グリーンピースは、これまで空気、土壌、海水に加えて、野菜、海藻についても独自に放射能汚染調査を行っている。結果は公表している。
5月3~9日の間の海藻に係る調査結果は、次のとおりだ。いずれも福島県内の沿岸または沖合で獲れたものだ。最も危険性の低い放射性ヨウ素の基準値は2,000ベクレル/kg、放射性セシウムの基準値は500/kgだから、いずれもとてつもなく高い値だ。
・ホソメコンブ:久之港沿岸で採取・・・・19,000ベクレル/kg以上
・フクロノリ:久之港沿岸で採取・・・・16,000ベクレル/kg以上
・カヤモノリ:四倉港沿岸で採取・・・・14,000ベクレル/kg以上
・ホメソコンブ:四倉港沿岸で採取・・・・18,000ベクレル/kg以上
・アカモク(ホンダワラ科の海藻):江名港沿岸で採取・・・・21,000ベクレル/kg以上
・アカモク:富神崎南沿岸で採取・・・・23,000ベクレル/kg以上
・アカモク:福島第一原発の南東53km沖合で採取・・・・13,000ベクレル/kg以上
なぜ海藻を調べるのか。
海に放出された放射性物質は、水より比重が大きいから、いずれは海底に堆積する。海底に棲息して動かない海草類は、放射能汚染の影響を受けやすい。本来、海藻を調べるのが汚染の実態を知る最も簡便な方法だ。しかるに、政府は絶対に調べようとしない。【水口憲哉・東京海洋大学名誉教授】
放射能汚染を調べる際の、国のガイドラインに、海草類を「指標生物として使う」と明記されている。汚染のマッピングができるのだ。まず海底の土を最初に調べるべきだが、政府はそれすらやっていない。【佐藤潤一郎・グリーンピース・ジャパン事務局長】
なぜ政府は調べようとしないのか。
省庁の縄張りを理由にしている。水産庁は漁業を管轄する省庁だから、「食用になる海産物を担当する」という建前がある。だから、海底の土は文科省の担当になる。しかし、文科省は陸の調査で忙しい。普段は利権拡大に利用する縄張りを、今回は怠慢の言い訳に使っている。【匿名・海洋学者】
遅ればせながら、陸では避難区域が広がり、対応は少しずつ進んでいる。
これに対し、海洋汚染への対応はあまりにも遅れている。なぜか。
学者のチェック機能がまったく働いていないからだ。実は、水産関係研究者も「原子力村」に取りこまれている人が非常に多い。理由は簡単で、原発は海辺につくらなくてはならないから、必ず漁業補償の問題が出てくるからだ。放射能は安全だ、原発は安心だ、と漁師たちを説得する時に、水産学者も一役買うのだ。水産系で放射能を扱っている研究所はたくさんあるが、総じて電気事業連合会から研究費を貰っている。放射能を専門にする水産学者の多くは、本籍が原子力村なのだ。【前出の海洋学者】
「魚は安全」と言い張る水産庁に、勝川俊雄・三重大学准教授(海洋個体群動態学研究室)は警鐘を鳴らす。水産原子力村に反旗を翻す科学者は少数だが、勝川准教授はその一人だ。
福島原発1号機と3号機から出た汚染水(基準値の100倍とされる)を海に放出する時に、東電と国は2号機の超汚染水との比較で「低濃度汚染水」という呼称を使った。魚でも「PCBやDDTに比べると、放射性物質は魚に溜まらないから安全」という。一事が万事、この調子だ。海にばらまかれた放射性物質は、生物濃縮を経て、いずれ人間に返ってくる。政府が意図的に流す「安心デマ」よって、意識を持っていれば防げた内部被曝を引き起こしてしまうのではないか、心配だ。【勝川准教授】
グリーンピースの調査を政府が嫌がるのは、コントロールがきかないからだ。
以上、記事「野菜と海藻 放射能汚染調査の全記録」(「週刊現代」2011年6月4日号)に拠る。
*
グリーンピースは、4月17日付けで政府に調査協力を要請し、政府は4月17付けで拒否した。
グリーンピースは、日本の漁師、サーファー、ダイバーの協力を得て調査し、検体を少なくとも3つの第三者機関に送った。その一つは、フランスの放射能測定を行うNPO「ACRO」。もう一つは、ベルギーの国営研究機関、原子力研究センター(SCK・CEN)だ。
①品目、②採取地点、③採取日、④ヨウ素131、⑤セシウム134、⑥セシウム137・・・・の順に記す。なお、放射性物質の単位はBq/kg。県名のない港は、すべて福島県。ヨウ素131の半減期は約8日間なので、採取日の数値は計測日から逆算したもの。
