(1)地元の人を支援活動の働き手として巻きこむ
災害初期で大事なのはスピードだ。活動地域を定めたら、人と物をばんばん送りこむ。この段階で「モノ余り」が生じるのは当たり前。需給を見定めて確実に送りこむより、機関銃的支援が必要だ。リーダーである首長は、優先順序を明確にしなければならない。これができるかどうかで、首長が役人なのか政治家なのかがわかる。
リーダーに求められるもう一つは、見通しを語ること。被災者はものすごくストレスがたまる。いつまでこの状況が続くのか、と情報不足に絶望を感じる。多少は間違ってもよい。3日後には物がくる、と言えば、それまではがんばろうと思える。言葉で被災者の内部のエネルギーを引き出すのだ。
みんなが気にかけている、というメッセージが被災者に届き始めた。これから必要なのは、「I need you」を伝えることだ。
AMDAは、被災地の支援が必要な人を助けるプロジェクトに、地元の人を巻きこみ、対価を払う。どちらかが一方的に助けるのは、健全な人間関係でない。尊厳を傷つけ、気付かないうちに深いところで人を傷つける。地元の人の助けが必要だから働いて手伝ってほしい、と頼み、きちんと報いるのが大事だ。
(2)避難所におけるスポーツ活動の意義
被災者は、外傷がなくても不安を抱えたままでは、睡眠障害、心疾患、高血圧、胃腸の不調などさまざまな症状が出てくる。栄養不足、免疫力低下が風邪や肺炎を誘発する。じっとしていることが多くなる。運動不足による全身のこり、頭痛、腰痛、鬱状態、静脈の血が停滞して血栓ができるエコノミークラス症候群も危惧される。
特に気がかりなのは子ども。我慢し、多くのストレスを抱えこむ。
子どもは希望だ。子どもに明るさが戻れば、家族や周りの大人も元気になり、復興への前向きな気持ちも生まれる。子どもへの気配りを忘れないで。
運動による健康効果は、子どもだけではない。大人も少しずつ動いたほうがよい。寝たまま座ったまま行う体操やストレッチ、ヨガ、お手玉など、できる範囲で。空いたスペースを使って球技や体操、ダンス、ゲームをするほか、軽い散歩もよい。
適度な運動で心身の健康を保つのだ。活動することでPTSDの機関を短くする効果も期待できる。健康を保つ人が多ければ、薬の消費も抑制できる。
教員、企業やクラブチームの選手、指導者、トレーナーなどスポーツ関係者がリーダーシップをとって、避難所でスポーツ活動を始めてほしい。
(3)不安解消や流言抑制には正確な情報を、ツイッターもマスメディアも
震災後、ツイッターを使った情報発信には善悪両面が露骨に表れた。
悪い面は、根拠のない情報があっという間に拡散したこと。特に気になるのは、福島第一原発事故に係るツイート(投稿)だ。悪質なあおりや根拠のない風聞が行き交った。
「毒」情報には、刻々と変わる状況に応じた正確な情報を対置して「中和」していくしかない。こうした役割においては、ウェブのよい面が間違いなく出ていた。原発事故については早野龍五東大教授が、放射線の健康被害については東大病院の放射線治療チームが、情報をツイートし、たちまち10万人以上のフォロワーを集めた。
「シノドス」のメンバーも、悪質な流言やチェーンメールを検証する作業を開始し、こちらもすぐに10万人を超える人に読まれた。
難易度の高い情報を混乱なく伝えるにはマスメディアの役割が最も大きいが、うまく果たせていない。東京電力や原子力安全・保安院の記者会見に専門家を帯同し、質問してもらったらどうか。専門家の力を借りて必要とされる正確な情報を引き出し、伝えていくのだ。これだけでも事態はだいぶ改善される。
首都圏の買いだめ現象にしても、できるだけ速く正確な情報を周知し、クールダウンしていくしかない。今後も原発や食品などの風評被害が問題となるはずだ。正確な情報を共有して、同じ間違いを反復しないようにしたいものだ。
(4)予算再編による財源捻出
