Reflections

時のかけらたち

男と女 人生最良の日々 ・・・ Les plus belles annees d'une vie

2024-12-30 23:53:02 | movie

12月30日

今月分として借りていた映画のDVDをなかなか見れないので昨晩深夜やっと見てみました。
たまって1ヶ月に8本も見れるのに今月中に返えそうと思ったのですが、それは無理みたいでした。
私も学生時代に見たルルーシュのセンセーショナルな映画「男と女」のその後の話です

不思議な感覚の映画でした。
2019年に制作された映画だから、撮影時すでに80代の後半になったジャン・ルイ・トランティニアンとアヌーク・エーメが
1966年に制作された「男と女」の52年後の続編に登場する。役というより二人の積み重ねた日々が表れるような映画でした。
アヌーク・エーメは今年の6月に92歳で、ジャン・ルイ・トランティニアンも2年前に91歳ですでになくなっています。
この年で映画に出て演じているというより実に自然な演技でした。ジャン・ルイ・トランティニアンはチャーミングで、アヌーク
エーメはいつまでも美しく、そのしぐさも素敵でした。二人とも87歳くらいだったから皺で顔もクシャクシャでしたが、輝いていました。
トランティニアンの認知症のような表情や過去から記憶を呼び覚ますような瞬間があったり、その演技も素晴らしく夢と現実を行き来
している老人がナチュラルに演じられていました。

ヴィクトル・ユーゴーの言葉「最良の日々はこの先の人生に訪れる」、すてきな言葉ですね。
記憶を半分失ってしまった男とまだ仕事をしている女の再会から、まるで初めて会ったような新鮮な感覚が伝わってきてそれは
まるで初恋のようにさわやかでした。

愛は私達より強い。
共に生きられなかったが死ぬときは一緒。

この映画の撮影の頃、ジャン・ルイ・トランティニアンの目はほとんで見えてなかったであろうとルルーシュ監督は
インタヴューで語っていました。そしてこの主演の二人は後を追うように数年後に亡くなりました。


何かがとけて行くようなそんなやさしい空気に包まれた映画でした。

 

Bunkamuraル・シネマ1/31(金)よりロードショー『男と女 人生最良の日々』予告編

2019年製作/90分/G/フランス
原題または英題:Les plus belles annees d'une vie
配給:ツイン
劇場公開日:2020年1月31日

監督 クロード・ルルーシュ
音楽 フランシス・レイ、カロジェロ

キャスト
アヌーク・エーメ、ジャン=ルイ・トランティニャン、スアド・アミドゥ、アントワーヌ・シレ、モニカ・ベルッチ

 

「男と女」から53年、映画と愛に生きたクロード・ルルーシュの人生観

 

 

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難しかった「瞳をとじて」と軽やかな「お早う」・・・ difficult "Close your Eyes" and light "Good Morning"

2024-12-14 23:57:01 | movie

素朴な疑問。今頃なんですが、国会中継を見て思うこと。国会の審議って政権担当者に対する
質疑だけだったのですね。意見を出し合って決めて行くのが民主主義だと思ったけど。今は危うくなってきているけど
自民党独裁政治だった。そして国会の外で他の党との合意を得たりして・・?! 他の民主国家でもこんなものなのだろうか?
目の覚めるような議論はないのだろうか? 
大きな問題の時、国民はデモなどの行動で意思を表すことしかできない。


***********************************************

成瀬監督の「浮雲の次」に観た映画。

若いころ大好きだったエリセ監督が何十年ぶりに映画を撮っていたことを知り、11月に小津の映画と一緒に借りて見ました。
小津監督の「お早う」は中井貴一が父親佐田啓二が出た小津の作品で一番好きなのはこの映画と語っていて、最近、中井貴一
っていい役者だなあと思っていました。その父親の映画を見たくなり・・・
映画の内容は全然知らなくて借りたのですが、絶妙な組み合わせでした。

エリセもキアロスタミ監督も小津のファンであり、小津そのものより小津崇拝者の映画がいいなーと思っていた私です。

 

瞳をとじて

『瞳をとじて』
監督・脚本:ビクトル・エリセ
撮影 バレンティン・アルバレス
美術 クルル・ガラバル
出演:マノロ・ソロ、ホセ・コロナド、アナ・トレント
原題:Cerrar los ojos/英題:Close your Eyes
2023年製作/169分/スペイン

 

 

『瞳をとじて』本予告_2月9日(金)全国順次公開

 

ビクトル・エリセは若い頃の私の映画の全盛期、ヴィスコンティの後、イタリアのオルミ監督、ロシアのミハルコフ、タルコフスキー
ギリシアのアンドロケプス等夢中になって見た映画の中でも印象の強く残った「ミツバチのささやき」を作り「エル・スール」
まで見たけれどそれ以降のマルメロの・・は見ていなかった。今年エリセ監督が31年ぶりに長編映画を撮ったと知り、TSUTAYA DISCUS
で借りて見ました(新聞をやめてしまったのでこういう情報が入りません)。月でのサブスクなので月末が来てすぐ返さなくては
いけなかったので、何回も見ることができなかったけれどこの映画は1回ではわかりにくい映画だったかと思います。

始まってからも謎めいて、これはいったい何なのかと思っていたら映画の中の映画だった。
ミツバチのささやきのあの少女アナが50年ぶりにエリセ監督の映画に登場して、映画の中にそれぞれの歴史が入り組んでいくように
複雑な気持ちになって行く映画でした。時代の流れがしっかり組み込まれていて・・ 映画自体の歴史も・・・
この間、それぞれの苦しみを背負って生きてきた人々・・ それが最後にマックスがこだわる映画フィルムによる映画館での
スクリーンでの映像にフリオの心の奥に光がともったと感じたのは私だけではないと思います。記憶の奥底から何かひらめいた感じの
フリオ役の演技が素晴らしかった。

老いをどう生きるか・・恐れも希望も抱かぬこと。
みつからなかった本当の居場所を持つこと。
失ったものを取り戻すには記憶はとても大切なもの。
医者にはできない方法で失ったものを取り戻す手助けができる。心を揺り動かし、魂を呼び覚ます ・・・映像?


