外務省は、4月27日付けの文書を駐日オランダ大使館へ送った。いわく、「『Rainbow Warrior号』による我が国の領海【注1】における海洋の科学的調査は認められない」「我が国の排他的経済水域【注2】における水産動植物の採捕については、農林水産大臣の承認を得ること」。
オランダ政府が公式に申し入れた海洋汚染調査を拒否したのだ【注3】。
調査船「Rainbow Warrior号」の所有者は、国際環境NGOのグリーンピースだ。本部はアムステルダムにある。
同NGOに、農林水産大臣による承認証は交付された。しかし、条件が付いていた。「水産動植物の放射能濃度の測定にあたっては、ゲルマニウム半導体検出器による検査を行うこと」
ゲルマニウム半導体検出器は、付属設備を併せて数千万円もする。所有する民間機関はほとんどない。事実上の調査妨害だ。
日本政府は、他国に調査されたくないのだ。
そして、政府が行う検査は、独立行政法人水産総合研究センターに委託している。つまり、独立した第三者機関ではない。
同センターの検査は、「利用形態(食べ方)に応じた前処理・測定を」行っている。つまり、魚体を洗い、頭と内臓と骨を取って測定する。生態系は調査しない。
福島第一原発第2号機から漏出した高濃度汚染水は少なくとも520トンだ。放射性物質は4,700兆ベクレル。さらに東電が意図的に放出した汚染水は、すでに1万トンを超えている。もはや漏出はない、とは政府も東電も言わない。事実、5月11日、福島原発3号機から高濃度汚染水が流出していたことが発覚し、海水から基準値の18,000倍のセシウム134が検出された。
斑目春樹・原子力安全委員長はいう。「放射性物質は海で希釈、拡散される。人が魚を食べてもまず心配はない」
「汚染排水は海で希釈される」と主張したのは、事実上の国策企業だった新日本窒素肥料(現・チッソ)だ。そして、有機水銀を含む工場排水を水俣湾に放出し続けた。その結果、四肢麻痺、視野狭窄、言語障害などの激しい症状の出る正式認定患者2,200人、潜在患者5万~6万人の被害者を生んだ。
歴史はくり返す。
ところで、オランダ政府からの調査申し入れにあたって、政府は次のような動きを見せている(官邸の内部文書4月22~25日付け「緊急参集チーム【注4】協議」に拠る)。
----------------(引用開始)----------------
4月22日 河相官房副長官補
グリーンピースが正式にオランダ政府を通して海洋調査を申請してきた。断れば、日本は閉鎖的という批判を受けることになり、受け入れても新たな風評被害が出るかもしれない。また、適正とは思えない数値がグリーンピースから出てきた時に政府として反論できる体制をとることが必要。
4月25日 危機管理監
グリーンピースが泥の調査を実施すれば反論できないため、グリーンピースの調査までに対応・対抗できるように関係省庁で調整してもらいたい。
----------------(引用終了)----------------
これは奇妙な対応だ。事実を検証しないまま「反論」するつもりらしい。つまり、どんな数値が出ようとも安全である、という前提で動いている。
グリーンピースの測定結果が安全な数値であれば、「風評被害」は発生しない。安全でない数値が出れば、政府は検証し、グリーンピースの測定結果と同様の数値が出た場合には対策を立てる・・・・のではないらしい。
グリーンピースは、自分たちの船を使わないで、漁師から提供された海産物の調査を行った。その速報【注5】は恐るべき数値だ。
福島第一原発から50km沖合のアカモク(ホンダワラ科の海藻)・・・・13,000ベクレル/kg以上の放射性物質を検出。
同原発の30km南、久之港のホソメコンブ・・・・19,000ベクレル/kg以上の放射性物質を検出。
同原発の40km南、四倉港のカヤモノリ14,000ベクレル/kg以上の放射性物質を検出。
【注1】海岸線から12海里(約22km)。
【注2】海岸線から200海里(約370km)。
【注3】佐藤潤一GPジャパン事務局長によれば、 「過去にグリーンピースの海洋調査を断ったのは、私の把握している限り、インドネシア一ヵ国だけです。ただ、その際、インドネシアのメディアがグリーンピースの調査を断った政府に対して批判的な報道を開始し、調査をさせろという世論が沸き起こり、一ヵ月後にはインドネシア政府も撤回して、最終的には調査ができました。だから、完全に拒否となると世界で日本が初めてということになるかもしれません」(「週刊上杉隆 2011年5月19日」、DIAMOND online)。
【注4】有事に首相官邸に設置される危機対応チーム。各省庁の局長クラスが参集する。
【注5】手持ちの機器で測った暫定値。正式な発表は、ドイツの研究所で検査の上発表される。以下のベクレル数は、放射線物質の総量で、細かい核種は不明。ちなみに、もっとも危険性の低い放射性ヨウ素の基準値は、2,000ベクレル/kg。
