散日拾遺

日々の雑感、読書記録、自由連想その他いろいろ。
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在庫と嗚咽

2022-11-10 07:59:06 | 日記
2022年11月10日(木)
 「在庫」とは「倉庫に在る」ということで、goo 辞書だと以下のような説明になる。
 1  商品が倉庫などにあること。また、その商品。「―がきれる」
 2  原材料・仕掛品・製品などが企業に保有されていること。また、それらの財貨。
 ともかく商取引用語のはずなのだが、これを「手持の残薬」という意味で使う人が、ちらほら出てきた。
 「パキシルとマイスリーを前回同様2週間?」
 「マイスリーはまだ在庫がありますので大丈夫です」
 といった具合。
 初めて聞いたときは冗談めかしてわざと言っているのかと思ったが、どうもそうではないらしい。意味は分るし国語の教室ではないからことさら訂正もしないが、首筋に軽く鳥肌の立つ感じは否めない。

 医師専用のwebサイトを眺めていたら、「おえつ」という言葉を「吐き気」や「悪心」という意味で使う患者さんがいるという発言に、「いる」「いた」「いるいる」と反応続出。これは僕も経験している。
 同じく goo辞書によれば…
 お‐えつ〔ヲ‐〕【×嗚▽咽】
[名](スル)声をつまらせて泣くこと。むせび泣き。「遺体にすがって―する」
 「おえつ」という言葉がつらい心身状態に関わるという漠然とした認識と、「おえっ」という擬音語(?)の連想から生じた誤用と思われるが、これなど十年後には正しい用法として定着しているかもしれない。
 僕が経験した最初の誤用場面では、男性が苦痛に満ちた家族別れを経験しており、そのことを考えると「おえつ」がしてくるということだったから、てっきり本来の意味での嗚咽だと初めは思った。それでも「おえつ」が「する」はヘンだなと思ううちに、「おえつを抑える薬をください」「それは薬で抑えるよりも」などと次第にやりとりがちぐはぐになり、やがて誤用に気づいたのである。

 コミュニケーションは医療の命、些細なことのようでも言葉の点検は、あだやおろそかにできない。

Ω

作品(art)

2022-11-10 07:28:18 | 日記
2022年11月4日(金)


 外来を訪れた、ある人の贈り物である。一つ一つ丁寧にラップされ、全体が緩衝材で念入りに包装されている。悔しいことにカメラのピントがぴったり合わず、一つ一つの精緻なディテイルが再現できない。光も足りない…


 これが通常なんと呼ばれるものかは、どうでも良いことのように思われてくる。「作品」というだけで十分、art という言葉はそうしたもののためにある。自然 nature/natural と対置される人為の作品 art/artificial 、人の手がそこに介在していることだけが明らかであり、ついでながら食べて味わうこともできる。

Ω