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川本ちょっとメモ

★所感は、「手ざわり生活実感的」に目線を低く心がけています。
★自分用メモは、新聞・Webなどのノート書きです。

古賀義明氏講演(3)日本のメディアはなぜ権力に弱いのか / テレビ朝日と朝日新聞の関係 / 安倍政権下における報道の自由と自主規制 外国特派員協会2017.6.5. (書き起こし)

2017-06-24 03:39:57 | Weblog

2017-06-16
古賀義明氏講演(1)I am not Abe と 官邸圧力の実際 外国特派員協会2017.6.5. (書き起こし)
2017-06-17
古賀義明氏講演(2)中村格氏が「報ステ」降板圧力・山口敬之氏逮捕状握り潰し 外国特派員協会2017.6.5. (書き起こし)
2017-06-24
古賀義明氏講演(3)日本のメディアはなぜ権力に弱いのか / テレビ朝日と朝日新聞の関係 / 安倍政権下における報道の自由と自主規制 外国特派員協会2017.6.5. (書き起こし)
2017-06-25
古賀義明氏講演(4終) ◎森友学園 役人は文書で仕事をする種族 安倍昭恵夫人の力が財務省に及んだ / ◎加計学園  外国特派員協会2017.6.5. (書き起こし)



 ■大手メディアの記者はジャーナリストである前にサラリーマンである

なぜこんなに日本のメディアっていうのは権力に弱いんだろうということをですね、そういうことを少し整理しました。

時間がないので簡単に説明します。まずいちばん大きいのは、なかなか海外の方に理解してもらえないのは、日本の場合は個々の記者がですね、ジャーナリストというよりも、まずは企業に雇用された employee(被雇用者、勤め人)という立場が優先するということですね。

そしてこの記者たちが、記者クラブというところに所属しています。多くの皆さんは、外国の記者の皆さんは記者クラブに入れてもらえなくてですね、政府の会見に出られないというような経験をされていると思いますけれども、逆にこの記者クラブにいるとですね、何もしなくても毎日、政府或いは企業のような団体からですね、その組織に都合のいい広報用の情報というのが大量に送られるというか、渡されるわけですね。

ですからこの記者クラブに所属できるのも…、私は今、大手メディアについて話していますけれども、大手メディアに所属していれば記者クラブに入れて、そこでは自動的に情報をもらえて、かつ非常に自由に情報源にアクセスできると。こういう特権を与えられているということです。

で、結局ですね、その結果どうなっていくかというと、その記者クラブがある組織から与えられた情報に基づく報道になっていると。これはあの、PR情報をそのまま流すということになってるということですね。で、これがジャーナリズムとまったく違うというのは、皆さんよくわかると思います。

その結果として、全体としては、大きなメディアに入って、そしてそこの、ジャーナリストではなくて company employee (会社員) になって記者クラブに所属するとですね、自動的に仕事ができて、そして問題を起こさない限り、非常に高い給料をもらえるという生活が保障されます。あの、決してほかの会社が報じていないことを書かないと remotion(解任される) というようなこともなくですね、そしてうまくやっていけば今度は、日本の会社の場合は記者がですね、社長にまで上りつめられると。そこの階段をめざしていく人が多くなってしまう、という問題があります。

 ■新聞社の弱み――軽減税屡、再販価格

それは、それぞれ記者個人の立場に光を当てた今までの説明なんですけど、もう少し組織的には、幾つか政府側がですね、持っている飴というのがあります。

ま、釣りの餌みたいなもんですけども、一つは、新聞について言うとですね、新聞の価格を維持する、resale price (再販価格) を維持するという制度があるんですけれども、これを認めてあげますよ、と。これはもちろん独禁法の例外になっているんですけども、これを政府が認めるか認めないかという、そこの裁量があるということですね。

