Dutch Life 備忘録

オランダのミュージアム、コンサート、レストランなどについて記録するノート。日常的な雑記も…。

本『きことわ』

2011-03-03 08:47:22 | Book
朝吹真理子著の芥川受賞作『きことわ』を読了。
今回、月刊文藝春秋が3月号から海外配信(興味のある方はこちら→へ)を始め、オランダからも電子版が買えるようになり、またこの3月号は芥川受賞作2作が収められているということで、お買い得感があり、購入しました。
PCでも読めるのですが、私はベッドの上で読みたいので、ipodtouch用にダウンロードしました。デバイスごとにいろいろと購入方法はあるのですが、私はZinioを使用しました。
ipodtouchの画面はかなり小さいので何度かピンチアウトしなければいけないのですが、解像度がかなり良いので、字を読むのは苦になりませんでした。ただ、ロードに少し時間がかかり、頁をめくるとちゃんと表示されるまでに少し待たなければならないのが、やっかいでした。
さて「きことわ」ですが、夢と現実がただよう感じの変わった雰囲気の小説でした。私はけっこう夢を見るほうなので、夢と現実と過去の記憶がまぜこぜになる感じというのが何となくよくわかって、小説内の世界に気持ちよく引き込まれました。近世歌舞伎を研究していたという経歴をもつ著者ゆえにか、ふだんは使わないような日本語があちらこちらにあって、それがまた浮世感を出していました。その言語感覚とともに、やはりお嬢様として育ったのだろうなあと思わせる、社会のどろどろとした現実感が小説全体において抜け落ちていて、これがこの人の持ち味なのかもしれないけれど、もう一つの芥川賞受賞作「苦役列車」とは随分違うなあと思いました。
感動したり、考えさせられるテーマがあるといった小説ではないけれど、「きことわ」には人の頭の中に流れているイメージ(思い)と時間という、いつもそこにあるのに掴みがたいものを、うまく文章にしていて、非凡なものを感じました。これからのこの著者の作品に注目したいと思います。
体調は良好です。