桜
桜花咲きかも散ると見るまでに誰れかもここに見えて散り行く. 柿本人麻呂
梶の木
春過ぎて夏来るらし白妙の衣干したり天の香具山 持統天皇
たく こうぞ
沖つ波来寄る荒礒を敷栲の枕とまきて寝せる君かも 柿本人麻呂
つるばみ(クヌギ 櫟、椚、橡、栩、椡の古名)
紅はうつろふものぞ橡のなれにし来ぬになほしかめやも 大伴家持
弓絃葉:ゆづるは=ゆずりは
古に恋ふる鳥かも弓絃葉の御井の上より鳴き渡り行く 弓削皇子
あふち(楝) 栴檀
妹が見し楝の花は散りぬべし我が泣く涙いまだ干なくに 山上憶良
かつら
月に見て手には取らえぬ月の内の楓(かつら)のごとき妹をいかにせむ 湯原王
すもも
わが園の李の花か庭に落る斑雪のいまだ残りたるかも 大伴家持
やなぎ しだれやなぎ
浅みどり染めかけたりと見るまでに春のやなぎは芽えにけるかも 作者不詳
先日松戸21世紀の森と広場にあるパークセンターで「萬葉集で詠われた初春の樹木」というタイトルの講座を受けました。
前回アップした春の草花、花木は午前中の講座でしたが続けてその日の午後にもあり今度は樹木を探しながら園内をくまなく歩きました。
2月3月と同じ先生で冬から春にかけての木の芽の動きなどを観察する講座も受けていましたのですでに色々な予備知識をえていて樹木が好きな私にとっては最高に楽しい教室となりました。
21世紀公園内で見られなかったものは柏の葉公園で探してきました。
萬葉集では山桜を詠んだ歌は40首で梅ほどは多くありません。
万葉集では、たく(コウゾ)の皮から取った長い繊維を「栲(たく)」といい栲(たく)は楮の古名とされ、その繊維が丈夫なので、古くから衣類、網、縄、衾(ふすま)、領布(ひれ)などに用いられてきました。
「たく」で織られたものが「たへ」、特に美しいものは「しろたへ」と詠われていました。
つるばみは染料として樹皮やどんぐりの皮を使い、媒染剤として鉄を加え染まるのは、濃い紺色から黒や茶は一般人が用いたそうです。
万葉時代には、あふちは霊力が憑依する聖なる木と尊ばれました。その可憐な花や実を愛でる歌が4首残されています。
万葉集では、のちに桂という字が使われるまでは、カツラに「楓」の字が当てられていました。
万葉集には、柳を詠った歌が二十首あって柳は早春に芽を吹くので、梅の花の咲く時期と重なり合い梅と一緒に詠われることが多かったそうです。
雲散霧消見上ぐる先に朴散華