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児童文学作家 加藤純子のblog
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「今の児童書 私の推し」第6回 加藤純子

2023年12月01日 | Weblog
                               
                  子どもと読書の委員会2023.12.01

日本児童文学者協会「子どもと読書の委員会」では、毎月、月初に、委員のメンバーが「私の推し」として、作品をご紹介するリレートークを続けています。

今回12月1日は、私の番でした。
でも、この期間は、忙しくバタバタしているだろうと推察し、11月には委員長のしめのゆきさんに原稿をお願いしておきました。
案の定、バタバタしております。

しめのさんから、今日、児文協のHPに、載せてくださった旨、ご連絡がありました。
しめのさん、ありがとうございました。下、児文協のHP。
ここをご覧いただけば、これまでのご紹介本も出てきます。

11月に鳥野さんがご詳細された『じゅげむの夏』(最上一平作)。
私は、そのご本を読みながら、井上陽水の「少年時代」をイメージしていました。
「今の児童書 私の推し」第5回 鳥野美知子 
 
今回、12月は、森川成美さんの『かわらばん屋の娘』(くもん出版)をご紹介させていただきました。

森川さんの、時代性を背景に描かれた作品には、『花の街オペラ』や、真珠湾攻撃の時代を根っこにしたハワイでの暮らしが書かれた『マレスケの虹』など、たくさんあります。
いつも刺激的なテーマを持ち込み、その取材力と資料を読み込む力で、時代的背景をきちんと描きながら森川さんは作品を作り上げています。
今回の舞台は江戸です。母が流行病で早逝し、弟と二人残された「吟」。ところが今度は父まで消息不明。貧しい長屋暮らしで父がやっていた「かわらばん屋」を引き継いで生きています。
この江戸のかわらばん作りがとても面白い。

吟の姿からイメージしたのが、杉浦日菜子の名作『百日草』です。杉浦日菜子といえば江戸文化の専門家。『百日草』には葛飾北斎の娘、お栄が描かれています。
このお栄の絵を描く力と勝気さ。それがこの『かわらばん屋の娘』の吟とも重なります。
貧しい長屋生活で幼い弟の面倒を見ながら、かわらばんの下絵を書き、江戸の町で売って生きているのです。
秀逸なのが人魚をめぐるあれこれ。あの時代、架空の生き物などが、おどろおどろしくかわらばんなどに出てくると、江戸の人たちには何よりの娯楽。
と、思いきや、様々な形で表現された「人魚」は実は、すでに奈良時代から知られていたようです。
そして江戸の人たちは「人魚」は「しあわせ」をもたらすものと信じていたようです。そんなあれこれを作品に持ちこみながらストーリーを大きく展開させていきます。

「吟」の潔い生き方に惹かれつつ、歴史物語を堪能できる一冊です。
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次回は2024年2月、松本聰美さんです。どうぞお楽しみに。
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