せっかく望遠レンズを買ったのになかなか鳥に出会うことがありません。最近は花巡り中心でもっぱらマクロレンズです。望遠レンズ1本でもカバーする範囲は大きいのですが、花だとやっぱりマクロレンズかなと思います。
鳥さんに出会えない時は、片田好美さんの「森と生きる」を眺めたりしています。いつも手元に置いて開けるようにしておきたい画文集です。
このコロナのますます勢力が増してきている今、家の中で大自然に心をむけて、小さな鳥たちが頑張って生きていることに心を馳せてみるのもいいですね。
このすてきな本を贈ってくれる友達。いち早く手に入るのでありがたいです。嬉しくて私も鳥が好きな人にプレゼントしています。
作者の片田さんはもう20年も蓼科の森の中に住んでいらして、一緒に暮らしている人ならではの鳥に対する細やかな愛情が感じられ、鳴き声の聞き分けの描写も多くあって私ももっと鳥たちと触れ合いたくなります。きゃしゃなお体で、厳しい自然の中で暮らすのは大変なことだと想像を越えますが、その厳しさの中から、自然の恵みをいただいていていて「夢のような暮らし」と書かれていて、読んでいてもこちらも幸せに浸れるような本です。
私にとってうれしいのは、鳥だけでなく、花や木々も一緒に描かれていて、その季節ごとに違う表現に移ろう自然を感じることができることです。ファンタジーの翼を広げて、鳥たちの性格までも四季折々の花や実と一緒に描いています。鳥たちの習性に自然の不思議を感じないではいられません。それぞれの運命に寄せる思いが伝わってきます。楽しいエピソードもたくさんあります。
ずいぶん前に片田さんとご一緒に蓼科を歩いたことがありましたが、植物についてもほんとうにお詳しいので、驚きました。成城のギャラリーや八ヶ岳美術館での展覧会の時にもお会いして、いろいろお話が聞けてうれしかったです。成城の時だったか、伺った狸のナタリーや狐のロザンナの話は絵本にしてほしいなと思っていましたが、今度のⅡの方のあとがきで触れられていました。お会いしていても音楽の話やら話題が尽きません。薬科大学を卒業して、版画作家になられ彫金でアクセサリーも作られていたとお聞きしたことがありました。
八ヶ岳美術館の展覧会ではとてもたくさんの絵が展示されて、絵だけでなく、文章が添えられているのがすばらしく、それが発展して画文集になっています。季節と共に旅する鳥たちとの出会い。私もこんな鳥に出会いたいと思うような鳥たち。そこに住んでいるからこそ、旅の途中に片田さんのお庭に寄ってくれるのでしょうね。
その時の展覧会で心震えたのはオオワシのグルの所でした。「冬の北風は世界の果てにいる巨鳥のはばたきから起こる」と言うアイヌ伝説の一文が添えられていて、何とも壮大なイマジネーションなのだろうと思いました。今回Ⅱの最後にグルが登場していました。
この荘厳な感じさえする鳥。子どもを育て、必死に生きる小さな鳥たちの姿にも「ただ生きるためだけに生きている」生命の尊厳を感じずにはいられません。
片田さんの画文集は絵はもちろん生き生きとしてすてきなのですが、絵を見ないで文章だけを読んでもその描写で素敵な世界に誘ってくれます。
このコロナの時期に静かにページをめくって過ごすのもいいですね。素敵な本を作っていただいてありがとうございました。また続編を楽しみにしています。
現在八ヶ岳美術館でミニギャラリーが開催中でした。
八ヶ岳美術館 【ミニギャラリー】 片田好美水彩画展 森と生きる