
このオブジェクトセルを見ただけで、ミラーの筒を通してどんな映像が展開するのだろうとわくわくしませんか?
ペギー・キテルソンさんのオブジェクトセルはいつも本当に美しく、オイルの中で流れるような色模様の変化にうっとりします。アメリカでカレイドスコープルネッサンスの立役者であり、万華鏡のファーストレディと呼ばれたコージー・ベーカーさんも注目して、2002年、万華鏡本に彼女の個性的なオブジェクトをテーマの一つとして取り上げました。手作りのガラスオブジェクトは、バーナーワークによって伸ばしたり、ねじったり、色を重ねたりして一つ一つ作られます。それが作家さんごとに違っていて、万華鏡の個性になります。このセルのガラスオブジェクトはたくさんの花の姿をしています。ひとつひとつがペギーさんによるガラスの造形作品になっています。
中心の7ポイントの模様を映し出す2ミラーシステムですが、ミラーの第3面にダイクロイックガラスを使っていて、ガラスオブジェクトの色を映しこみながら、中心模様の周囲を彩ります。(注:ダイクロイックガラスとは、ガラスの表面に金属を蒸着させて、独特の反射や輝きのあるガラスですが、見る方向によって色が違って見える特徴があります。後でご紹介するこの万華鏡の本体にも、使われています。)
一つ一つの花がミラーシステムの枠で切り取られ、分割されたまま、反射により別の模様になっていきます。変化は持続的で、覗いている目の前でどんどん変化していきます。オイルの濃度によって、動くスピードも違ってきますので、その動き方も作家さんの個性の一つです。
このオブジェクトセルの魅力は花の造形だけでなく、ガラスの種類にもあります。輝きのあるガラスのオブジェクトによって、映像に深みや趣きが添えられていると思います。
もちろん万華鏡では、ランダムなかけらが思いがけず美しい映像になることも、混沌が秩序に変わることも私たちは知っています。そのうえで、作家さんの想いをオブジェクトひとつひとつに込めるというチャレンジも素晴らしいなあと思うのです。
このセルがついているのが、下の写真の万華鏡です。 着物が広げて飾られているようなデザインで、木枠の中で傾けて上部の覗き口から覗きます。
2017年京都で開催された万華鏡世界大会でも披露された作品と同じテーマですが、着物の模様も、オブジェクトセルの中身も一点ずつ違っています。久保田一竹さんの辻が花着物の連作「光響」に魅せられたペギーさんが大切に作り続けているシリーズなのです。
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