参考)

ビクトル・エリセの映画愛がつまった驚くべき傑作 ”瞳をとじて"が語りかけるもの
名匠エリセ 31年ぶりの新作に映画を再発見する幸せ 『瞳をとじて』
ビクトル・エリセの31年ぶりの長編映画『瞳をとじて』に仕掛けられたものとは
『瞳をとじて』 スペインの巨匠ビクトル・エリセが紡ぐ31年ぶりの長編!記憶をめぐるヒューマン・ミステリー
『瞳をとじて』 ビクトル・エリセ 
スペインの巨匠ビクトル・エリセ監督が31年ぶりの新作『瞳をとじて』に注ぐ魂の言葉とは

 

 

お早う

『お早よう』松竹製作ニュース

 

ヴェンダース、「お早よう」を語る | Wenders talks about "Good Morning"

 

お早う

上映時間:94分 / 製作:1959年(日本) / 配給:松竹=松竹大船

スタッフ

監督:小津安二郎

キャスト

福井平一郎:佐田啓二
有田節子:久我美子
林敬太郎:笠智衆
民子:三宅邦子
原口きく江:杉村春子
福井加代子:沢村貞子
浦辺粂子

 




スタッフ

監督:小津安二郎

キャスト

福井平一郎:佐田啓二
有田節子:久我美子
林敬太郎:笠智衆
民子:三宅邦子
原口きく江:杉村春子
福井加代子:沢村貞子
浦辺粂子

実は小津の作品、昔『東京物語』と他に一つくらいしか、しかもTVで流されていたのを見たことしかない。
今回の作品は小津の作品では珍しい喜劇で家族の問題にも深く入って行かない軽やかな作品であるということでした。
たわいのない日常・・ 戦後少したって平和が戻ってきたそんな時代の中の一コマ。映画のストーリーよりも何も
昭和中ごろの日本が敗戦から復興し始めてきたころの世の中の暮らし方がとても面白かった。まさしく私の小学校の
時代とぴったり合ってきます。テレビの導入・・ ある家にみんなで見に行っていたり‥ 洗濯機や冷蔵庫の家電も
普及し始めたころ・・映画では出ていたかどうか覚えていないけれど電話もまだなかなかつく時代ではなく、今とは
全く別の世界。日本の直線的な家もとても美しいと思いました。今は日本的な家を探そうと思っても、世の中、ほとんど
暮らし方が違って来ている。

思わず笑ってしまう、なかなか軽いいい映画でした。
でもその中に、あの時代でさえ、無駄も必要とか世の中便利になりすぎることの危惧を感じているのには驚きます。
そして大切なことは伝え合うこと・・

 

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浮雲 ・・・ Floating Clouds

2024-11-26 23:49:21 | movie


なんともやるせない映画でした。全編を通してけだるい南国の湿った空気が流れているようなそんな感じ。
林芙美子、成瀬巳喜男、高峰秀子、森雅之という組み合わせがなければ存在しなかった映画。

録画してあった映画をTVも見たい番組もないし、かけておこうかと思って再生したら、とても魅力的な映画で
どんどんひきつけられてしまいました。とにかく高峰秀子のインパクトがすごい。男と女の微妙なずれと、それでも離れられない
浮雲に例えられるような関係。自立できる女性なのに男性のもとに走ってしまう・・ときに男と女の戦いのようでもあり、
人生に翻弄され、甘いメロドラマではない、日本の戦後に流されて生き抜こうとする男女の物語。魂のないどうにもならない人間に
なってしまったとつぶやく男。行く当てのない二人。



いい加減な、優柔不断な男だが、その優柔不断さはやさしさから来ていて、自分を求める人を拒めない。2回見ると男性の
やさしさが伝わってきて、悲しい美しい結末へと向かっていきます。流れ着いた屋久島で、ランプの光の中で死に化粧をする
男の悲しさが伝わってきて2回目に見た時はこのどうしようもない冷徹に見える男の良さがわかったような気がしました。

暗い映画だけど、最後に救いがありました。最後の涙はジェルソミーナを思って泣くザンパノの涙を思い出させました。

  

男と女の永遠のテーマだけど、林芙美子の思いが詰まっている作品なのだと思いました。退職後パートで務めていたこども園の
近くに林芙美子記念館があり、行ったことがありましたが、彼女はかなりモダンな女性だったのですね。油絵も描くし、自立して
いたしっかりした女性だったと思われます。

母が森雅之のファンで父がからかっていたことを思い出したりもして。

成瀬監督の映画を見たのは「女が階段を上がる時」以来ですが、その時のキャストも高峰秀子と森雅之でしたが、この映画の方が
何倍も良かったです。溝口、小津と共に日本を代表する映画監督の代表作でした。 今小津とヴィクトル・エリセの映画も
借りているのですが、なかなか見る時間がなくて・・ 

高峰秀子の存在感がすごくて迫力がありました。こんな女優さん日本には他にはいないでしょう・・

 

浮雲
1955年製作/124分/日本
配給:東宝
劇場公開日:1955年1月15日

キャスト 高峰秀子  幸田ゆき子
     森 雅之  富岡兼吾
     中北千枝子 妻邦子
     木村貞子  母
     山形勲   伊庭杉夫
     岡田茉莉子 おせい
     加東大介  向井清吉

スタッフ 監督    成瀬巳喜男 
     原作    林芙美子
     製作    藤本真澄
     撮影    玉井正夫
     音楽    齋藤一郎
     美術    中古智
     照明    石井長四郎
     録音    下永尚
     監督助手  岡本喜八
     脚色    水木洋子

 

成瀬巳喜男監督『浮雲』

映画のロケ地を調べた動画が面白くて。なんだか私が生まれたころの東京が浮かんできました。木のこんな家が多かったと
なんとも小さなころの記憶が少しよみがえってきます。成瀬監督はあまりロケは好きでなかったとのことですが、戦後間もない
東京の姿が現れています。

 

追記)

森雅之は有島武郎の子供と知ってびっくり。芥川龍之介の子供たちも俳優や音楽家だったけれど・・
父と同じ京大を中退していたことも今知りました。彼自身の生涯もドラマティックでした。

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難解だったDeath Watch ・・・ Romy Schneider

2024-11-01 23:59:55 | movie

11月1日

ブルックナーのような音楽がずっと流れるヴィスコンティを思い出させる暗い映画でした。SFでちょっと内容や人間関係を
把握するのが難しくわかりずらいところもある映画でした。見に行きたくなったのはロミー・シュナイダーの晩年に近い
映画であったことと、監督が「田舎の日曜日」のタヴェルニエだったからです。



やっている期間と回数が少なかったのであまり見るチャンスはないと思っていたのですが、
今日午前中に配達予定の宅急便が早く届いたので、家を飛び出して渋谷まで見に行きました。

