*このシリーズは山行報告ではなく、私のこれまで登った奈良の山をエリアごとに、民話や伝説も加えて随筆風にご紹介しています。季節を変えたものや、かなり古いもの写真も含んでいます。コース状況は刻々変化しますので、山行の際は最新の情報を入手されますようお願いします。*
(132)蛇崩山(だぐえやま) <1172m> 「長大な尾根を蛇と見た?」
笠捨山から瀞八丁に向かって南下する長い山稜の上にある。十津川周辺の方言で「崩れる」ことを「ぐえる」という。しかし、山名との関係は詳らかでない。さて、笠捨山から古屋宿間の奥駈道は江戸時代には現在の稜線通しの道でなく、笠捨山から熊谷ノ頭を経ていったん上葛川に下り、ここから古屋宿に登り返していた(森澤氏『大峰奥駈道七十五靡』)。
2006年11月、森澤氏をリーダーとする日本山岳会例会でこの江戸道を登った。
上葛川の民宿で一泊、葛川対岸の斜面に付けられた道を登る。支尾根にでて西側山腹をトラバースして稜線を東側に乗越す。展望が開け、熊谷ノ頭や蛇崩山が見える。1040mピークを越えて壊れた作業小屋のあるコルに下り、丈の低い笹原の斜面を右手の樹林帯に沿って直登すると熊谷ノ頭である。
右に延びる尾根上の蛇崩山へは、緩やかに起伏するコブを二つ越してヒノキ林の道を行く。最後に急登でもう一つコブを越すと、大きなブナが林立する中に蛇崩山の広い頂上があった。
往復45分だった。熊谷ノ頭から笠捨山へは、緩やかなアップダウンから次第に傾斜が強まり、露岩の散らばるピークを越して行く。最後は笹原の中の胸を突くような急坂を登ると、笠捨山東峰の広場に飛び出した。釈迦ヶ岳から奥駈道が通る山々がこちらに向かって続き、七面山、中八人山も霞んでいた。
狭い西峰から南へ。槍ヶ岳への登りにかかる手前の葛川辻で奥駈道を離れ、上葛川に向けて下った。