川本ちょっとメモ

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Q&A 集団的自衛権(下) 政府解釈の考え方 (公明新聞から)

2014-06-04 11:00:18 | Weblog


 公明新聞6月3日付記事を転載いたします。

  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇


 安倍首相は先月、有識者による安保法制懇が集団的自衛権の行使を認めるべきと提言したことに対し「採用できない」と言明。その理由として「憲法上、行使できない」とするこれまでの政府解釈と論理的に整合しないと強調した。<下>では、その政府解釈の考え方を紹介する。


<平和憲法の理念> 専守防衛に徹し信頼築く

  政府は集団的自衛権をどう解釈するのか。

  その前に、憲法には自衛権を明文で定めた条文がない。政府はまず、自衛権が認められる理由から解釈論を展開する。

  憲法第9条に自衛権の根拠があるのか。

  憲法第9条だけでなく、憲法前文、憲法第13条を読み合わせて自衛権が認められる根拠とした。

 政府は「第9条の文言は国際関係において実力の行使を行うことを一切禁じているように見える」と言う。「実力の行使」は武力行使と同義である。

 その一方で、憲法前文は国民に「平和的生存権」があることを確認し、さらに第13条は「生命、自由および幸福追求に対する国民の権利」について、「国政の上で、最大の尊重を必要とする」とも定めている。

 政府は、憲法前文と第13条の趣旨を踏まえ「第9条は、外部からの武力攻撃によって、国民の生命や身体が危険にさらされるような場合に、これを排除するために必要最小限度の範囲で実力を行使することまでは禁じていない」と解釈した。

 そして、この考え方を基礎にして「わが国がみずからの存立を全うし国民が平和のうちに生存することまでも放棄していないことは明らか。自国の平和と安全を維持し、その存立を全うするために必要な自衛の措置をとることを禁じているとはとうてい解されない」とし、自衛権を認めた。

 こうした政府見解は、1972年に政府が参院決算委員会に提出した資料の中で明確に表明されている。

  裁判で自衛権が論じられたことはあるか。

  1959年の砂川事件判決がある。最高裁は「主権国として持つ固有の自衛権は何ら否定されない」 「自国の平和と安全を維持しその存立を全うするために必要な自衛のための措置はとりうる」と明確に示した。

  自衛権を認めながら、集団的自衛権の行使はできないとする理由は。

  政府は集団的自衛権を「自国と密接な関係にある外国に対する武力攻撃を、自国が直接攻撃されていないにもかかわらず実力を持って阻止することが正当化される権利」と定義。

 その上で、他国への攻撃を日本が実力で排除することは「国民の生命等が危険に直面している状況下で実力を行使する場合と異なる」と判断。「憲法の中に(『他国を守る』ための)実力を行使することが許される根拠を見いだし難い」として集団的自衛権の行使はできないと結論づけた。

 「自国を守る」個別的自衛権行使による「専守防衛」が平和憲法の理念であり、この解釈の下で日本は国際的信用を築いてきた。



自衛権をめぐる政府の解釈

憲法第9条
 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
 前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。
     
憲法前文の一部
 われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する。
     
憲法第13条
 すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。
     
 自衛権はあるが、わが国を防衛するための必要最小限度の範囲で認める。


<首相の示した方向性> 

  安倍首相は就任前から集団的自衛権に関する政府解釈の変更に言及し、首相の私的諮問機関「安保法制懇」に報告書をまとめさせた。今後の展望は。

  首相は先月15日、報告書を受け取り会見を開いた。報告書には、集団的自衛権の行使容認のため、政府に解釈変更を求める内容の提言があった。

 しかし首相は、その提言を「これまでの政府の憲法解釈とは論理的に整合しない。私は憲法がこうした活動のすべてを許しているとは考えない。したがって、この考え方、いわゆる芦田修正論は政府として採用できない」と明言した。

  集団的自衛権の議論はしないのか。

 首相は一方で、報告書にある「わが国の安全に重大な影響を及ぼす可能性があるとき、限定的に集団的自衛権を行使することが許される」とのもう一つの提言について、自国の存立を全うするための必要最小限度の武力行使は許されると解釈してきた「政府の基本的立場を踏まえた考え方」であると表明した。

 その上で、首相は限定行使論について「研究を進める」との基本的方向性を示し、与党にも議論を求めた。限定行使論が政府解釈と論理的に整合するかどうかは、与党協議会の中で検討される予定である。

 また、首相の問題提起には、自衛権行使に至らないグレーゾーン事態や、国連平和維持活動(PKO)に関わる問題も含まれているため、与党協議では安全保障全般が議論される。


集団的自衛権をめぐる司法判断や政府見解

①1959年の砂川事件判決
 個別、集団的を明示せず「自衛のための措置を取り得ることは国家固有の権能の行使として当然」と指摘。

②砂川事件判決での田中耕太郎最高裁長官補足意見
 他国の防衛に協力することは自国を守るゆえんでもある。

③1972年の政府見解
 自衛の措置は、武力攻撃によって国民の生命や自由が根底から覆される急迫、不正の事態に際し、国民の権利を守るための措置として容認される。

④1981年の政府答弁書
 自衛権行使は必要最小限度の範囲にとどまるべきで、集団的自衛権行使はその範囲を超えるもので憲法上許されない。


<芦田修正論とは> 集団的自衛権の行使も、多国籍軍参加も可能に

 芦田修正論は、憲法第9条の下でも集団的自衛権の行使ができるだけでなく、国連の国連平和維持活動(PKO)や国連安保理決議に基づく多国籍軍にも自衛隊は参加できるとする憲法解釈の基になった理論である。

 現行憲法を審議した帝国議会衆議院・帝国憲法改正案委員会(芦田均委員長)の小委員会(芦田均小委員長)で、第9条の第2項冒頭に「前項の目的を達するため」との文言が加えられた。これを芦田修正と言う。


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