SFと言えばタルコフスキーの「惑星ソラリス」やカズオ・イシグロ原作の「私をはなさないで」くらいしか
見たことはないのですが・・・

この44年前に作られた映画はSFと言っても問題はそこではなく、現代の今まさに問題になっているマスメディアの
ことだと思いました。同じ意見のコメントをみつけたのでピックアップしました。

・「死ぬこと」をめぐる物語であり、人間の尊厳がテーマになる。
・ 感動と不安が交錯するこのカルト的名作は、のぞき見好きの衰退社会をぞっとするほど予見的なビジョンである。
・ メディアが「ビッグスクープ」を追求する上でどれほど悪質であるかについて非常に予言的に思える、美しくて
  悲劇的なSF小説。

・ メディア報道に関連する倫理的および道徳的な問題を扱っています。
・ マスメディアに対する痛烈な批判的メッセージを感じる。
  視聴率の獲得の為、報道の自由等を盾とし時に度を越した演出をも厭わない。
  近未来を描いたSFではあるが、いつの時代にも通じる普遍的な社会的問題を描いたものになっている。

 

『デス・ウォッチ』
 ※旧タイトル『SFデス・ブロードキャスト』 (1980)

原題  La mort en direct
     西ドイツ=イギリス=フランス
監督  ベルトラン・タヴェルニエ  
共演  ハーヴェイ・カイテル、ハリー・ディーン・スタントン、マックス・フォン・シドー
撮影  ピエール=ウィリアム・グレン
音楽  アントワーヌ・デュアメル

ベルトラン・タヴェルニエ監督の『デス・ウォッチ』は、人間ドラマとSFの教訓を織り交ぜた作品で、病死が極めて稀に
なった未来を舞台に展開する。キャサリン(ロミー・シュナイダー)が不治の病にかかっていることが判明すると、
彼女はメディアの強い関心の対象となり、ロディ(ハーヴェイ・カイテル)は、キャサリンに内緒でリアリティ番組
『デス・ウォッチ』のために彼女の最期の日々を録画するため、脳にカメラを埋め込む。

 

ロミー・シュナイダーの生きていることをいとおしむような演技が素晴らしく、この2年後自殺とも思われる睡眠薬の過剰摂取に
より子供の後を追うように亡くなったことを思い出させました。

ヴィスコンティの「ルードリッヒ」でエリザベートを演じていましたが、りりしくてすてきでした。
この映画でも死にゆく者のプライバシーと尊厳をかけて孤独に戦う役を演じるロミー・シュナイダーのその人生との重なる部分を
感じずにはいられませんでした。

映画では別れた元夫に死ぬ前に会いに行くところに救いがありました。マックス・フォン・シドーいいですね。
ロディも最後に自分のしていることに耐えられなくなり、失明してしまいます。良心が見えるシーンです。

 

監督のコメントも面白かったです。、

「クロード・ソーテはロミーをモーツァルトの音楽に喩え捧げている。私はむしろヴェルディやマーラーを思い起こす」
──『デス・ウォッチ』監督 ベルトラン・タヴェルニエ

「役柄を構築するイザベル・アジャーニみたいな女優とは正反対に、ロミーは役を生きていた。まっすぐな人だった。」
──『最も重要なものは愛』監督 アンジェイ・ズラウスキー


イザベル・アジャーニの映画は1年くらい前、「アデルの恋」と「カミーユ・クローデル」を何回も見ました。すごい演技力で
メリル・ストリープやケイト・ブランシェットと同じように注目の女優です。
ロミー・シュナイダーの映画は「離愁」「サンスーシの女」「ルードリッヒ」を見に行ったくらいですが、好きな女優さんでした。
亡くなったのは43歳だったのですね。ネットで見ていたら葬儀やお墓のことは最初の恋人だったアラン・ドロンが手配した
とのこと。しかしマスコミを避けて葬儀には参列しなかったとか。アラン・ドロンも最近他界して、こんな伝説的なことが
あったなんてまるでこの映画のようです。

 

原作についても

The Unsleeping Eye is a 1974 science fiction novel by British writer David G. Compton. It was published in the United Kingdom
as The Continuous Katherine Mortenhoe in 1974 and was filmed by Bertrand Tavernier in 1980 as Death Watch, starring
 Harvey KeitelRomy Schneider and Max von Sydow. Subsequent editions of the novel were published as Death Watch.

 

 

予告で「愛と哀しみのボレロ」をやっていたのですが、映画の冒頭に流れるWilla Catherの文がすごかった。
Catherは学生時代、授業でもやったし、全作品をみんなで読んで発表したこともあった、日本ではあまりポピュラーで
ない作家です。

"There are only two or three human stories and they go on repeating themselves as fiercely as if they had never happened before."
- Willa Cather (1873- 1947) O Pioneers!

人生には2つか3つの物語しかない
しかしそれは何度も繰り返される
その度ごとに初めてのような残酷さで

「愛と哀しみボレロ」はジョルジョ・ドンの舞台を見たあとで早稲田松竹に見に行ったことがありました。
再びやるようなのでまた見たくなりました。

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Magic in the Moonlight とRailway man

2024-09-19 12:59:17 | movie

スマホ写真の中から英国王のスピーチのコリン・ファースの写真と台詞をみつけて、2022年末に見ていたMagic in the moonlightと
Railway manのメモの続きを書くことにしました。

伊勢路の写真も整理して、続けての北村朋幹のコンサート、昨日観たthe Kabukiと言うくらい定番の勧進帳と、玉三郎の妹背山婦女庭訓
は追ってアップすることに。フランクルについても1回しかまだ載せていません。

昨日はちょうど満月



その前日が十五夜

家の窓からは見ることができませんでしたが、名古屋のコンサートに行く前に買っていたお月見饅頭。


自由が丘 蜂の家  ここの麩饅頭がとてもおいしかったのですが、季節柄もう終了でした。

 



名古屋駅名鉄デパートの入り口でやっと買うことができた栗羽二重


栗きんとんをくるんだ羽二重のお菓子。犬山の「もちたけ」製

今日はやっとボビンレースに集中。相変わらず、間違いをみつけては少し戻りながら進めています。
間が空くとこういうことが必ずあります。でも戻る距離が短くなったような・・・

やりながらときどき、「ある晴れた日」のレッスンテープを聴きながら・・・

一日集中して目も疲れて、夕方友人が貸してくれた「聖母マリアの夕べの祈り」を聴き、気持ちを
落ち着けてからカーブスへ筋トレに行きました。宗教音楽には癒されて、そして自分を高い所に引き上げて
くれるような感じがあります。

