語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【震災】原発>東電・政府の情報操作を明らかにする「米軍機密文書」

2011年05月25日 | 震災・原発事故
 米国が在日米軍や国防総省に秘かに調査させた報告書、通称「TOMODACHI」(以下「Tレポート」)は、「トモダチ作戦」が指導し、米国の原発専門家が来日した3月13日に始まり、5月10日付け第38報が最新の報告だ。以下は、その内容のごく一部だ。

(1)福島第一原発から50マイル以内の米国人退避勧告の根拠
 Tレポート第1報は、福島第一1、3号機で爆発が起き、日本政府と東電が対応に奔走していた14日にまとめられ、翌15日に国防総省に送付された。
 1、3号機にはほとんど触れず、その時点では外見上問題がなさそうに見えた2号機について、恐ろしい警告を発していた。
 「2号機の圧力容器内の水が大幅に減少し、炉心が空焚き状態になり、燃料の損傷が100%近くまで達しようとしている。このままではやがて圧力容器内で水蒸気爆発が起こり、10数時間にわたって放射性物質が大量に飛散し続ける恐れがある」
 「融点が2,700度という燃料棒の酸化ウランを焼き固めたペレットや、ジルコニウム合金製の被覆管は既に溶け、時間が経つに連れ厚さ16センチの鋼鉄でできた圧力容器を溶かし、やがて格納容器も破損させ、放射能を封じ込める機能をすべて破壊する危険性が高い」
 「もし圧力容器の底が抜けて、溶けた核燃料・制御棒が次々と落花するような事態が生じれば、小規模な再臨界が立て続けに起こり、チェルノブイリ原発事故と同じレベルのチャイナシンドロームに至る」
 事実、翌15日早朝には2号機の格納容器下部にある圧力抑制室付近で爆発があり、同室は損傷した。後に、炉心溶融で配管の隙間などから漏れ出た放射性物質が、爆発で生じた穴や亀裂から2%ほど外部に漏れ出たことも判明した。同室付近は毎時500mSv前後(人体に急性障害が出る)、格納容器内に至っては最高で毎時160Sv(広島の爆心地に匹敵)の放射線で汚染されていた。次に爆発が起これば、残りの放射性物質が一気に放出される危険性があった。
 東電がちっとも「想定」しなかった僥倖のおかげで、危機は当面回避された。すなわち、核燃料が少量ずつ落下し、底に溜まった水の中で冷やされて固まったため、炉内の温度や圧力はさほど上昇せず、放射性物質の外部への大量漏出は生じなかった。
 ちなみに、東電が、しぶしぶと炉心溶融を認めたのは4月に入ってからだ。

(2)チェルノブイリ原発事故を超える放射性物質
 米国政府は、12日午後から連日、米領グアム島を発った高々度無人偵察機「グローバルホーク」を原発上空に飛行させ、写真2万枚余を撮影した。
 米軍は、空中から大気の放射線と地上の放射線レベルを測る空中測定システム(AMS)2基を投入し、詳細なデータを測定した。偵察衛星や最新鋭電子偵察機「RC-135U」を使い、放射性物質の成分を分析した。
 米軍はまた、10人編成の放射線収集管理チーム(RCMT)を事故対応の拠点Jヴィレッジに送りこみ、原発周辺の情報がレポートに厚みを加えた。
 こうした独自の調査結果とオーストリア気象地球力学中央研究所の予測データをもとにTレポートが作成された。
 3月末段階で、福島第一原発から1日平均で放出されるヨウ素131は、10京ベクレル、セシウム137は5京ベクレルに上り、累計ではこの時点で既にチェルノブイリ原発事故を超える数字をはじだしている。

