語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【震災】原発>原子炉の欠陥を知りながら放置した東電

2011年05月02日 | 震災・原発事故
●「マークⅠに問題あり」/デール・ブライデンボー(79)、元GEプロジェクトマネージャー、マークⅠ設計者、米カリフォルニア州
 福島と浜岡の原発は、私(ブライデンボー)が扱っていたマークⅠ型原子炉を使っている。
 ゼネラル・エレクトリック(GE)に在任中の75年、マークⅢ型原子炉のテスト過程で、大事故のような異常な負荷に耐えられない、ということに気づいた。格納容器をデザインし直す必要性が生じた。それで、マークⅠにも同じ問題があるはずだ、ということになった。
 米原子力規制委員会(NRC)は、マークⅠを所有していた16の電力会社に書簡を送り、私が16社をまとめて「マークⅠオーナーズ・グループ」を作り、GEに問題解決を求めた。当時稼働中のマークⅠは、米国内に16基。ところが、GEは問題を外部機関に委ねたため、私たちはマークⅠの原発を閉鎖するべきかどうかもわからない状態が1年余も続いた。

 76年2月、私は同僚2人とGEを退職し、NRCとともにマークⅠの製造中止をGEに働きかけた。
 米国内のマークⅠに必要な追加開発と改良が完了するのに5年もかかった。

 これら一連の経過は、日本、ドイツ、スイスのマークⅠオーナーにも連絡がいったはずだ。
 福島原発事故は、マークⅠの構造が事故の発端だったことは間違いない。マークⅠの冷却システムは、限定的な容量しかないため、緊急時の電源供給が途切れると冷却し続けることができなくなる。爆発が起こる。このことは、GEも東京電力も認識していたはずだ。マークⅠは、依然として格納容器の損傷につながるほど、ダメージを受けやすい問題がある原子炉なのだ。

 以上、記事「100人の証言」(「AERA」臨時増刊No.22 2011年5月15日号)に拠る。
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【震災】原発>行政改革で規制機関の独立性が消えた

2011年05月02日 | 震災・原発事故
●「原子力に『役所の論理』 行革で独立性が消えた」/中川秀直(67)、元官房長官・元科学技術庁長官、東広島市
 福井県敦賀市にある高速増殖炉「もんじゅ」は、開発段階でいえば実験炉の次の原子炉だ。冷却材は水ではなくてナトリウムを使う。
 そのナトリウムが配管から漏れて燃える事故が95年12月に起きた。
 私(中川)は、その1ヵ月前に発足した橋本政権で科学技術庁長官に就き、政府の原子力委員長として原因究明にあたった。
 配管の破断した部分が設計図と違っていた。つなぎ目の強度が足りなかった。
 あれだけ精緻なシステムでもミスが起こるのだ。

 原子力は、一度事故が起こると地元住民の不信感を簡単には払拭できない。
 事故発生4ヵ月後、敦賀市民を対象に、「大臣と原子力を語る会」を開いた。私の口から率直に話した。反原発の有識者会議も10回は開いた。報告書作成に当たり、スタッフと細かいところまでやりとりした。私が一字一句チェックし、根拠もここに書け、と。1年以上かけて信頼回復に努めた。

 科学技術庁では、原発推進の原子力委員会と、規制監督の原子力安全委員会が同じフロアにあった。私は、原子力安全委員会を別フロアに移動させ、両者の間のファイアウオールを強化した。両委員会とも会議をほとんど一般公開した。
 原子力安全委員会は、公正取引委員会のように行政から切り離し、事業者に指示命令できる強い権限を与えるべきだ(当時の中川の立場)。
 訪米したとき、米原子力規制委員会のスタッフが4千人以上いると聞いて驚いた。日本の態勢が不安になった。いまだに、内閣府、経産相、地方を合わせて700人程度だ。

 私が退任後、橋本行革で省庁再編が決まった。科学技術庁は文部省と合体し、経済産業省に原子力安全・保安院ができることになった。学者で構成する原子力安全委員会は内閣府に残ったが、もともとあった独立した存在感、強さがどこかに消えて、官僚主導の保安院が圧倒的に強くなった。
 審査の独立性を高めるべきなのに、当時の通産省は時代に逆行するように、組織内に取りこもうとした。「原子力に役所の論理を持ち込むな」と忠告したが、幹部諸君に押し切られた。「私の力不足でした」

 案の定、規制監督する保安院を原発推進の経産相に置いたことが、福島第一原発の事故で裏目に出た。各機関で説明がバラバラ。ポンプ車の投入に時間がかかる。米軍の支援も断ってしまった。防護服や測定器さえ自前では足りない。
 IAEAのようなリスク管理を必死にやっている機関の援助を初動段階から求めないと、態勢が追いつかないのは想定できたことだ。
 これだけ国際問題になっているのに、政府は対応を一企業の東電に押しつけたままだ。国として無責任だ。

 以上、記事「100人の証言」(「AERA」臨時増刊No.22 2011年5月15日号)に拠る。
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