なお、政府の野菜の基準値はヨウ素131が2,000Bq/kg、セシウム(134と137を足したもの)が500Bq/kgだ。
●ACROによる計測データ
(1)①アカモク、②原発から南65キロ地点、③5月4日、④28.9、⑤2以下、⑥2以下
(2)①アカモク、②原発から南東52キロ地点、③5月4日、④119,000、⑤348、⑥364
(3)①フクロノリ、②久之浜港、③5月4日、④65,000、⑤540、⑥570
(4)①カヤモノリ、②四倉港、③5月5日、④17,000、⑤1,390、⑥1,450
(5)①タンバノリ、②江名港、③5月5日、④3,040、⑤580、⑥600
(6)①アカモク、②江名港、③5月5日、④127,000、⑤800、⑥840
(7)①アカモク、②勿来港、③5月9日、④20,000、⑤259、⑥266
●SCK・CENによる計測データ
(1)①コンブ、②宮城県日門港、③5月3日、④180、⑤2.62、⑥2.11
(2)①ヒトデ、②釣師浜港、③5月4日、④168、⑤467、⑥474
(3)①ワカメ、②釣師浜港、③5月4日、④149、⑤7.7、⑥7.9
(4)①アカモク、②釣師浜港、③5月4日、④2,190、⑤17.5、⑥15.3
(5)①アカモク、②原発から南65キロ地点、③5月4日、④8.8、⑤0.8以下、⑥0.9以下
(6)①エゾイソアイナメ、②小名浜港、③5月5日、④60、⑤427、⑥430
(7)①ムラサキイガイ、②江名港、③5月5日、④950、⑤400、⑥406
(8)①アカモク、②原発から北東42キロ地点、③5月5日、④1,750、⑤5.8、⑥4
(9)①マナマコ、②久之浜港、③5月5日、④1,240、⑤646、⑥639
(10)①コンブ、②四倉港、③5月5日、④107,000、⑤980、⑥990
(11)①カキ、②四倉港、③5月5日、④417、⑤378、⑥362
(12)①アカモク、②茨城県河原子港、③5月9日、④620、⑤8.1、⑥7.8
(13)①エゾイソアイナメ、②茨城県久滋港、③5月9日、④1.8以下、⑤6、⑥6
(14)①シラス、②勿来港、③5月9日、④67、⑤608、⑥611
以上、上杉隆「原発『海産物汚染』戦慄データを全公開」(「週刊文春」2011年6月2日号)に拠る。
↓クリック、プリーズ。↓
5月3~9日の間の海藻に係る調査結果は、次のとおりだ。いずれも福島県内の沿岸または沖合で獲れたものだ。最も危険性の低い放射性ヨウ素の基準値は2,000ベクレル/kg、放射性セシウムの基準値は500/kgだから、いずれもとてつもなく高い値だ。
・ホソメコンブ:久之港沿岸で採取・・・・19,000ベクレル/kg以上
・フクロノリ:久之港沿岸で採取・・・・16,000ベクレル/kg以上
・カヤモノリ:四倉港沿岸で採取・・・・14,000ベクレル/kg以上
・ホメソコンブ:四倉港沿岸で採取・・・・18,000ベクレル/kg以上
・アカモク(ホンダワラ科の海藻):江名港沿岸で採取・・・・21,000ベクレル/kg以上
・アカモク:富神崎南沿岸で採取・・・・23,000ベクレル/kg以上
・アカモク:福島第一原発の南東53km沖合で採取・・・・13,000ベクレル/kg以上
なぜ海藻を調べるのか。
海に放出された放射性物質は、水より比重が大きいから、いずれは海底に堆積する。海底に棲息して動かない海草類は、放射能汚染の影響を受けやすい。本来、海藻を調べるのが汚染の実態を知る最も簡便な方法だ。しかるに、政府は絶対に調べようとしない。【水口憲哉・東京海洋大学名誉教授】
放射能汚染を調べる際の、国のガイドラインに、海草類を「指標生物として使う」と明記されている。汚染のマッピングができるのだ。まず海底の土を最初に調べるべきだが、政府はそれすらやっていない。【佐藤潤一郎・グリーンピース・ジャパン事務局長】
なぜ政府は調べようとしないのか。
省庁の縄張りを理由にしている。水産庁は漁業を管轄する省庁だから、「食用になる海産物を担当する」という建前がある。だから、海底の土は文科省の担当になる。しかし、文科省は陸の調査で忙しい。普段は利権拡大に利用する縄張りを、今回は怠慢の言い訳に使っている。【匿名・海洋学者】
遅ればせながら、陸では避難区域が広がり、対応は少しずつ進んでいる。
これに対し、海洋汚染への対応はあまりにも遅れている。なぜか。
