散日拾遺

日々の雑感、読書記録、自由連想その他いろいろ。
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「破落戸」で何と読むか?

2022-11-17 22:48:41 | 日記
2022年11月18日(金)

  「破落戸」と書いて「ならずもの」と読む。高校二年、冬の教室の朝の驚き。
 誰かが難読語を見つけてくると、別の誰かがその上を見つけて倍返しする、16歳の本能に駆られて応酬を繰返した末、ここに至って皆が黙り込んだ。何をどう読んだら「ならずもの」になるのか、意味から迫ろうにも手がかりがない。
 「ただ(無料)」のことをなぜロハというか?今どき「ロハ」が死語だからクイズ自体が成立しないが、漢字の「只(ただ)」を分解して「ロハ」というのが通説である。それを「先立つイがないからさ」とやってのけたのは、例によって異能の悪友Rの機知の閃きだったが、これも今では通じそうもない。「先立つものがない」という慣用句が、持ち金不足の婉曲表現として通用した時代の昔話である。
 ともかく「ロハ」ならこうした分解が可能だけれど「破落戸」はどうにもならず、辞書を見ても埒があかない。生涯残りそうな小さな謎として記憶の片隅にあり続けた。

 時移って21世紀、令和の御代のとある朝、「あっ!」と時ならぬ叫びを挙げたのは韓国ドラマの一場面。字幕に「破落戸」の文字が現れ、同時にはっきり聞こえたのは…
 「パラッコ」
 半世紀越しの謎の扉が突然、半分開いた瞬間である。
 言葉を発したのはドラマの中の大院君(テウォングン)、李氏朝鮮末期の守旧派の巨魁として、日清戦争の伏線あたりで日本史にも顔を出すあの大院君である。金一族に圧倒されて不遇の日々に、半ば韜晦、半ば本音の自虐として自身を
 「パラッコ」
 と評した、その場面である。文脈からは「ならずもの」の粗暴さより「役立たず/無駄飯喰らい」の意味合いと思われるが、十二分に通底する。そして「破落戸」という漢字語を日本語で「ならずもの」と訓読するのは全く不可だが、「パラッコ」はこの三文字を韓国流に音読したものであること間違いない。
 さっそく確認、ありました!

 파락호 【破落戸】ならず者、ごろつき(小学館「韓日辞典」)
 
 漢字語つまり中国語由来の「破落戸」という言葉があり、これを朝鮮では「パラッコ」と音読し、本朝では意味をとって「ならずもの」とした、そういうことらしい。
 さてそうなると、本家の中国語に「破落戸」という言葉が実在するかどうか、これが謎の本丸ということになるが、残念ながらすぐには検証できない。利用可能な手許の辞書では出てこないようである。
 韓国ドラマを原語の音声で聞いていると、ときどき思いがけない発見がある。そのきわめつけの例として、さしあたり書き留めておく。

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拙著御案内 ~ 『老いと祝福』

2022-11-17 11:32:32 | 日記
2022年11月17日(木)
 「せっかく出たのに、ブログに載せないんですか?」と言ってくれる人があり、励まされて恥ずかしながら…


 『老いと祝福』(日本基督教団出版局)11月1日発売

 そもそも「祝福」とはどういうことかという年来の自問から説き起こし、講演で話してきたことを基に、思いつくままあれこれ書いてみた。
 出版元からも分るとおり、聖書の信仰を共有する人々を想定してのものなので、自ずと読者は限定されるかと覚悟していた。それが思いのほか、広範囲の読み手から好意的な反応を早々に受けとり、まずは嬉しい驚きを感じつつある。
 二年前の下記のものから、反対極へ跳んだねと笑われた。次は真ん中?何だろう、死生観かな、スピリチュアリティか…


『神さまが見守る子どもの成長』(日本基督教団出版局)2020年

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