20階の窓辺から

児童文学作家 加藤純子のblog
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桜の木の下で

2008年11月21日 | Weblog
 桜の木ほど、変幻自在に人間のこころを揺りうごかす木はないかもしれません。 
 春。満開の桜の花びらの散り落ちる下で、人びとは浮かれ、その花を愛でます。うす桃色の花びらは、あたかも人びとを癒すかのように舞い落ちます。
 けれど、桜が本性を現すのは、あたりが夜の闇につつまれる頃です。
 かなり昔、坂口安吾の『桜の満開の木の下で』を読んで以来、お花見を楽しみながらも、胸のどこかで桜を警戒するような節があることに気づかされます。夜桜の美しさは、ひとのこころをゆさぶります。立ち入り禁止の領域へと誘われるような不安にかられます。
 けれど初夏。葉桜の季節になると、青々と緑豊かな木は、さわやかで清冽な風を運んできます。
 そしていま。
 桜の木はすっかり黄葉し、風がふくたび金色の葉っぱが空を舞います。
 まるで、折り紙のなかに一枚だけ入っている、すごく大切に使っていた金色の折り紙を、葉っぱの形に切りそろえたような葉っぱを。
 私は口をあんぐり開け、その木を見上げています。
 
 写真は、口をあんぐり開けた角度から撮った桜の木です。
コメント (4)
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