語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【震災】原発>東電退職者の企業年金は月額40万円

2011年05月21日 | 震災・原発事故
 東電の社員数は38,000人。役員は、取締役が20人、執行役員が29人、顧問が21人という大世帯だ。
 その上、関連会社が63社ある。
 東電という名の巨大公害企業には、“ムダ”が蔓延している。
 どれだけ身を削ることができるのか。それが今後の最大の課題だ。

●企業年金
 東電OBには、65歳から10年間、公的年金とは別に企業年金が支給される。平均して月額40万円だ。
 老齢厚生年金の月額を23.3万円とすると【注】、東電OBの65歳から10年間の収入月額は、少なくとも63.3万円だ。

 【注】夫は40年間就労、妻は専業主婦、現役時代の平均収入を39.3万円とした場合(Wikipedia「厚生年金」の項目に拠る)。

●子会社
 「東電不動産」は、東電の不動産部門を担い、オフィスビル管理やオール電化の賃貸マンションに加え、日本橋と田町にビジネスホテルも経営している。
 「FISH・ON!王禅寺」は、釣り場(神奈川県川崎市および山梨県都留市)を経営し、エサ釣り、ルアー、フライそれぞれの釣りが楽しめる。電力事業とは無縁のレジャー産業だ。   
 「当間高原リゾート」は、高原リゾート施設「ベルナティオ」(新潟県十日市町市)を経営している。ゼネコンの鹿島も出資し、開発費は425億円。東京ディズニーランドの10倍の敷地にゴルフ場、宿泊施設や温泉などがある。
 「テプコーユ」は、燃料の納入代行業務やリース事業を行う。東電社員のために、“格安マイカーリース”を提供している。現在、特選車キャンペーン中で、トヨタのプリウスが月額35,175円で借りられる。
 「新日本ヘリコプター」は、中部電力も50%出資し、14機のヘリコプターを所有する。送電線のパトロールが本来の業務だが、ナイトフライトや貸切遊覧飛行も受けている。
 「東電ハミングワーク」は、障害者雇用促進のため設立され、故・平岩外四元社長の蔵書を集めた「平岩文庫」の管理業務を兼ねる。
 「リサイクル燃料貯蔵」は、使用済核燃料の貯蔵・管理を行うが、「すじ青のり」という品種の青海苔養殖も手がける。

 東電は、公益事業者ゆえに、全ての経費に一定の報酬を上乗せして電気料金を徴収できる特権を与えられている(「総括原価方式」)。必ず儲けがでる。子会社の会計制度も、電気事業会計をそのまま導入していて、一定の利益が出るように東電が調整している。「いわば、東電から利益の“飛ばし”が行われているのだ」
 それだけではない。

 電力会社は、変電所用の用地など、と称して市街地の付加価値の高い土地を複数所有する。それを子会社が駐車場にする際、電力会社から子会社への土地取引は時価ではなく、簿価で行われる。原価が安く抑えられ、その分儲けが出る。
 公益事業という独占事業で得た資金で、子会社が殿様商売をやっているのだ。
 そして、儲けが電力料金の値下げに貢献することはない。
 浜松町周辺の駐車場に隣接する一等地に、東京電力が所有する古びた二階建ての建物がある。土地は国際興行のもので、東電の子会社「東京リビングサービス」が書類を置く倉庫として使っている。狙いは、将来の再開発利権だ。
 東電は、寝かせておくだけで、いずれ利益を生む“打ち出の小槌”をいくつも持っている。
 
 「テプスター」は、東電の燃料関係子会社だ。東電副社長から参議院議員に転身した加納時男が代表を務めていた自民党の政党支部は 、「テプスター」所有のビルに事務所を構えていた。かつては通産・エネルギー政策や石油業界に強い自民党議員も「テプスター」が支援していた(らしい)。「テプスター」は、政治と東電をつなぐパイプ役だった。

 以上、記事「東電よ、血税投入の前に身銭を吐き出せ ~大欲者の企業年金は月40万円、社員に格安で自家用車をリース・・・・~」(「週刊文春」2011年5月26日号)に拠る。
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【震災】原発>結局国民が損する東電救済スキーム

2011年05月21日 | 震災・原発事故
 5月13日、民主党政権の関係閣僚会合決定という形で、東電救済「機構」の設立が決まった。
 東電を含む原発所有電力会社が、新設される「機構」に負担金を支出し、この資金をもとに機構が東電に出資・資金交付し、この資金から東電は被災者らに賠償金を支払う。電力会社の負担金で不足する場合、政府が「融資」する仕組みだ。
 電力会社の負担金は、経済産業省が電気料金算定時の原価に含めることにするため、各社のコスト削減努力で吸収できなければ、電気料金の引き上げとなる。つまり、消費者負担となる。

 問題点の第一。東電に融資する三井住友銀行の原案をもとに政策立案している【注】。
 同行を含む銀行団は、4兆円異常の債権を東電に有する。債権を保全したい銀行のアイデアが政府案のたたき台になったため、当然、銀行はビタ一文も損しない案だ。東電の大株主は、大手生保(第一生命、日本生命)およびメガバンク3行(三井住友など)だ。彼らの懐が痛む減資をするわけがない。東電で儲けてきた彼ら、債権者にして大株主は損をせずに済みそうだ。
 政策形成プロセスを追うと、名門省庁である経産省の政策立案能力の劣化が目立つ。一業者の試案を参考にするとは、誇り高き経産省のキャリア官僚にはあり得なかった。ふつうは、業者が持ちこんでもゴミ箱行きだ。メルトダウンは、福島第一原発だけでなく霞が関でも起きている。

 【注】「【震災】原発>経済産業省の『電力閥』」参照。

 問題点の第二。政策立案省庁と業者との距離感がない。
 有力な天下り先であり、東電と持ちつ持たれつで原子力政策を展開してきた経産省だから、東電に厳しくできない。テレビでおなじみの西山英彦審議官は、資源エネルギー庁電力・ガス事業部長だった09年に娘が東電に入社した。監督官庁と業者との癒着が疑われても仕方ない。

 問題点の第三。賠償金は、電力各社の負担金が基本原資だ。財政支援は腰が引けている。
 財務省は、交付国債という「引き出し枠」を示すだけだ。国庫からキャッシュが機構に積まれるわけではない。電力会社の負担金だけでは足りずに交付国債の一部を換金して賠償に充てても、電力会社が長期の負担金の形で国庫に返済しなければならない。国のカネ(税金)は、あえるのではなくて、返済が義務づけられた融資なのだ。だから、財務省の懐は痛まない。

 かくして新設される機構は、政策立案過程に関与できたメガバンクや経産・財務両省の利害が優先された「東電関係者救済機構」だ。
 結局、政策立案に関与できない国民に、電気料金という形でツケ回しするのだ。

 以上、記事「東電救済スキームのデタラメ 結局は国民が損をする」(「AERA」2011年5月23日号)に拠る。
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