。日本の沿岸地震では、1896年の明治三陸地震津波で、岩手県沿岸の綾里では38.2m、吉浜24.4m、田老14.6mの津波高さが記録されている。「想定外」という言葉を安っぽく濫用してはならない。

(2)冷温停止に至らず迷走運転中の原子炉8基
 2010年3月25日、東京電力は、40年経過して超老朽化した福島第一原発1号機を運転続行する、と発表した。60年運転も可能だ、と言い、原子力安全・保安院がそれを認めた。
 これは福井県の敦賀原発・美浜原発に続く、きわめて危険な判断であった。
 2010年10月26日、34年経過して老朽化した福島第一原発3号機で、プルトニウム燃料を使った危険なプルサーマル営業運転に入った。
 福島第一原発は、設計用限界地震が、日本の原発で最も低い270ガルで建設された。最も耐震性のない原発だ。
 地震発生後、原発は「止める」「冷やす」「閉じ込める」機能があるので大丈夫だと宣伝してきたが、ほかの原発も含めて、自動停止した11基の原子炉のうち原子炉内の温度が100℃以下、圧力も大気圧に近い状態で安定した「冷温停止」に至ったのは、14日現在、福島第二原発3号機と女川原発1・3号機の3基だけだ。残り8基は迷走運転中だ。

(3)炉心溶融(メルトダウン)はわずか600℃で起こる
 電気出力100万kW原子炉では、熱出力がその3倍の330万kWある。この原子炉では、自動停止しても、その後に核分裂生成物を出し続ける。その崩壊熱は、1日後にも1万5,560kWもある。発熱量がどれほど小さくなっても、永遠に熱を出し続ける。燃料棒が原子炉にある限り、それを除去し続けなければならない。原子炉という閉じ込められた容器内では、熱がどんどんたまっていく。
 それを除去できなければ、水は沸騰してなくなり、燃料棒がむき出しになる。そして、超危険な放射性物質が溶け出し、燃料棒の集合体が溶け落ちる。それが炉心熔融だ(メルトダウン)。
 燃料棒の集合体が次々に溶け落ちると、炉の底にたまって、ますます高温になり、灼熱状態になる。やがて原子炉圧力容器の鋼鉄を溶かし、釜の底が抜けると、すべての放射性物質が外に出て行く(「チャイナ・シンドローム」)。
 一方、燃料棒被覆管のジルコニウムは水と反応して酸化される。水素ガスが発生する。水素ガスの爆発限界は、最小値が4.2%だ。
 原子炉の正常な運転条件は、福島原発のような沸騰水型では、280~290℃、70気圧だ。炉心溶融は、スリーマイル島原発事故などの解析によって、600℃で起こることが明らかになった。

(4)原発震災の現実化
 福島第一原発では、地震から1時間後、15時42分に全交流電源が喪失し、外部から電気がまったく来なくなった。所内の電源が動かなければ、何もできない。そこを津波が襲い、15時45分にオイルタンクが流失した。さらに配電盤などの配線系統が水びたしになって、内部はどうにもならなくなった。
 初め、炉心に水を注入するためのECCS(緊急炉心冷却装置)を作動したが、すぐに注水不能となった。非常用ディーゼル発電機はまったく作動しない。電気回路が大量の水を浴びて、配線系統がどうにもならない。コンピューターも何もかも、電気がなければ何もできない。
 このような所内電源と非常用ディーゼル発電機による電力のすべてが失われた事態に備えて、原子炉隔離時冷却系(ECCSの一種)がある。これは、炉心の崩壊熱による蒸気を利用してタービンを起動させ、ポンプを駆動して注水する装置だ。しかし、これも制御機能が喪失すれば駄目になる。
 そもそも、地震発生当初から非常用ディーゼル発電機がまったく働かなかったのだから、電源車が到着したかどうかが鍵だ。その最も重要なことについてさえ、報道されなかった。テレビの報道陣が、いかに原発事故について無知であるかをさらけ出した。
 そして、1号機の原子炉内の水位がぐんぐん下がり始めた。非常用復水器と原子炉隔離時冷却系によって、何とか水位の復帰につとめた。しかし、格納容器(ドライウェル)内の圧力が、設計上の使用最高圧力4気圧をはるかに上回る8気圧に達している可能性が高かった。加えて、除熱されていないから水位が下がりゆき、4メートルの燃料棒は1メートル以上、水の上に顔を出した。
 格納容器の圧力が高まると破壊される。バルブを開き、高圧になった気体を放射性物質と共に外部に放出する作業に入った。だが、15日昼頃には、敷地内での放射能が通常の350万倍に達した。
 さらに2号機で格納容器の破損が起こった。4号機で建屋内の使用済み核燃料のプールが沸騰し始めた。ここには、原子炉より多くの放射性物質が入っている。作業者が近づけない場所だから、処理はおそらく不能だろう(15日17時現在の推定)。
 福島第一原発の6基のうち、1基がメルトダウンすれば、そこには職員がいられなくなる。連鎖的に事故が広がる。

【参考】広瀬隆「破局は避けられるか――福島原発事故の真相 ~特別レポート【第140回】 2011年3月16日~」(DIAMOND online)
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