(3)34種類の放射性物質
 東電は、4月上旬、1,500億ベクレルの放射性物質を含む汚染水を意図的に太平洋に放出した。そして、今も大気中へ放出し続けている。
 付近の海水から多くの放射性物質が検出され、確認できただけで既にチェルノブイリ原発事故時を上回る34種類を数えた。
 最も恐ろしいとされるのが、3月24日、22日に3号機付近の土壌から検出されたプルトニウム238とプルトニウム239だ。他の放射線と比べてエネルギーの大きいα線を放出し、毒性が極めて強い。骨に蓄積すると半永久的に内部被曝を与え続け、骨腫瘍や白血病を引き起こす恐れがある。
 セリウム144は、タービン建屋地下1階に溜まった汚染水から、なんと1ミリリットル当たり220万ベクレルも検出された。燃料棒自体が損傷していなければ出てこない数値だ。燃料棒がドロドロに溶けたことを意味する。
 同じく燃料棒損傷の証拠となるのが、ランタン140とバリウム140だ。両者は、普通燃料棒の中に封じ込められていて、出てこない物質だ。「ランタン140は、福島第一付近の海水から検出された。気体になりにくい物質で、注入された冷却水に混じり燃料棒から漏れ出た可能性が高い」「バリウム140は核反応によって生成するもので、燃料棒が損傷し、再臨界寸前だったことを示唆している」
 3月23日に海水から検出された「ジルコニウム95は燃料棒の被覆管の材料で、被覆管が溶けて漏出した」。
 このほか、同じ海水からルテニウム105とモリブデン99、テクネチウムを検出。さらに、肝臓や骨に蓄積してガンになりやすいトリウム232やアメリシウム241なども検出された。主に骨に蓄積して骨腫瘍を起こすストロンチウム90やラジウム226も出た。
 目に見えない放射性物質が複数かつ大量、漏出し飛散し、福島周辺の大気と陸と海に放射線を注ぎ続けているのだ。
 政府は、ヨウ素131やセシウム137の実測データを一部公開しているが、その他の、上記のような放射性物質の詳細は、まだ明らかにしていない。

 以上、一橋文哉(ジャーナリスト)/本誌取材班「米軍機密文書入手! 福島原発の『危険な話』」(「新潮45」2011年月6号)に拠る。

   *

 東電は、5月23日に原子力安全・保安院へ提出した報告書(24日公表)の中で、2号機では、3月11日に発生した地震から21時間後に直径10センチの穴が開いた可能性が高く、さらに15日に起きた水素爆発で、同10センチの別の穴が開いた、と推定している(現場に立ち入って確認することができないため、穴の大きさなどは推定にとどまる)。また、1号機~3号機のすべてで震災後に炉心溶融が起きた、との見解も(ようやく)示した(2011.05.25 CNN.co.jp)。

 報告書によれば、2号機の冷却システムが停止し、燃料の出す熱で水が減り、圧力容器内の燃料棒(長さ約4メートル)下部まで水位が低下した。(1)燃料棒の一部が水につかった場合(2)、水位が回復せずに燃料が露出し続けた場合、の2通りでシミュレーションしたところ、2号機は地震から77時間後の14日午後8時ごろから炉心の損傷が開始。(1)の場合は燃料の半分程度が圧力容器の底に落下し、残り半分は本来の位置にとどまった。(2)の場合は大部分の燃料が落下した。東電は、(2)の方が現実に近い、とみている。2号機では101時間後の15日午後8時ごろに燃料の大部分が圧力容器の底に落下する炉心溶融が起き、6~8時間後に圧力容器が破損した。2号機では計測された圧力データから、格納容器に10センチ相当の複数の穴が開いている可能性が浮かんだ。1~3号機で水素爆発が発生したが、燃料棒損傷で生じた水素の量は、1号機800キロ、2号機400キロ、3号機600キロと推計した。また、冷却システムが停止し、注水を開始するまでの数時間で、燃料棒を溶融させる3,000度近くに達した(2011年5月25日 毎日jp)。
     ↓クリック、プリーズ。↓
にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ  人気ブログランキングへ  blogram投票ボタン

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする