「かつての日常は、、、」という言葉も
リアリティが無くなりつつある、今日この頃であります
新たな日常に向け、進みたいものです
とはいえ、今しばらくは慎重に
「寝てて転んだ試しなし」
さて、厚さ約6cmの本を図書館から借りました
150人の聞き手が、150人を選びインタビュー
1200ページを超える本であります
1990年頃、営業について
「全体と平均は真実ではない」的な論法で話をしていました
パソコンの普及により
すべてを「見たまま、聞いたまま」記録し、必要な時は検索する
という手段を目指していました
全体、平均、要約
これに疑問を持つことは大切、と愚考しております
今回のお題は、人それぞれ、人の中身もそれぞれ
参考図書)
◆ ◆ ◆ ◆
ある人がそこに居ることには意味があり必然性がある
ひとつの電車の車両
ひとつのシートに隣り合うということには何の意味もない
しかし
その一人ひとりは、どこから来てどこへ行くのか
すべてに理由があり、動機があり、そして目的がある
<東京の生活史>
◆ ◆ ◆ ◆
「企業のDNA」
「自分の中のDNAに深く刻まれている」
という言い方は、ひどい誤用・乱用である
普通に「企業の理念」
とか
「自分の中の記憶に刻まれている」と言えばすむ
ここにDNAを用いるのはおかしい
DNAには、企業の理念も、個人の原体験も
そんなものは全く書かれていない
DNAに書かれているのは
それぞれの種に固有のタンバク質のアミノ酸配列である
地図でもないし、プログラムでもない
DNAを過大評価してはいけない
せいぜい材料表、もしくはカタログがいいところである
細胞の内部で使う部品(タンバク質)のリストに過ぎない
精子と卵子が合体してできた受精卵は
細胞分裂を開始し2.4.8.16.32と増殖していく
その都度、DNAもコピーされて受け渡されていく
だから
すべての細胞は同じDNAをもつ
不思議な点は
同じDNAをもつ細胞が身体の中で
個性をもって役割分担をしていくということ
<迷走生活の方法「DNA禁止令」2018.5.24>
◆ ◆ ◆ ◆
「原点」とは何か
それは私たちがまだ若かったあるとき
自然の精妙さや美しさ、あるいは地の広がりや奥行きを発見し
自分が確かに世界とつながっていることを実感した
そのときの陶酔に似た感覚のことだ
生きていくための支点を見つけた瞬間といってもよい
<迷走生活の方法「原点」2019.11.21>
◆ ◆ ◆ ◆
どうなっているのか
細胞は、512(9回分裂)か1024(10回分裂)
くらいまで増えると
初期胚と呼ばれる段階に達し
それぞれの細胞に僅かな差が生じる
それは細胞が位置する場所による
外側か、内側かで酸素や栄養素の濃度が異なる
この差がそれぞれの細胞に微妙な変化をもたらす
細胞表面には接着分子群と呼ばれる特殊なタンバク質がある
これにより細胞と細胞は前後左右の細胞と交信する
初期胚の細胞は
自分が置かれている場所の環境に応じ異なる
順列・組み合わせの接着分子を細胞の外側に出す
つまり
同じカタログの中から
細胞によって異なる部品を選んで使うようになる
これが細胞の個性化=細胞分化の始まり
互いの個性を知り、相補的に分化していく
君が皮膚の細胞になるなら
僕はその下を支える組織の細胞になろう
あなたが神経をつくるなら
私は血管をつくるわ、という風に
それに応じてに
書かれているタンバク質のカタログを参照して
必要な部品を作り出す
筋肉の細胞なら筋繊維タンバク質のアクチンとミオシン
皮膚の細胞なら角質をつくるケラチン
膵臓の細胞のうち内分泌細胞ならインシュリン
という具合に特異的なタンバク質のアミノ酸配列を読み出す
DNAはここまで
DNAの役割は、トンビがタカを産まないように
トンビの羽の色や姿かたちを決めること
つまり
トンビ固有のタンバク質の構造を細胞ごとに指定しているだけ
トンビの子どもはトンビになる
しかしそのトンビがどんなトンビになるか
いいかえれば
私たちがどんな人間になるかについて
ほとんどはDNAの中ではなくDNAの外にあることによって決まる
つまり
習俗、教育、本、文化、伝統や映画体験や経験ということである
DNAが姿かたちを決めた後は
環境の影響の方が圧倒的に大きい
<迷走生活の方法「DNA禁止令」2018.5.24>
◆ ◆ ◆ ◆
この瞬間のこの場所に居合わせるということの
無意味な偶然と、固有の必然、確率と秩序
本書もまた、このようにして完成した
たまたま集まった聞き手がたまたまひとりの知り合いに声をかけ
その生活史を聞く
それを持ち寄って、 一冊の本に
ただの偶然で集められた、それぞれに必然的な語り
この本の成り立ち自体が、東京の成り立ちを再現している
それは
「代表」でもなければ「縮図」でもない
それは
人びとの交わりと集まりを縮小コピーした模型ではない
本書は偶然と必然によって集められた語りが並んでいる
そしてその偶然と必然によって、人びとが隣り合っている
ということそのものが「東京」を再現している
たった150人の
わずか一万字の語りでこれだけの分厚さになる
東京都の昼間人口はおよそ1500万人
全員分の生活史を書こうとすると
ひとり一万字でも、本書が10万冊必要になる
都市の、ひとりの生活史、この膨大さ
<東京の生活史>
◆ ◆ ◆ ◆
私たちは
つまりハカセくらいの壮年になった我々は
※ハカセ=福岡氏 私と同じ1959年生まれであります
今こそ自分の「原点」に立ち戻り
そのみずみずしい感触を思い出すべき
それは感傷や懐古のためではない
これからをもう一度生き直すためだ
人生は長い
令和の人生百年時代
そのためにも自分の出発点を今一度確かめた方がよい
私は何を美しいと感じ、何を求めて生きて来たのかを
葛飾北斎は、代表作「富嶽三十六景」を70代でなした
ピエト・モンドリアンは、「勝利のブギウギ」を描いたのは70歳
オズワルド・エイブリーがDNAの秘密を発見したのは60代後半
彼らは自分の原点を忘れなかった
むろん
誰もが北斎やモンドリアンになれるわけではないけれど
私たちは皆、もう一花、咲かせることができるはずなのだ
<迷走生活の方法「原点」2019.11.21>
◆ ◆ ◆ ◆
ということでした
もうひと花、どんな花
人それぞれですね
皆様におかれましても
心の栄養補給は怠らない様ご自愛下さい
ではまた