以上、記事「福島の海を『第2の水俣』にするのか」(「週刊現代」2011年5月21日号)、記事「水産庁は『魚は安全』捏造していた」(「週刊現代」2011年5月28日号)に拠る。
↓クリック、プリーズ。↓
オランダ政府が公式に申し入れた海洋汚染調査を拒否したのだ【注3】。
調査船「Rainbow Warrior号」の所有者は、国際環境NGOのグリーンピースだ。本部はアムステルダムにある。
同NGOに、農林水産大臣による承認証は交付された。しかし、条件が付いていた。「水産動植物の放射能濃度の測定にあたっては、ゲルマニウム半導体検出器による検査を行うこと」
ゲルマニウム半導体検出器は、付属設備を併せて数千万円もする。所有する民間機関はほとんどない。事実上の調査妨害だ。
日本政府は、他国に調査されたくないのだ。
そして、政府が行う検査は、独立行政法人水産総合研究センターに委託している。つまり、独立した第三者機関ではない。
同センターの検査は、「利用形態(食べ方)に応じた前処理・測定を」行っている。つまり、魚体を洗い、頭と内臓と骨を取って測定する。生態系は調査しない。
福島第一原発第2号機から漏出した高濃度汚染水は少なくとも520トンだ。放射性物質は4,700兆ベクレル。さらに東電が意図的に放出した汚染水は、すでに1万トンを超えている。もはや漏出はない、とは政府も東電も言わない。事実、5月11日、福島原発3号機から高濃度汚染水が流出していたことが発覚し、海水から基準値の18,000倍のセシウム134が検出された。
斑目春樹・原子力安全委員長はいう。「放射性物質は海で希釈、拡散される。人が魚を食べてもまず心配はない」
「汚染排水は海で希釈される」と主張したのは、事実上の国策企業だった新日本窒素肥料(現・チッソ)だ。そして、有機水銀を含む工場排水を水俣湾に放出し続けた。その結果、四肢麻痺、視野狭窄、言語障害などの激しい症状の出る正式認定患者2,200人、潜在患者5万~6万人の被害者を生んだ。
歴史はくり返す。
ところで、オランダ政府からの調査申し入れにあたって、政府は次のような動きを見せている(官邸の内部文書4月22~25日付け「緊急参集チーム【注4】協議」に拠る)。
----------------(引用開始)----------------
4月22日 河相官房副長官補
グリーンピースが正式にオランダ政府を通して海洋調査を申請してきた。断れば、日本は閉鎖的という批判を受けることになり、受け入れても新たな風評被害が出るかもしれない。また、適正とは思えない数値がグリーンピースから出てきた時に政府として反論できる体制をとることが必要。
4月25日 危機管理監
グリーンピースが泥の調査を実施すれば反論できないため、グリーンピースの調査までに対応・対抗できるように関係省庁で調整してもらいたい。
----------------(引用終了)----------------
これは奇妙な対応だ。事実を検証しないまま「反論」するつもりらしい。つまり、どんな数値が出ようとも安全である、という前提で動いている。
グリーンピースの測定結果が安全な数値であれば、「風評被害」は発生しない。安全でない数値が出れば、政府は検証し、グリーンピースの測定結果と同様の数値が出た場合には対策を立てる・・・・のではないらしい。
グリーンピースは、自分たちの船を使わないで、漁師から提供された海産物の調査を行った。その速報【注5】は恐るべき数値だ。
福島第一原発から50km沖合のアカモク(ホンダワラ科の海藻)・・・・13,000ベクレル/kg以上の放射性物質を検出。
同原発の30km南、久之港のホソメコンブ・・・・19,000ベクレル/kg以上の放射性物質を検出。
同原発の40km南、四倉港のカヤモノリ14,000ベクレル/kg以上の放射性物質を検出。
【注1】海岸線から12海里(約22km)。
【注2】海岸線から200海里(約370km)。
【注3】佐藤潤一GPジャパン事務局長によれば、 「過去にグリーンピースの海洋調査を断ったのは、私の把握している限り、インドネシア一ヵ国だけです。ただ、その際、インドネシアのメディアがグリーンピースの調査を断った政府に対して批判的な報道を開始し、調査をさせろという世論が沸き起こり、一ヵ月後にはインドネシア政府も撤回して、最終的には調査ができました。だから、完全に拒否となると世界で日本が初めてということになるかもしれません」(「週刊上杉隆 2011年5月19日」、DIAMOND online)。
【注4】有事に首相官邸に設置される危機対応チーム。各省庁の局長クラスが参集する。
【注5】手持ちの機器で測った暫定値。正式な発表は、ドイツの研究所で検査の上発表される。以下のベクレル数は、放射線物質の総量で、細かい核種は不明。ちなみに、もっとも危険性の低い放射性ヨウ素の基準値は、2,000ベクレル/kg。
以上、記事「福島の海を『第2の水俣』にするのか」(「週刊現代」2011年5月21日号)、記事「水産庁は『魚は安全』捏造していた」(「週刊現代」2011年5月28日号)に拠る。
↓クリック、プリーズ。↓