地震、津波、原発トラブル。世界の市場は、日本のリスクをより厳しく見るようになった。金融、財政の両面で何をすればよいか。
日本銀行は、株式や不動産関連などを買い増してはならない。リスク性資産が値下がりすると、中央銀行の財務状況は悪化する。中央銀行の信認は揺らぎ、日銀券の信用失墜につながる。超低金利の維持、大量の資金供給を続ける今の措置で十分だ。
国債の増発はできるだけ避けねばならない。後の世代が膨大な債務返済の負担を負うことになるからだ。また、国債を国内だけで消化できなくなり、海外投資家に頼ることになる。すると、低金利では買い手がつかず、金利上昇、ひいては債務負担の急増につながりかねない。
消費税増税は、政治的手続きに時間がかかりすぎる。迅速に新年度予算を組み替え、これで得た財源を被災者への支援と復旧・復興に回すべきだ。子ども手当増額や法人税減税などは中止を避けられない。社会保障費の抑制や、所得税などの増税も必要だ。
未曾有の危機だからこぞ、従来の省庁縦割り型の発想を捨て、国の財政と街づくりの全体を見渡した制作優先順位を抜本的に見直せるかもしれない。メリハリのきいた復興戦略ができれば、経済の落ちこみを意外に早く脱するかもしれない。
*
以上、(1)および(2)は2011年3月23日付け朝日新聞「オピニオン」欄、(3)および(4)は2011年3月23日付け朝日新聞「オピニオン」欄に拠る。
語り手は、(1)菅波茂(医療NGO「AMDA」理事長)「地元の人を捲き込もう」、(2)賀来正俊(賀来医院院長・神戸大臨床教授)「避難所でスポーツ活動を」、(3)芹沢一也(言論集団「シノドス」代表)「流言抑えるのもツイッター」、(4)上野泰也(みずほ証券チーフマーケットエコノミスト)「予算組み替え被災者に回せ」。
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災害初期で大事なのはスピードだ。活動地域を定めたら、人と物をばんばん送りこむ。この段階で「モノ余り」が生じるのは当たり前。需給を見定めて確実に送りこむより、機関銃的支援が必要だ。リーダーである首長は、優先順序を明確にしなければならない。これができるかどうかで、首長が役人なのか政治家なのかがわかる。
リーダーに求められるもう一つは、見通しを語ること。被災者はものすごくストレスがたまる。いつまでこの状況が続くのか、と情報不足に絶望を感じる。多少は間違ってもよい。3日後には物がくる、と言えば、それまではがんばろうと思える。言葉で被災者の内部のエネルギーを引き出すのだ。
みんなが気にかけている、というメッセージが被災者に届き始めた。これから必要なのは、「I need you」を伝えることだ。
AMDAは、被災地の支援が必要な人を助けるプロジェクトに、地元の人を巻きこみ、対価を払う。どちらかが一方的に助けるのは、健全な人間関係でない。尊厳を傷つけ、気付かないうちに深いところで人を傷つける。地元の人の助けが必要だから働いて手伝ってほしい、と頼み、きちんと報いるのが大事だ。
(2)避難所におけるスポーツ活動の意義
被災者は、外傷がなくても不安を抱えたままでは、睡眠障害、心疾患、高血圧、胃腸の不調などさまざまな症状が出てくる。栄養不足、免疫力低下が風邪や肺炎を誘発する。じっとしていることが多くなる。運動不足による全身のこり、頭痛、腰痛、鬱状態、静脈の血が停滞して血栓ができるエコノミークラス症候群も危惧される。
特に気がかりなのは子ども。我慢し、多くのストレスを抱えこむ。
子どもは希望だ。子どもに明るさが戻れば、家族や周りの大人も元気になり、復興への前向きな気持ちも生まれる。子どもへの気配りを忘れないで。
運動による健康効果は、子どもだけではない。大人も少しずつ動いたほうがよい。寝たまま座ったまま行う体操やストレッチ、ヨガ、お手玉など、できる範囲で。空いたスペースを使って球技や体操、ダンス、ゲームをするほか、軽い散歩もよい。