 

 

2年近く前にコリン・ファースの映画を2つ続けて見ました。この後にSinglemanも見たのですが、ほとんど印象に
残っていません。

マジック イン ムーンライト
MAGIC IN THE MOONLIGHT

監督:ウディ・アレン 出演者:コリン・ファース、エマ・ストーン、マーシャ・ゲイ・ハーデン

ウッディ・アレン監督が1920年代の南仏リゾート地を舞台に描くロマンティックコメディ。出演は「英国王のスピーチ」の
コリン・ファース、「アメイジング・スパイダーマン」のエマ・ストーン。英国人マジシャンのスタンリーはニヒリストで
毒舌家だが、天才的なマジックの腕前で人気を博していた。ある時、幼なじみのハワードから、ある大富豪が入れあげている
米国人占い師の真偽を見抜いてほしいと依頼される。魔法や超能力など存在しないと信じるスタンリーは、ペテンを見抜いて
やろうと自信満々で噂の占い師ソフィのもとへ乗り込む。しかし、彼女の透視能力を目の当たりにして価値観を揺さぶられ、
さらには容姿も性格も完璧な彼女にほれ込んでしまう。

2014年製作/98分/G/アメリカ・イギリス合作   
                                                  映画.comより 

 

解説 ケイト・ブランシェットにオスカーをもたらした前作『ブルージャスミン』も大ヒットを記録したウディ・アレン監督が
エマ・ストーン、コリン・ファースをキャストに迎えた最新作。1920年の南フランスを舞台に、死者と会話できる不思議な能力が
あるらしい謎の女と、彼女のトリックを暴こうとするマジシャンの男の駆け引きをコミカルに描く。
                                                 映画ナタリーより

 

 

もともとウディ・アレンは好きでも嫌いでもないのだけれど、たまたまコリン・ファースだったので見た映画でした。

タルコフスキーのサクリファイスの次にメモを取ったのは2022年の11月でした。

メモを取っていた台詞
・生きることに目覚めさせた上に、脳だけでなく心まで征服する気か?
・神を信じていなかったものが 神に祈る
・人生には幻想も必要  ニーチェ
・合理的だけでなく、理論、理性は無意味
・この世は神が創ったものだけど、マジックなしには回らない
・大切なのは同伴者

魂の存在を認めたウディ・アレンの映画で、エマ・ストーンの魅力も満載のコメディでした。

 

 

レイルウェイ 運命の旅路

監督:ジョナサン・テプリツキー
キャスト:コリン・ファース、ニコール・キッドマン、石田淡朗、真田広之

 

コリン・ファース、二コール・キッドマン、真田広之らの共演で、第2次世界大戦時、日本軍の捕虜となり、鉄道建設に狩り
出された英国兵士と日本人通訳らの実話を映画化したヒューマンドラマ。鉄道好きで平凡な人生を送るはずだった英国軍兵士の
エリックは、シンガポール陥落時に日本軍に捕らえられ、タイとビルマを結ぶ泰緬鉄道の建設現場で過酷な労働を強いられる。
それから約50年後、当時の記憶に苦しめられながらも、愛する妻と平穏な日々を送っていたエリックは、鉄道の建設現場にいた
日本人通訳の永瀬が、戦争体験を伝えるためいまもタイに暮らしていることを知る。永瀬の存在が心の奥の傷をよみがえらせ、
動揺するエリックだったが、意を決して永瀬に会うためタイへと向かう。原作は1995年「エスクワイア」誌ノンフィクション賞
を受賞したエリック・ローマクスの自叙伝「泰緬鉄道 癒される時を求めて」。

2013年製作/116分/G/オーストラリア・イギリス合作
原題または英題:The Railway Man

                                                  映画.comより

 

今エミー賞で話題の真田広之も出演の実体験に基づく映画。
戦争の個人責任はどこまで追及されるのか、今のロシア・ウクライナにも関連して考えさせられる映画でした。
裁判を通訳と偽り逃れた主人公の贖罪の日々と赦しが描かれた地味な映画でしたが、ニコール・キッドマンやコリン・ファース
と言った素晴らしいキャストの作品でした。

 
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『ルイス・ウェイン 生涯愛した妻とネコ』と NHK地方版番組  ・・・ movie of Louis Wain and TV program

2024-07-23 23:13:46 | movie

「天井桟敷の人々」と「夏をゆく人々」を3月に借りていて、2か月以上も手元に置いてやっと見て返してから
7月分として、「舟を編む」と 「ルイス・ウェイン生涯愛した妻とネコ」をやっと見て返したところ。やっぱり
リフォーム中は無理でした。
サブスクのTSUTAYA DISCASを活用できずもったいないことをしていて、いつやめようかと今は繰り越し分が
あるので考えているところです。



どの映画も深くて味わい深く心の中に入って行きました。ルイス・ウェインはA子さんに教えていただいた
映画で、素晴らしかったです。実話をもとにした映画で、カメラワークもとても美しかったです。
日本語のタイトルと英文タイトルはかなり趣が違い、最初は日本語のタイトルが柔らかくていいように思い
ましたが、映画を見るとElecricalの方がよりぴったりでした。タイトルを見た時どうしてElecricalなのと思いましたが
どちらかというとSpiritualというか死の世界、異次元の世界ともつながるパワーのような不思議なものです。

ウェインが擬人化された猫を描き始めたのは、相反するはずの「科学」と「幻想」がまだ奇妙に融合していた時代で
あった。この映画の原題は、「The Electrical Life of Luis Wain」である。原題にあるとおり、映画は近代的エネルギーが
ひとりの画家に及ぼした、創造の「光」と狂気の「影」を描く。  能勢陽子 TOKYO ART BEAT より


地球に住むのが困難な画家ウェインと彼を支えた妻とネコ,Peterの話です。

 

12/1公開『ルイス・ウェイン 生涯愛した妻とネコ』予告篇

 

「いい夫婦の日」特別映像|映画『ルイス・ウェイン 生涯愛した妻とネコ』12.1[Thu.]公開

 

『ルイス・ウェイン 生涯愛した妻とネコ』

©2021 STUDIOCANAL SAS - CHANNEL FOUR TELEVISION CORPORATION
出演:ベネディクト・カンバーバッチ、クレア・フォイ、アンドレア・ライズボロー、トビー・ジョーンズ
   オリヴィア・コールマン(ナレーション)
監督・脚本:ウィル・シャープ 
原案・脚本:サイモン・スティーブンソン
2021年 │ イギリス │ 英語 │ 111分 │  原題:The Electrical Life of Louis Wain 
配給:キノフィルムズ

