橋長戯言

Bluegrass Music lover, sometimes fly-fishing addict.
橋長です。

EHAGAKI #374≪7つのポテチ≫

2019年07月25日 | EHAGAKI

暑中お見舞い申し上げます

各地ともそろそろ、梅雨明けでしょうか
また暑い夏が始まりそうです
ご自愛下さい

さて
暑い時期、食べ物にもいろいろ注意が必要であります
今回のお題は「七袋のポテトチップス」であります

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 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆

参考図書)
湯沢規子著「7袋のポテトチップス」
~食べるを語る、胃袋の戦後史~ 

◆著者の息子さんの小学校時代

自宅に7人の少年が集まり、それぞれ1袋のポテトチップスを持ってきた
7袋のポテトチップスが集まったことにまず驚いた

友達の家に遊びに行くときは一人一つのお菓子を持っていく
という暗黙のルールがある、とのこと

さらに驚いたことに、彼らは誰かと分けることなく
自分の袋からそれぞれのポテトチップスを食べ続けた

著者は、まだ小さなその背中を見つめながら、考えこんだ
そして次の機会、著者は彼らの前でクッキーを焼いてみせた

大成功、子供たちは争ってクッキーを食べ始めた

しかし、一人の少年がクッキーを食べない
「どうしたの」と尋ねると
「人の家でつくってもらった食べものを食べてはいけない」
と言われている、と
彼の表情は、確固たる決意をもって答えているが
少し寂しそうでもあった

「秘密にして食べてみれば」と声をかけたが、
彼は「それはできない」と首をふった

◆「他人がつくったものは危険だから」という考え方

手づくりのクッキーはみんなが喜ぶはず
と思った著者にとって思いもしない発想であった

◆最近は人の手で握ったおにぎりが食べられない

学生たちへのアンケート
人の手で握ったおにぎりと
コンビニで買うおにぎりとどちらが好きか?

「人の手で握ったおにぎりが好き」53%(29/55人)
「コンビニで買うおにぎりが好き」42%(23/55人)

「温かいものであれば手で握ったおにぎり、
冷たいものであればコンビニ」 という回答もあった

コンビニのおにぎりを好む学生たちは
「人の手で作ったおにぎりを食べる機会がそもそもない」
「自分と自分の親がにぎった以外のおにぎりに抵抗がある」
「清潔な感じがする」
と答えている

◆高度消費社会の胃袋
 ~食べものをどこで食べるか

「胃袋」で食べる
「舌」で食べる
「目」で食べる
「頭」で食べる

このうち、「目」で食べるまでは身体感覚を伴う食事
「頭」で食べるようになってからは
身体感覚を手放して、言葉と記号を食べる行為へと偏重していった

感覚が言葉や知識や情報に絡めとられ
食べるという身体感覚と共在感覚を忘却していく時代が到来

食べることの「多元的意味」は失われ
食べることの意味は一元化、 単純化していく

食べものは、 ひとつの物質として
カロリー、ビタミン、蛋白質、炭水化物、コラーゲン、アミノ酸
などという言葉や知識で理解され、認識される

あるいは
他人に「いいね」と言われるためのアイコン
記号と意味づけられることも多い
誰もが写真やコメントを自由に発信できる情報化社会がそれを後押し

「胃袋」で食べる前に
「心」で食べる(神様と食べる)所作があったことなど
想像すらできない世の中になったのか

戦前戦後の食物語と比べると、隔世の感

◆昭和が終わり、平成が幕を開ける頃
暉峻淑子著「豊かさとは何か」から
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効率を競う社会の制度は、個人の行動と、
連鎖的に反応しあっているから、
やがては生活も教育も福祉も、
経済価値を求める効率社会の歯車に巻き込まれるようになる。

競争は人を利己的にし、一方が利己的になれば、
他の者も自分を守るために利己的にならざるを得ないから、
万人は万人の敵となり、自分を守る力はカネだけになる。

そんな社会では、人の能力は、 経済価値をふやすか否か、
で判断され、同じように社会のために働いている人であっても、
経済価値に貢献しない人は認められることが少ない。
暉峻淑子著「豊かさとは何か」1989年
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人には何が残っていくのだろうか?
言葉が溢れ、人工知能が登場する時代

生きている実感と本当の豊かさは
どうしたら手に入れることができるのか?

◆ごはん食べた?