それからもう一つは、消費税の税率、今度10%に上げるときには軽減税率の対象にしましょうという、これを取引に使うということがあります。

 ■テレビ局には放送法4条の脅し

それからもちろん、テレビ局について言えば放送法と、これは飴ではなく鞭になるわけですけれども、いちばん有名な放送法4条というのがあってですね、政府が直接テレビ局を規制すると。独立した機関による規制ということではなくてですね。そういう直接、もっとも厳しい場合は放送を止めさせる、免許を取り上げるという、そいういうことまでできる放送法というのがあります。

(国内放送等の放送番組の編集等)
第四条 放送事業者は、国内放送及び内外放送(以下「国内放送等」という。)の放送番組の編集に当たつては、次の各号の定めるところによらなければならない。
 一 公安及び善良な風俗を害しないこと。
 二 政治的に公平であること。
 三 報道は事実をまげないですること。
 四 意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにする
   こと。  
  2 放送事業者は、テレビジョン放送による国内放送等の放送番組の編集に当たつては、静止し、又は移動する事物の瞬間的影像を視覚障害者に対して説明するための音声その他の音響を聴くことができる放送番組及び音声その他の音響を聴覚障害者に対して説明するための文字又は図形を見ることができる放送番組をできる限り多く設けるようにしなければならない。

 ■大手メディアは権威権力が好きだと見える

それから大手メディアの組織の問題といえばですね、というのが適切なのかどうかというのがわからないんですけれども、非常に経営陣がですね、権威に弱い。というよりも権威権力が好きだと言うように見える現象が、いちばん有名なのはゴルフやったりご飯食べたりと、お酒飲んだりというのがあります。

典型的な例では、加計学園では前川前次官が非常に重要な証言をして直後にですね、たとえばテレビ朝日で言えば、早川会長と篠塚報道局長、この二人しか首相動静には出てませんけど、実はあの、政治部長も官邸の記者もいっしょにですね、安倍さんと非常に長時間の会食をしているというようなことに見られる通り、その、非常に権力を持っている人と仲良くすることが好きであるということが言えると思います。

ま、海外のメディアの場合は、仮に社長がトランプ大統領と仲が良かったとしてもですね、記者がそれに影響を受けると言うことは余りないと思うんですけども、日本の場合は、経営が報道の現場に介入するというのが非常に、なんというか頻繁に起きているというか普通に起きる、あるいは現場の方が忖度をするということも起きていますけれも、そういう、間に fire ball (火球) がないという関係が見られます。

 ■スポンサーに弱いテレビ局、スポンサーを仕切る電通の影響力

それから、もう一つはですね、もちろんスポンサーとの関係というのもあります。日本の、特にテレビ局がそうなんですけれども、スポンサーに非常に強く影響されると。これはあの、原発の事故のときに非常に顕著にみられたことですけれども、今もそういう傾向はありまして、原発の報道が非常に少ないというのがお気づきだと思いますけれども、これはその影響だろうなと。

それからもう一つは、やっぱりその、スポンサーを仕切っている電通という会社の影響力が非常に大きいということがあります。ですから、たとえば、オリンピックの電通が絡んだスキャンダルとかもなかなか報じられないということになってますし、報道ステーションなんかは電通1社が全部仕切ってますので、実はその影響も出てきているということも聞いております。

最後にですね、これはお金の話なんですけれども、政党に対して政府から政党交付金が出ています。ところがこれは今、自民党が議員の数が非常に多いために、100億オーダーで非常に大きな金額が渡っているんですけどれども、ここに広告代理店がですね、非常に儲かるということで、さまざまな提案を行って、新しいメディアコントロールの開発をしていくという現実があります。これは非常に大きな影響を与えていると思います。

話したいことはたくさんあるんですけれども、ちょっとあの、質問を受ける時間がなくなってしまうので、私の話はこの辺にして後は皆さんからの質問にお答えしたいと思います。ありがとうございました。