 

映像も音楽もキャストも脚本もすべて素晴らしかったです。
心に響く言葉もたくさんありました。

樹はすごいわね。千年も生きている。300年かけて育ち、300年生き、300年かけて死ぬ。  エミリー

地球にいるのが難しいが、君のおかげでよくなった。                  ルイス
君が世界を美しくした。あたたかく、やさしい場所に。

私が美しくしたんじゃない。                             エミリー
世界は美しい。
あなたが教えてくれた。

つらいことばかりでもがき苦しんでいても、世界は美しさで満ちている。          エミリー
それを見て多くの人と分かち合って。

あなたはプリズム。人生の光線を屈折させる。                     エミリー

苦しい時ほど美しい絵を描いた。
愛する妻エミリーと愛猫ピーターの思い出が大気の不思議な電気を通す導体になると
彼はようやく気付いた。

ライダー氏の言葉
なぜエミリーは描き続けてほしいと願ったのでしょう。
人助けや見せるためと答えるウェイン氏に対して

それはあなたを独りにしないため。                          ライダー
あなたは絵を描くことで他者と繋がるんです。
ご自分の一部を与えるが、人々もあなたとつながる。

それにあなたが”電気”と表現するもの                         ライダー
エミリーが感じたものを私は”愛”とよびます。
それは今も存在しています。

ルイス・ウェインにとって、電気はパンを焼いたり、照明に使うためだけではない。
もっと大きくて奇抜で奇妙で人間の理解を超えたものである。エーテルの中のきらめきと
感じる謎めいた元素であり、人生の最も深く驚くべき秘密への鍵だった。

途中のプリズムのトンネルのような画像は天国につながっていく道かと思ったけど違うようでした。人間には最後
死ぬときに美しいトンネルを通って行くようにプログラムされているらしいという事を昔TVで聞いたことがありました。

私も彼の言う電気が少しだけわかるような気がします。いつだったか自然の中で丘の上で春の木々に囲まれてまるで
天国と通信しているように上から光が注がれている感じがしたことがありました。

僕の仮説では、電機が時間を進め、電気の力で過去を未来に変える。
だがその逆もできる。
過去の記憶は未来の想像でどちらも人生だ。
僕は未来でエミリーを思い出せる。

猫の社会的な地位をあげた人だが人間に対しては手厳しい言葉

人は堕落した種であり、未来はなく破壊だけが本能の動物だ。(今の世界を見ても全くその通り。いかに本能を
乗り越えるかです。)

 

ラストシーンが絵になっていてとても美しかったです。他にも雪のシーンもすばらしかったし、
エンドロールでたくさんのルイス・ウェインの絵が見れたこともこの映画を何倍も楽しく
していました。また、彼の絵にはディヴィッド・ホックニーを思わせるような鮮やかな色彩のものも
ありました。現代にも通じる感覚を持っていたのでしょう。iPadで絵を描くホックニーにつながるなんて。

若くて知らなかった監督ですが、こんないい映画があったのですね。
あらためて紹介してくれた方に感謝です。

19世紀末〜20世紀、イギリスで人気を博したイラストレーターの生涯

 

 

最近NHKプラスで東京では見ることができない地方の放送局で制作した熊野古道伊勢路の番組を見ることができて
大変助かりました。名古屋の友人から東京でも放送されていたら見たらと教えてもらったのですが、東京では放送
されず、地上波でダメなら見逃し配信でみれるかと思って検索したら、なんとありました。津放送局で制作され
三重、岐阜、名古屋エリアで見ることができるものでした。

前回天候が悪く行きたいところが歩けなかったので、参考になりました。世界遺産登録20年を記念した番組で昔の
柳生博が歩いた番組もアンコール放送でやっていました。東京ではバラエティ番組の再放送をやっていた土曜の午前
とかでした。

 

春香クリスティーンが伊勢路を歩きとおした番組で、2回にわたり放送されました。



クリスティーンはまだ30代なのに下りが恐くて、同じような人がいて安心しました。友人にも私の恐怖心を
わかってもらえたようです。

無になる
こころの旅
自分に向き合う

そんなキーワードが出てくる魅力が尽きない熊野古道。

つらい気持ちが歩くことによってそぎ落とされていく。

伊勢路は海も見えるし、またハマりそうな道です。次回の古道歩きは9月でまだ暑そうですが楽しみです。

 

 

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Io Capitano  ・・・ 僕はキャプテン

2024-05-09 17:45:09 | movie

5月6日

 

引越準備が順調に進んだので目途がついた前日の午後、イタリア映画祭最終日に有楽町の朝日ホールまで
行きました。



行く途中に見た看板のコピーが気に入り、撮りましたが、これから見る映画のなんと驚きに満ちた
重い映画だったのでしょう・・・

「まだ明日がある」「人生の最初の日」「僕はキャプテン」が見たかった映画でしたが、最終日に残った「まだ明日がある」
と「僕はキャプテン」のうち、「ほんとうのピノキオ」で見たことのあるマッティオ・ガッローネ監督の「僕はキャプテン」を
見ることにして前日ネットで予約していました。



 

D.僕はキャプテン

[2023/121分]原題:Io Capitano
監督:マッテオ・ガッローネ Matteo Garrone
出演:セイドゥ・サール、 ムスタファ・ファル
巨匠マッテオ・ガッローネ(『ゴモラ』)が放つ渾身の一作は、セネガルの青年2人がアフリカを縦断し、ヨーロッパを
目指す壮大な旅の物語。セイドゥとムッサは、豊かな生活を求めて親族に知られることなく、ダカールを離れる。
しかし、彼らを待ち受けていたのは想像を超える数々の困難だった。いわば現代版オデュッセイアの本作は、ヴェネチア
国際映画祭で銀獅子賞(監督賞)やマルチェッロ・マストロヤンニ賞(若手俳優賞)などを受賞、アカデミー賞国際長編映画賞
にノミネートされた。

この映画は私の全く知らない世界を私に突き付けてきました。とてもショッキングで見終わった後もボーッと
してしまいました。ファンタジーに過酷な現実の世界が入りまざり、私が思い描いていたヨーロッパを目指した
少年の冒険談とは全く違うものでした。

現在でも行われる人身売買、賄賂(お金で動く警察)、難民、政府でも警察でもないマフィアのような組織など
現実はもっと残酷と言われるシーンの連続で、砂漠の旅自体が過酷なのにそこに現れる人間たちのおぞましさ。

そんな中でも命を守ろうとする主人公、人間の尊さ、友情や連帯感、どんな中でも希望を失わない信念が
映画に希望を持たせました。

アフリカを内側から見た映画で、その立場に立った作り方もよかったと思いました。前半のアフリカの家族達の
暮らしやエネルギッシュな祭りのシーンも素晴らしく、アフリカの砂漠のカメラワークもよかったのですが、
旅があまりにも過酷なので美しいとか感じている暇はありませんでした。

 

 

Io Capitano - Official Trailer in HD

 

主人公は難民ではなく、ヨーロッパにあこがれたセネガルでは普通の暮らしのできる子どもでしたが、映画は
難民を扱った映画でした。

今の現実と排他的になって行くヨーロッパ社会にあらためて現実を突きつけたと言えるかと思います。
日本にいたらほんとうにぬるま湯にいるように難民の問題は自分たちがかかわるべき問題になっていません。

アフリカやイスラムや世界のあちこちに残る、暗黒の世界、そして核兵器やAI兵器が使用されそうな現実。
人間にとって守らなければならないことをしっかりと意識して生きて行かなければなりません。

 

  The New York Times

Italy’s Oscar Nominee Is a Great Film, but It Doesn’t Tell the Whole Story

「イオ・カピターノ」:西アフリカからヨーロッパへの危険な移民の旅をドラマ化したオスカーノミネート映画

ヨーロッパでますます外国人排斥的で人種差別的な反移民政策や感情に直面しているクアッシのような移民にとって、この映画は
「自分自身を表現する機会」を提供し、「ヨーロッパに到着する前にアフリカの人々が苦しんでいること」を共有する機会を
提供する。

視点が反対の二つの難民映画、、、。ヨーロッパへ向かう人たちと、受け入れる島、国

「海は燃えている」を見たのは7年前。無線が入れば海へ救出に向かうイタリア最南端の島のドキュメンタリー。
人間としての務めを果たそうとするイタリアの人たちの努力には頭が下がりました。
この時から世界はさらに変わっているので、難民にとっては生きにくくなってきているかと思います。

 

この映画は今の世界の一部分を知ってもらうこととそんな中でも希望を持つことの大切さを
投げかけるものでした。批評をいろいろ見ても外国のものの方が圧倒的に多く、
スペイン人らしき人の翻訳が出ていたのに納得したのですが、二度とみつからず引用できません。
多くはこの映画はもっと過酷な現実を描かずに終わっていると言っていますが、ドキュメンタリー
ではなく、ファンタジーとして描きこれでもソフトにして問題を提起したのだと思います。

Io Capitano のタイトルもWhitmanの”O Captain, my captain”を連想させるような誇らしげなものになって
います。


 

地球上全体にはなんといろいろな世界があるのだろうと本当に狭い世界で生きている私は
改めて思うだけです。

 

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桜桃の味とトスカーナの贋作 ・・・  Abbas Kiarostami

2024-03-30 23:55:44 | movie

やっと、今月分のサブスクで借りたキアロスタミ監督の『桜桃の味』と『トスカーナの贋作』を二日続けて見る時間が取れました。
いつも月の後半になってやっと2作見れる次第。月4作品は見れるのですが、見れなかった分はいつも翌月までは繰り越せるので
たまってしまって流してしまったり・・・そろそろストップしないといけませんが、見たい映画を見てしまってからに・・

 映画.com より



キアロスタミ監督はヴィクトル・エリセ、エルマンノ・オルミ、テオ・アンゲロプロス、タルコフスキーなどと同じように
若いころから注目の映画監督でしたが、映画を見たことがなくて、やっと借りてきたDVDで見ることができました。
「友だちのうちはどこ」に続いて・・・

桜桃の味

 

 

Taste of Cherry (1997) | best part | Abbas Kiarostami

 

 

Trailer for "Taste of Cherry"

 

 

Taste of Cherry - 1997 Trailer

 

桜桃の味
Taste of Cherry
1997年製作/99分/イラン・フランス合作

監督・脚本・製作・編集:アッバス・キアロスタミ
撮影:ホマユン・パイヴァール
録音:ジャハンギール・ミルシェカリ、モハマッド・レザ・デルパック
助監督:ハッサン・イェキタ、バフマン・キアロスタミ
出演:ホマユン・エルシャディ、アブドルホセイン・バゲリ、アフシン・バクタリ、アリ・モラディ、ホセイン・ヌーリ


この映画も説明が少なく、また謎解きのように映画は始まります。人材を探しているようなのだけど・・どんな立場の人なの
だろうとミステリアスです。一人一人車に乗せて、仕事の内容を説明しているうちに、なんと自分の自殺幇助をする人を探していた
ことがわかります。乗せた人は兵士だったり、神学生だったり、自然博物館で働く人だったりします。人種もアフガン人だったり
クルド人、トルコ人だったりして、中央アジアと中東がとても近く、交流があることがよくわかります。

乗せた人は心は使わずに手だけ使ってくれればいいと言われても殺人の手助けなどできるような人ではなく逃げ出してしまいます。
最後の自然博物館で働く老人は助けるのだったら正しく助けたいと自分の経験を少しずつ話し出します。



そのパゲリという老人のぼそぼそと話し出す話と車が走る景色が黄金色に変わっていくところなど、映像も素晴らしかったです。
どんな悩みにも解決法は必ずあると、老人も若い頃に自殺を図ろうとしたときのことを語り始めます。首を吊ろうとした桑の木の実が
おいしくて、死をどこかに置いてきてしまったと。太陽と緑の美しさと・・・ 桑の実が命を救ってくれた・・自分が変わり、生きる
限り悩みはあると悟った。見方を変えれば世界は変わると・・

感動的は老人の言葉・・
希望はないのか?
朝起きた時、空を見たことはないのかね?
夜明けの太陽を見たいと思わないかね?
赤と黄に染まった夕焼け空をもう一度見たいと思わないか?

車は黄金色に染まった美しい景色の中を走り抜けて行きます。

さらに続ける老人
月はどうか?
星空を見たくないのか?
夜空にぽっかり浮かんだ満月を見たくない?
目を閉じてしまうのか?
あの世から見に来たいほど、美しい世界なのに
あんたはあの世に行きたいのか?
もう一度泉の水を飲みたくないのかね?
泉の水で顔を洗いたくないのかね?