中国から来た留学生に
「日本ではあいさつに、ごはん食べた?とは言わないんですね」
と聞かれる

中国では「吃飯了吗(ごはん食べた?)」が
「こんにちは」のあいさつになる

「さようなら」は
「改天来我家吃飯ー(今度、うちにごはんを食べに来てね)」

中国だけでなく、アジアでは
「ごはん食べた?」、「なに食べた?」
があいさつになる国が少なくない

◆その後
彼らは中学生になり、 何かを食べ、時には一緒に料理をした
なかでもクッキーを食べなかった少年は
「おいしい」「すごい」「うまい」「さすが」という素直な言葉で
食べる喜びを著者に伝えるようになった

ある時「今までここで食べたなかで、何が一番おいしかった?」と聞いた

彼は「やっぱりワッフル。焼き立てっていうの、初めて食べたんだ」と答えた
少し大人になりかけの表情を消して見せた満面の笑顔が忘れられない

7袋のポテトチップスは、個に閉じた胃袋の象徴

著者は「他人」に対しては完全に閉じている彼らの胃袋が
いつか開くことを願って、クッキーを焼いた

 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆


ということでした

食べるコト
共に在る世界で、共に在ることを実感することでありたい
と愚考する次第です


ではまた


EHAGAKI #373≪Japanese Whisky≫

2019年07月01日 | EHAGAKI

ウイスキーが好きです

スコットランド、アイルランド、アメリカ、カナダそして日本が
「世界の5大ウイスキー」と言われています

蘊蓄(うんちく)好きの酒飲みにとっては
ちょっと気取って「ゆったり呑める酒」であります

かの村上春樹も「もし僕らのことばがウイスキーであったなら」
というアイラ島の紀行文で奥さんの写真とともに一冊書いております

私もシングルモルトウイスキーに関して
EHAGAKI #297≪尊い多様性≫に御託を並べております
2015年01月21日

さて、今回のお題は、普段呑むリーズナブルなウイスキーのお話しです

「日本ダメなところ」が日本のウイスキーにも見受けられます


 ◆ ◆ ◆ ◆
参考)
東洋経済 石阪友貴記者の記事


◆背景
ハイボールブーム → 国内のウイスキー需要が拡大
海外輸出も2017年は過去最高を記録

消費量はブーム前の2008年から2015年には1.8倍に拡大

この10年で、「山崎」や「竹鶴」といったジャパニーズウイスキーが
国際的な品評会で賞を受け高い評価を得ている

◆ウイスキーとは
・大麦を原料とするモルトウイスキー
・とうもろこしなどの穀類が原料のグレーンウイスキー
・モルト原酒とグレーン原酒をブレンドしたブレンデッドウイスキー
・単一蒸溜所のモルト原酒のみを使ったシングルモルトウイスキー
などがある

リーズナブルなウイスキーはブレンデッドウイスキーが主流
◇旨ければいいんです(は)

◆原酒不足への対応
製造手法の違いから、モルト原酒は大量生産できるグレーン原酒
に比べて原酒不足に陥りやすい

・サントリーは2013年3月から年代表記が入った一部の「山崎」を終了
・ニッカは2015年9月に年代表記入りの「余市」「宮城峡」の販売を終了

◆出荷数量を増やしているのはより安価な「角」や「ブラックニッカ」
(国内市場のほぼ半分を占める)

こうしたウイスキーは、モルト原酒とグレーン原酒をブレンドして作る
ブレンデッドウイスキー

サントリーは
「早期に高級品の計画出荷を行い、全体で供給バランスを
取っているため増産が可能」(会社側)とする
熟成期間の短いモルト原酒やグレーン原酒が使用できるからだが
「その比率は公表していない」(同社)

 ◆ ◆ ◆ ◆

アメリカでは

◆日本では見たことがないジャパニーズウイスキー
「Rice Whisky」(コメウイスキー)がある

「KIKORI」(キコリ)という銘柄
ウイスキー専門誌『Whisky ADVOCATE』では
「バターやクッキーのような香り。
味わいは洋梨やドライジンジャーのよう」
と評され、米国の通販サイトでは5000円前後で販売されている