学者のチェック機能がまったく働いていないからだ。実は、水産関係研究者も「原子力村」に取りこまれている人が非常に多い。理由は簡単で、原発は海辺につくらなくてはならないから、必ず漁業補償の問題が出てくるからだ。放射能は安全だ、原発は安心だ、と漁師たちを説得する時に、水産学者も一役買うのだ。水産系で放射能を扱っている研究所はたくさんあるが、総じて電気事業連合会から研究費を貰っている。放射能を専門にする水産学者の多くは、本籍が原子力村なのだ。【前出の海洋学者】
「魚は安全」と言い張る水産庁に、勝川俊雄・三重大学准教授(海洋個体群動態学研究室)は警鐘を鳴らす。水産原子力村に反旗を翻す科学者は少数だが、勝川准教授はその一人だ。
福島原発1号機と3号機から出た汚染水(基準値の100倍とされる)を海に放出する時に、東電と国は2号機の超汚染水との比較で「低濃度汚染水」という呼称を使った。魚でも「PCBやDDTに比べると、放射性物質は魚に溜まらないから安全」という。一事が万事、この調子だ。海にばらまかれた放射性物質は、生物濃縮を経て、いずれ人間に返ってくる。政府が意図的に流す「安心デマ」よって、意識を持っていれば防げた内部被曝を引き起こしてしまうのではないか、心配だ。【勝川准教授】
グリーンピースの調査を政府が嫌がるのは、コントロールがきかないからだ。
以上、記事「野菜と海藻 放射能汚染調査の全記録」(「週刊現代」2011年6月4日号)に拠る。
*
グリーンピースは、4月17日付けで政府に調査協力を要請し、政府は4月17付けで拒否した。
グリーンピースは、日本の漁師、サーファー、ダイバーの協力を得て調査し、検体を少なくとも3つの第三者機関に送った。その一つは、フランスの放射能測定を行うNPO「ACRO」。もう一つは、ベルギーの国営研究機関、原子力研究センター(SCK・CEN)だ。
①品目、②採取地点、③採取日、④ヨウ素131、⑤セシウム134、⑥セシウム137・・・・の順に記す。なお、放射性物質の単位はBq/kg。県名のない港は、すべて福島県。ヨウ素131の半減期は約8日間なので、採取日の数値は計測日から逆算したもの。
なお、政府の野菜の基準値はヨウ素131が2,000Bq/kg、セシウム(134と137を足したもの)が500Bq/kgだ。
●ACROによる計測データ
(1)①アカモク、②原発から南65キロ地点、③5月4日、④28.9、⑤2以下、⑥2以下
(2)①アカモク、②原発から南東52キロ地点、③5月4日、④119,000、⑤348、⑥364
(3)①フクロノリ、②久之浜港、③5月4日、④65,000、⑤540、⑥570
(4)①カヤモノリ、②四倉港、③5月5日、④17,000、⑤1,390、⑥1,450
(5)①タンバノリ、②江名港、③5月5日、④3,040、⑤580、⑥600
(6)①アカモク、②江名港、③5月5日、④127,000、⑤800、⑥840
(7)①アカモク、②勿来港、③5月9日、④20,000、⑤259、⑥266
●SCK・CENによる計測データ
(1)①コンブ、②宮城県日門港、③5月3日、④180、⑤2.62、⑥2.11
(2)①ヒトデ、②釣師浜港、③5月4日、④168、⑤467、⑥474
(3)①ワカメ、②釣師浜港、③5月4日、④149、⑤7.7、⑥7.9
(4)①アカモク、②釣師浜港、③5月4日、④2,190、⑤17.5、⑥15.3
(5)①アカモク、②原発から南65キロ地点、③5月4日、④8.8、⑤0.8以下、⑥0.9以下
(6)①エゾイソアイナメ、②小名浜港、③5月5日、④60、⑤427、⑥430
(7)①ムラサキイガイ、②江名港、③5月5日、④950、⑤400、⑥406
(8)①アカモク、②原発から北東42キロ地点、③5月5日、④1,750、⑤5.8、⑥4
(9)①マナマコ、②久之浜港、③5月5日、④1,240、⑤646、⑥639
(10)①コンブ、②四倉港、③5月5日、④107,000、⑤980、⑥990
(11)①カキ、②四倉港、③5月5日、④417、⑤378、⑥362
(12)①アカモク、②茨城県河原子港、③5月9日、④620、⑤8.1、⑥7.8
(13)①エゾイソアイナメ、②茨城県久滋港、③5月9日、④1.8以下、⑤6、⑥6
(14)①シラス、②勿来港、③5月9日、④67、⑤608、⑥611
以上、上杉隆「原発『海産物汚染』戦慄データを全公開」(「週刊文春」2011年6月2日号)に拠る。
↓クリック、プリーズ。↓