自然にある四季と果物
どんなに子供を愛する母親も神にはかなわない
それほど神は人を慈しんでいる
すべてをあきらめてしまうのか?
桜桃の味をわすれてしまうのか?

かすかな希望が生まれてきたことが、主人公の眺める青空に伸びて行く飛行機雲や子供たちが走っている風景が
彼の心を投影しているように思えます。

ターナーの絵のように沈む太陽、黒猫が横切り、彼に生きる希望が湧き上がってくるのがわかります。






それでも自殺を決行しようと夜中に穴に向かう主人公。上を見上げれば月を時々隠しながら雲が流れ、
遠くに雷の音や雨の音・・

そして意表を突く全く違うシーンのラストで映画は終わります。けだるいSummer Timeの音楽と共に。

映画は結論を語りませんが、それぞれが思うような結論を描けばいいのです。私はもちろん再生を想いました。

 

アッバス・キアロスタミの映画『桜桃の味』(1997)を哲学的に考える

【桜桃の味】アッバス・キアロスタミ死去・・・そして僕の一番好きな映画

GINZA MAISON HERMÈS Le Studio 『桜桃の味』Taste of Cherry

 

 

トスカーナの贋作


トスカーナの贋作
Copie conforme
2010年製作/106分/フランス・イタリア合作

監督:アッバス・キアロスタミ
脚本:アッバス・キアロスタミ/マスメ・ラヒジ(脚色)
製作:マラン・カルミッツ シャルル・ジリベール アンジェロ・バルバガッロ
撮影:ルカ・ビガッツィ
編集:バフマン・キアロスタミ
出演:ジュリエット・ビノシュ(彼女)
   ウィリアム・シメル(ジェームズ)
   ジャン=クロード・カリエール(広場の男)
   アガット・ナタンソン(広場の女)
   ジャンナ・ジャンケッティ(カフェの主人)
   アドリアン・モア(息子)

 

映画『トスカーナの贋作』予告編

 

ジュリエット・ビノシュのために脚本を書いたというキアロスタミ。
これでカンヌ主演女優賞を取ったというのも納得です。

相手役のウィリアム・シメルはバリトンのオペラ歌手で映画出演は初めてとのことでしたが、なかなか大女優相手に
役どころとしてはぴったりでした。

ビノシュは感情を露わにして女性のいやな面もかなり出していましたが、子供に対する苛立ちとかすごくよくわかります。
ロール・ゲームのように進む映画も面白かったです。たまたま出会った作家とギャラリー経営者が長年連れ添った夫婦の
ように感情をぶつけ合います。フェィクですが、ここのタイトルの贋作とほんものがからんでくるのでしょう・・
ここに男と女のオリジナルがあるように・・・ 

そして芸術についてももちろん贋作・オリジナルの問題が語られ、奥が深い映画のようです。ほんものとは何か?と問いかけて
きます。「単純さは簡単ではない」というセリフも・・

この映画の結末も他のキアロミスタの映画のように想像にまかされます。As you likeのようです。考えさせられるものが
あちこちにちりばめられています。

ビノシュは「存在の絶えられない軽さ」以来好きな女優の1人ですが、ビデオについていたメイキングでのインタビューが
おもしろかったです。メイキングもイタリアのスタッフがキアロスタミと映画を作り上げていく様子がわかり面白かった。
映画を作るのは本当に大変だと思いました。今回の映像スタッフも素晴らしかったです。

ビノシュへのなぜ演じるのかという質問に対して、「魂の探究者として、演技を通して経験することに、生きる喜びを
感じるから」と話していました。確かメリル・ストリープも同じようなことを応えていたことを思い出します。

この映画の主人公とピノシュも違うところがあってなかなか理解に苦しんだところもあったとか・・ 例えば噴水の彫刻が
男性に後ろから寄りかかるところで、自分は前に出ていたいし寄りかかりたくないようなことを話していました。あの彫刻は
監督がわざわざ噴水と一緒に作ってセットしたとのことで、男性的な考えが出ていたのかな?

DVDを借りるとメイキングのことが時々見れて興味深いです。

ABBAS KIAROSTAMI INTERVIEW
「トスカーナの贋作」:ふとしたことから夫婦を演じる男女の虚実の交錯を、イタリアの小さな街を舞台にスリリングに描くヒューマンドラマ


追悼アッバス・キアロスタミ~偉大なイラン人映画作家が〈差異と反復の遊び〉から生産した〈新しいもの〉の行方を再考する

アッバス・キアロスタミ監督 ジグザグ道三部作 

 

日本で撮った遺作となった作品も見てみたくなりました。


March 26-28    2024

 

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Perfect Days , Koji Yakusho

2024-02-29 23:59:31 | movie

2月25日

 

12月18日のメモ

ベンダース監督もみんなスタッフもそうですけど、「この平山さんみたいな生き方、いいな、うらやましいな」って言うんですね。

 彼独特のゆったりした時間の流れと、自分の好きな仕事を一生懸命やって、お風呂に入ったり、ちょっとお酒を飲んだりして。
自分でその瞬間、瞬間をこう、満足して、最後は好きな本を読んで眠りにつく。とてもその満足することを知っている男で。

 だから本当に自分に与えられたものに満足できるっていうことは、どれだけ豊かな人生かっていうのが、みんながうらやましい
と思うとこなんじゃないでしょうかね。(トークセッションで)

昨年、役所広司さんのインタビューを見てから、ずっと見たかった映画「パーフェクト・デイズ」。
その時のメモを残していました。こういう生き方を見ていると私の友人と何か似ていると思ったからでした。今は仕事は
していなく、世の中との関係をすべて断ち切って、お酒は飲まなくなって物欲も全くないのですが、毎日好きな本を読み、
音楽を聴いたりして一人閉じこもって暮らしていますが、何か満ち足りていて。「幸福なラザロ」にも似ていると思いました。
「彼は何も欲しがらない」というところが。

やっとこの映画を見に行くことができました。雨が降る寒い午後。家の近くの小さな映画館で。

毎日同じことが繰り返えされる暮らしだけど、同じ日はないとゆっくりと話が滑り出します。

外国人が撮るとこんなにも東京が美しいのかと思いました。
東京の美しさ、スカイツリーの写真のカットがとても美しかった。

安藤忠雄が設計したトイレもあるのかななんて思いながら、東京のトイレ事情のすばらしさにもびっくり。

隈研吾、安藤忠雄らが生み出す、アート作品のような渋谷区の公共トイレ

主人公の淡々と繰り返される日々の中にもささやかな人々との接触があり、取り囲む人たちも少しずつ見えてきます。
彼が一番密に身近にあるのが自然です。

エンドロールのあと?にだったか浮かび上がる文字 こもれび

こもれびの揺らぎの下で毎日お弁当を食べながら、フィルムカメラに収めて行く・・・
小さな盆栽のように植物を育てる喜び。

木、自然、失われゆくもの

ヴェンダースの淡々とした語り口と私たちの世代がよく聞いた曲が流れて・・・

命の根源、夢、そしてはかなくつながって行く人々
人との関係の不思議さをふと思う映画でした。

最後のNew Lifeという曲が良かった。早朝の車の中を流れるカセットテープも。

生きることの悲しみとよろこびと
最後の役所広司の泣き笑いがこの映画のすべてかも。

ヴィム・ベンダースも小津のファンであるというのが感じられる映画でした。
でもこの映画は役所広司なしには成り立たないと思いました。

 

データ

解説
「パリ、テキサス」「ベルリン・天使の詩」などで知られるドイツの名匠ビム・ベンダースが、役所広司を主演に迎え、
東京・渋谷を舞台にトイレの清掃員の男が送る日々の小さな揺らぎを描いたドラマ。2023年・第76回カンヌ国際映画祭
コンペティション部門で、役所が日本人俳優としては「誰も知らない」の柳楽優弥以来19年ぶり2人目となる男優賞を受賞した。

東京・渋谷でトイレの清掃員として働く平山。淡々とした同じ毎日を繰り返しているようにみえるが、彼にとって日々は
常に新鮮な小さな喜びに満ちている。昔から聴き続けている音楽と、休日のたびに買う古本の文庫を読むことが楽しみであり
人生は風に揺れる木のようでもあった。そして木が好きな平山は、いつも小さなフィルムカメラを持ち歩き、自身を重ねるかの
ように木々の写真を撮っていた。そんなある日、思いがけない再会を果たしたことをきっかけに、彼の過去に少しずつ光が当たっていく。

東京・渋谷区内17カ所の公共トイレを、世界的な建築家やクリエイターが改修する「THE TOKYO TOILET プロジェクト」に賛同した
ベンダースが、東京、渋谷の街、そして同プロジェクトで改修された公共トイレを舞台に描いた。共演に新人・中野有紗のほか
田中泯、柄本時生、石川さゆり、三浦友和ら。カンヌ国際映画祭では男優賞とあわせ、キリスト教関連の団体から、人間の内面を
豊かに描いた作品に贈られるエキュメニカル審査員賞も受賞。また、第96回アカデミー賞の国際長編映画賞にノミネートされた。

2023年製作/124分/G/日本
配給:ビターズ・エンド
劇場公開日:2023年12月22日

スタッフ
監督・脚本 ビム・ベンダース 
脚本 高崎卓馬
製作 柳井康治
エグゼクティブプロデューサー 役所広司
撮影 フランツ・ラスティグ
美術 桑島十和子

キャスト
平山正木  役所広司

タカシ   柄本時生
アヤ   アオイヤマダ
ニコ   中野有紗
ケイコ   麻生祐未
ママ    石川さゆり
ホームレス 田中 泯
友山    三浦友和 
                映画.com より

 

 

ISETANの建物もどこかレトロ・・小学校の頃から変わらない・・
映画でも失われたレトロなもの・・ カセット・テープや、フィルムカメラ、ほうきでの掃除・・
等出ていました。

 

映画館の前からバスで帰宅。どこにも寄らない・・

家の近くでいい香りと思ったら、沈丁花の香りが・・

雨に濡れてきれいだった。

 

Feb.25  2024  Shinjuku

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The Whale

2024-02-03 10:31:38 | movie

 

イタリア映画続きの前に久々で見た英語の映画です。
アカデミー賞主演男優賞を取ったのにそれほど話題にならなかったような・・・ イタリア語の先生にこの映画よさそうよと
言われて昨年借りて見た映画です。

とても感動的な映画で最後近くのこの美しいセリフがこの映画のすべてです。

Charlie says this after asking a question, the question was do you ever believe people are incapable of not caring?
It’s an interesting question, which he poses because other people in his life see the world as a desolate, cold place,
and believe people generally to be bad at their center, selfish and uncaring.

Do you ever get the feeling people are incapable of not caring ?  People are amazing

 

The Whale | Official Trailer HD | A24

 

ザ・ホエール(原題 The Whale ) - 映画予告編

 

2022年製作/英語/117分/PG12/アメリカ/字幕翻訳:松浦美奈
原題:The Whale
原作:サム・D・ハンター
監督:ダーレン・アロノフスキー
出演者:ブレンダン・フレイザー、セイディー・シンク、ホン・チャウ、タイ・シンプキンス、サマンサ・モートン


 

ハーマン・メルヴィル『白鯨』もタイトルのように一つのキーです。アメリカ人は白鯨が好きですね。学生時代、亀井俊介先生の
白鯨の解説を聞いて、このハチャメチャな小説を読みたかったのですが、挑戦することはできませんでした。メルヴィルの短編は
好きでよく読みましたが。昔、「ソフィーの選択」を見てジャック・ロンドンの「荒野の呼び声」からの引用やシューマンの
「子供の情景」から”異国にて”を聞いて、ジャック・ロンドンの小説もアメリカ人の心なのかなと思ったことがありました。

まさに鯨のように大きくなった病の床にある主人公が最後に散々なことをしてきてしまった家族、娘に対して伝えたかったことを
伝えて天に昇っていく話です。失意の中で最後にみつけた希望です。生きていてよかったと思った幸せな最後でした。
人生で何か一つでもなしえたら、それは素晴らしいことで、昔曽野綾子さんのエッセイで人を許すことだって生きる意味があると
確執のあった父の最後を看取ったことを確か書かれていたかとかすかな記憶があります。

感動して泣いてしまうほどの映画ですが、それは悲しいからではありません。

 

Do you ever get the feeling people are incapable of not caring ?  People are amazing

考えたことはないか?
人は誰であれ、誰かを気にせずにはいられない。
人生は素晴らしい。

 

 

 

「TheWhale/ザ・ホェール」 切ないほど人間愛に満ちた悲しくて美しい映画

映画「ザ・ホェール」より メルヴィルの「白鯨」とのコラボが素晴らしい

 

 

コメント (2)
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