*このシリーズは山行報告ではなく、私のこれまで登った奈良の山をエリアごとに、民話や伝説も加えて随筆風にご紹介しています。季節を変えたものや、かなり古いもの写真も含んでいます。コース状況は刻々変化しますので、山行の際は最新の情報を入手されますようお願いします。*
(129)涅槃岳(ねはんたけ) <1346m> 「昔は、けつかうが森」
地蔵岳のコルから般若岳へは短いが急登である。頂上付近にはミツバツツジやアケボノツツジが美しく咲いていた。少し狭まった尾根道を下ると滝川辻で、西に下ると十津川側の滝川である。雑木林の中をさらに下った最低鞍部にくる。エアリアマップでは、ここに笹の宿跡、ヒクタワとともに剣光門の文字がある。
宮家準氏「大峰修験道の研究」によると、「乾光門」の鳥居と金剛童子をまつった小祠があり、吉野から発心門、等覚門、妙覚門とこの乾光門で四門を越えたことになるので、ここから山上権現、釈迦、弁才天、さらに大峰一山を拝み返す所であったという。しかし鳥居や祠は見あたらなかった。森沢さんによると、本来の「拝返し」はこの先の聖誠無漏岳ではないかということである。次のピーク・涅槃岳(1346m)へも急な登りがある。
「吉野郡群山記」に『乾光門、滝川辻、金剛童子祠より登る坂を云ふ。乾光門を登れる峯を、俗にけつかうが森と云ふ。』とあるが、この「けっこうが森」が今の涅槃岳である。あまり展望はよくない。
緩やかなアップダウンで聖誠無漏岳(しょうじょうむろ)に来る。大きなシャクナゲが群がる中を下る。背丈より高い笹の緑とピンクの花のトンネルがしばらく続く。鎖のついた大きな岩を下り、再び鎖で登り返す。最後の阿須加利岳から、かなりの急坂を下ると持経宿(第二十二靡)である。