適度な運動で心身の健康を保つのだ。活動することでPTSDの機関を短くする効果も期待できる。健康を保つ人が多ければ、薬の消費も抑制できる。
教員、企業やクラブチームの選手、指導者、トレーナーなどスポーツ関係者がリーダーシップをとって、避難所でスポーツ活動を始めてほしい。
(3)不安解消や流言抑制には正確な情報を、ツイッターもマスメディアも
震災後、ツイッターを使った情報発信には善悪両面が露骨に表れた。
悪い面は、根拠のない情報があっという間に拡散したこと。特に気になるのは、福島第一原発事故に係るツイート(投稿)だ。悪質なあおりや根拠のない風聞が行き交った。
「毒」情報には、刻々と変わる状況に応じた正確な情報を対置して「中和」していくしかない。こうした役割においては、ウェブのよい面が間違いなく出ていた。原発事故については早野龍五東大教授が、放射線の健康被害については東大病院の放射線治療チームが、情報をツイートし、たちまち10万人以上のフォロワーを集めた。
「シノドス」のメンバーも、悪質な流言やチェーンメールを検証する作業を開始し、こちらもすぐに10万人を超える人に読まれた。
難易度の高い情報を混乱なく伝えるにはマスメディアの役割が最も大きいが、うまく果たせていない。東京電力や原子力安全・保安院の記者会見に専門家を帯同し、質問してもらったらどうか。専門家の力を借りて必要とされる正確な情報を引き出し、伝えていくのだ。これだけでも事態はだいぶ改善される。
首都圏の買いだめ現象にしても、できるだけ速く正確な情報を周知し、クールダウンしていくしかない。今後も原発や食品などの風評被害が問題となるはずだ。正確な情報を共有して、同じ間違いを反復しないようにしたいものだ。
(4)予算再編による財源捻出
地震、津波、原発トラブル。世界の市場は、日本のリスクをより厳しく見るようになった。金融、財政の両面で何をすればよいか。
日本銀行は、株式や不動産関連などを買い増してはならない。リスク性資産が値下がりすると、中央銀行の財務状況は悪化する。中央銀行の信認は揺らぎ、日銀券の信用失墜につながる。超低金利の維持、大量の資金供給を続ける今の措置で十分だ。
国債の増発はできるだけ避けねばならない。後の世代が膨大な債務返済の負担を負うことになるからだ。また、国債を国内だけで消化できなくなり、海外投資家に頼ることになる。すると、低金利では買い手がつかず、金利上昇、ひいては債務負担の急増につながりかねない。
消費税増税は、政治的手続きに時間がかかりすぎる。迅速に新年度予算を組み替え、これで得た財源を被災者への支援と復旧・復興に回すべきだ。子ども手当増額や法人税減税などは中止を避けられない。社会保障費の抑制や、所得税などの増税も必要だ。
未曾有の危機だからこぞ、従来の省庁縦割り型の発想を捨て、国の財政と街づくりの全体を見渡した制作優先順位を抜本的に見直せるかもしれない。メリハリのきいた復興戦略ができれば、経済の落ちこみを意外に早く脱するかもしれない。
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以上、(1)および(2)は2011年3月23日付け朝日新聞「オピニオン」欄、(3)および(4)は2011年3月23日付け朝日新聞「オピニオン」欄に拠る。
語り手は、(1)菅波茂(医療NGO「AMDA」理事長)「地元の人を捲き込もう」、(2)賀来正俊(賀来医院院長・神戸大臨床教授)「避難所でスポーツ活動を」、(3)芹沢一也(言論集団「シノドス」代表)「流言抑えるのもツイッター」、(4)上野泰也(みずほ証券チーフマーケットエコノミスト)「予算組み替え被災者に回せ」。
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