キコリは焼酎メーカーの常楽酒造が米国の販売元企業から
委託を受けて原酒を製造している

ところが同社は焼酎とリキュールの製造免許しか持っていない
つまり日本国内ではウイスキーの製造ができない

ウイスキーと焼酎は蒸溜酒としての製法は似ている
麦焼酎の場合、原料となる麦を発酵させ蒸留
場合によっては樽で熟成させるといった製法は
ほぼウイスキーと同じ

違いは、ウイスキーの場合は原料となる穀類の糖化に
麦芽の酵素を使うのに対し、焼酎の場合は麹を使うこと
◇旨ければいいんです(は)

◆米国ではバーボンウイスキーについては、
法律で原料や熟成年数が厳しく定められているが

◆広義のウイスキーは

1.穀物を原料とすること
2.蒸溜してあること
3.(熟成年数を問わず)樽で熟成させること、のみ

そのため
・日本国内で製造された米焼酎や麦焼酎はすでに
1と2を満たしている
・米国に輸出して樽で熟成させれば
「ジャパニーズウイスキー」として販売ができる
というカラクリ

常楽酒造の担当者
キコリの原酒を製造していることは認めながらも
「販売元の米国企業との契約で何も話せない」

国税庁課税部酒税課
「米国で販売されている以上、規制を行うのは米国の法律。
日本国内の酒税法上の問題はない」

◆焼酎さえジャパニーズウイスキーにしてしまうアメリカ
◇旨ければ呑みたい(は)

 ◆ ◆ ◆ ◆


日本のウイスキー業界は

◆輸入原酒使っても、国産ウイスキー?

食品表示基準では、最も多く使っている原料を最初に
記載しなければならないが、酒類は適用外

ウイスキー評論家の土屋守氏
「安価なウイスキーは大半がグレーンでもおかしくない」

◇旨ければいいんです(は)
 ボーボンはグレーンのみです

◆ブームの陰で、ジャパニーズウイスキーの表記をめぐる問題アリ

みりんなどの調味料を手掛けるサンフーズは
「御勅使(みだい)」や「富士山」を製造

担当者
「富士山」はジャパニーズウイスキーを名乗るが
「自社で蒸留した原酒に海外から輸入した原酒を加えて
ブレンドしている」

◆ジャパニーズウイスキーの明確な定義はない

◆日本の酒税法では
輸入した原酒を国内でブレンドしたりボトル詰めしたりすれば
「国産」と表示できる

業界で著名な「イチローズモルト」を製造・販売する
ベンチャーウイスキー(埼玉県)は
一部の銘柄で自社で蒸留したものに5大ウイスキー産地の
原酒を加えている

肥土(あくと)伊知郎社長
「以前は一部で『秩父ブレンデッド』としていたが、
秩父蒸溜所の原酒のみを使っていると誤解されるおそれがあり、
現在は『ワールドブレンデッド』という表記に変えた」

本坊酒造傘下のマルス信州蒸溜所(長野県)
一部銘柄で「ブレンデッドジャパニーズウイスキー」と表記していたが、
現在は「ブレンデッドウイスキー」に改めた

同蒸溜所の竹平考輝ブレンダー
「輸入原酒も使ってブレンドしてあるものについては、
消費者が混同しないようにした」

肥土氏
後発・新参メーカーにとっては
「品質を向上させ、販売量を確保するため」に
海外産の原酒を使っているのが実態

◆酒税法では9割は混ぜ物で大丈夫?
同法では、サトウキビの搾りかすなどを原料にした
醸造(ブレンド用)アルコールやウオツカなどの
スピリッツの混和が9割まで認められている

◆イオンのプライベートブランド・トップバリュの
「香薫(こうくん)」や「凜」は
原材料欄にスピリッツやブレンド用アルコールと記載している

こうした表記は日本洋酒酒造組合の自主基準で記載
罰則はなく、単なる努力義務

どれだけ守っている企業があるのかは不透明

土屋氏
「ブレンド用アルコールを使ってもウイスキーを
名乗れるというのはほかの世界5大産地ではありえない」

肥土氏
「この定義のおかげで戦後の物不足の時代にも
ウイスキーが飲めたという歴史的な背景はあるが、
そろそろ見直すべき」

◇旨ければいいんですが(は)

◆日本酒やワインは、
先んじて原産地表記の規制を進めてきた
ブランドや品質を保証し、輸出を促進したりするためである


 ◆ ◆ ◆ ◆

ということでした

ウイスキーとは多様性の酒です

正直に中身を公表する
輸入が悪い訳ではない

隠すという了見が野暮である

と、愚考する次第です

◇旨ければいいんです(は)


ではまた