いつもなら桜前線の話題も多いこの頃ですのに、自然の猛威の前に無力さを噛みしめ、いろいろな不安や心配ごとの多い昨今です。 せめて早く春らしい暖かさに包まれ、そして桜の花を愛でる楽しみを皆で分かち合いたいと願う方も多いと思います。
今日、ご紹介するのは、スティーブ&ペギー・キテルソン夫妻のフラワーシリーズから「チェリーブロッサム」です。 この間のアメリカ万華鏡展でも、この作品を見てきれいだといって下さった方も多かったのですが、それは、ペギーさんの生み出す映像に、日本人が桜に持つ美意識と通じるものがあったからだと思います。
ペギーさんは日本の着物や帯などの色彩や質感にとても惹かれていらっしゃるので、日本人にも共感しやすい映像表現なのかなあと常々思っておりました。
陰影、輝き、繊細さ、色の重なりとグラデーション・・・オイルの中でゆったりと動く、多彩な変化にいつまでも見とれてしまう万華鏡です。
覗くそのときの明るさや聞こえてくるもの、覗く人の心のあり様でも見え方が違ってくるのが、不思議でもあり、万華鏡の奥の深さでもあると感じます。
フラワーシリーズは、それぞれの花のガラスのミニチュア造形がオブジェクトに混じっているのが特徴です。すべてガラスオブジェクトはペギーさんの手によるもので、その独特の美しいガラス細工が、それぞれの花をイメージして組み合わされます。
筒のガラスの花は、スティーブさんが、創ります。花びらや葉をひとつひとつガラスを重ねて焼きつけ、さらに半筒形にするためにまた焼きます。
この作品は一度焼く過程で割れたため、新たに作り直したと聞きました。 それだけに作品を手に取ったときに、作家さんの努力と経験ときれいな万華鏡を創りたいという気持ちが込められていることを感じ、ますます愛着が湧くのです。
1本でも存在感のあるこのシリーズですが、何点か並べてみたところです。
今度はどんな花で登場してくるのでしょうか? 楽しみでたまりません。