【すみません、このエッセーは1月29日付の「しんぶん赤旗」からです。
お正月は一ヶ月以上前、旧暦の元日でも1月の25日だったし、立春だってとっくに過ぎたし、どう転んでもーお正月ーにはならないところ、川柳精神で気持ちを切り替えて……。】
あれよあれよと一月も終わりだ。が、部屋には要整理の書類箱が越年して、いまだに積み上がったままである。まったく元旦早々、声高らかに「片付け元年」を宣言したのはどこのどなたですかいのー。なんて吐息をついたら、一緒にこんな句がぽろりと出た。
〈 あしたからがんばりますよあしたから 新家完司 〉
いやいや、今でしょう。
と、愛誦句の誘惑を振り払い、まずは残っていたお餅を食べきることから「新年」を片付ける。
次は年賀状に着手。
お年玉ハガキの当選番号を確認しながら、懐かしい人の文字をもう一度懐かしがったりする恒例のひとときだ。
SNSでつながる知人友人との賀状交換は、お互い「もういいよね」と年々減りつつある。けれどやっぱり肉筆はあったかいな。
写真付きも楽しい。
かつての家族写真に代わって、近年は本人が主役のもの、それも登山の写真が増えた。
「山の空気に心身洗われています」「今年は〇〇山、単独登頂目指します」など、山ガール山ボーイたちの一筆も清々しく勇ましい。登山ブームが周囲でも定着した感じ。きっと山には「新しい自分」を目覚めさせる何かがあるのだろう。
なかにはご夫妻のツーショットもある。
ご夫君は大学の先輩で、学生時代はモテモテのクールガイ。が、いまや山頂の青空バックに二人でにっこり、とはすっかり焼きがまわったというか微笑ましいというか。といいつつ、この先輩にこそっと憧れていた時期もあったっけ。
〈 あの頃の恋に恋ではかなわない 佐田眞喜 〉
一方、今年は子年であるからしてイラストは実に多彩なネズミのオンパレードだ。もちろんミッキーマウスもハッピーにご登場。
と、ふと。実物のネズミを最後に見たのはいつかなと思った。幼い頃は家の天井裏をよくネズミが駆けっこしていたけれど。
そうそう、田舎の母の実家で、生まれたてのネズミの赤ん坊たちに遭遇したこともあった。 ピンクのつやつやがひしめく様子に総毛立ちながら釘付けになって。 なのでネズミは多産、というのは強烈な原体験の一つでもある。
げに、子年は繁栄の年ときく。今年がみなさまにとて素晴らしい……ってだから来週は早立春で、いやはやどうなる片付け元年。
〈 打ち明ける優しい方のミッキーに 博子 〉