シャクナゲ 石楠花 ツツジ科ツツジ属
日本の山地で自生しているだけでも、アズマシャクナゲ、ホソバシャクナゲ、キシャクナゲなどたくさんの種類がありますが、ここでご紹介する大峰・大台山系の花はホンシャクナゲという種類です。
最初に少し古い写真を見てください。1995年6月1日に義父母と登った大台ケ原の日出ヶ岳。山頂駐車場から4~50分で登れる山ではありますが、この時の父は84歳、母は80歳です。
1972年に北八ヶ岳を縦走して初めて山らしい山に登った父母は、その後、木曽駒・宝剣、富士山、本白根山と私達と一緒に登りました。その間には二上山などで足慣らしもしています。102歳と98歳になった今も元気なのは、山のお蔭だと口癖のように言ってくれます。
変愚院が定年になった年、これまで時期的に逃していた大台のシャクナゲを見ようと誘いました。山頂で柵に囲まれていたシャクナゲを見て、大杉谷の方に向かって降りて行きます。
ホンシャクナゲの群生する道をシャクナゲ平に下ると、真紅の蕾、満開の花と目も眩むような光景。殆ど人の通らない、花に囲まれた小さな空き地で弁当を食べました。山頂に引き返し正木が原へ向かいます。
その時の山日記に「次々に登ってくる人たちが疲れ果てた様子なのに、わが両親の元気なこと」。しっかりした足取りで尾鷲辻から駐車場へ周遊しました。
その後も大台ヶ原には何度も訪れましたが、2011年6月9日、久しぶりにシャクナゲ平へ降りてみました。この日も「平」では花が残っていましたが、大蛇からシオカラ谷へ下る道では花の時期を過ぎていました。
これは6月の稲村ヶ岳のシャクナゲです。2003年6月6日、大峰登山の玄関口・洞川から法力峠、山上辻を経て山頂へピストンしました。これより26年前の5月には途中、大日岳のキレットからシャクナゲの群生の中をかき分けて、頂上に出たのですが、キレット付近は崩壊が進んで通れなくなっていました。
写真は山頂近くなって、鎖やハシゴが出てくる頃。ようやく出会った咲き残ったシャクナゲです。
大峰山系では5月中旬~下旬が花の盛りです。この時期には何度もシャクナゲに出会っています。
特に奥駆道には石楠花岳というピークもあり、素晴らしいシャクナゲのトンネルを体験しました。他にもあちこちで満開の花に長い縦走の疲れを癒されました。写真は聖誠無漏岳の下りのシャクナゲ林。このような花の間を縫うように急坂を下ると持経宿に着きます。
シャクナゲの原産地はブータン、ネパールの山岳地帯と言われています。ネパールではラリグラスと呼ばれ国花になるほどで、見上げるような大木が密生していて3~4月には全山が真っ赤に染まります。写真はゴラパニから下る途中、尾根の頭(3262m)のシャクナゲ(1997.03.31)。♀ペンと二人の個人トレッキングでした。右は山岳ガイドのミン君、背後の高い山はダウラギリ(8167m)、右端はアンナプルナサウスです。29日夜から雪が降り、30日は停滞を余儀なくされましたが、その代償のように白雪と真紅のラリグラスという思いがけぬ光景に出会えました。私たちには忘れられぬシャクナゲの想い出です。