 ■報道ステーション降板 テレビ朝日と朝日新聞の関係

◎司会 それでは質問を受けたいと思いますけれども、もし質問があれば挙手をお願いします。はい、前の方へきてください。

◎朝日 朝日新聞の大鹿です。古賀さん、2点お尋ねしたいんですけども。テレビ朝日の降板騒動がございましたけれども、テレビ朝日には朝日新聞からOBで吉田慎一さんという新聞協会賞2回受賞された、非常にまあ、朝日社内では大記者、非常に優秀な方。テレビ朝日、当時まだ確か社長で転任されていたと思うんです。吉田さんはあのとき、古賀さんの問題についてはどのような反応を示されたのか、つまり日本の組織ジャーナリズムの中で最も優秀とされる、まあベスト・アンド・ブライテスト (超一流の人材) の一人だと思うんですけれども、彼があの騒動、古賀問題に対してどういう風なふるまいをされたのか。朝日の社員として非常に興味深く思うので、それをまず1点聞きたいと…。

◎古賀 はい、ありがとうございます。ええとですね、私は吉田さんとはほとんど関係がないので、吉田さんがどういう方かということも存じ上げないんですけれども、今大鹿さん言われた通り、大変すばらしい方なのかもしれません。

ただし、私の件が起きたときにですね、吉田さんの存在感というのは、ほぼゼロだったという風に聞いております。それはですね、おそらく大きな文脈があったと思うんですけれども、もともとテレビ朝日と朝日新聞とは非常に深い関係が、ま、資本関係だけではなくてですね、ある意味、朝日新聞がジャーナリズムの先輩格で、テレビ朝日はそれを頼るという面があったと思うんですね。

で、実際、私はそのう、確かやめる2年くらい前だったと思いますけれども、報道ステーションのコメンテーターが事実上朝日新聞の枠みたいになって、月曜から木曜は朝日新聞、という慣行があったんですけれども、それはおもしろくないから撤廃したらいいんじゃないかと話したことがあるんですね。

そしたら、そのときに返ってきた言葉は、いやいや朝日新聞との関係は非常に大事だと。なぜなら朝日新聞といっしょにやっているということによって、何かあったときにテレビ朝日を守るという効果があるんだという、まあ守護神というかね、そういうお札みたいな関係があるんだということを言われたことがあるんです。

 ですけど、私が、この問題が起きたときはそれとはまったく逆の状況になっていたと。そういう状況を説明します。
 
それはですね、朝日新聞では、吉田証言と吉田調書という二つの吉田問題というのが、その前の年に起きていまして、それで、安倍政権と朝日新聞の関係がもともと悪いんですけれども、決定的に悪くなったと。

そのタイミングでですね。おそらく前から狙っていたのかなと思うんですけれども、朝日新聞の影響下から独立すると、テレビ朝日が。という動きを出したときなんですね。

 それは何かって言うと、早川会長というのは、生え抜きの初めてのテレビ朝日の社長なんです。それまでは基本的に朝日新聞の人がトップに座るという慣行があったんですけども、初めて早川さんがテレビ朝日のトップになった。

そしてその早川さんが、それは temporary (一時的な) なものなのではなくて、早川さんがずうっとそこに居続けるというような動きを始めたときだったと私は理解してるんですが。

 たとえばその、自分の定年を無くすというか、持株会社制にしたときに定年を会長には入れなかったとかですね、そういう動きを見せていたときで、それは朝日新聞から独立というのを狙っていた時期、そこでそういうときに朝日新聞が大変な大打撃を受けたというタイミングで独立しようとした。

従って吉田さんという朝日新聞から来た社長と言えば、これはもうほとんど機能させないというような動きが見られるというようなことを、テレビ朝日の中の人たちからいつも聞かされていました。

それであのう、朝日新聞の代わりに何を頼ればいいのか。じゃあ安倍政権を頼ればいいという仕組みができたということだと思います。

 ■民主党政権のときにも圧力はあった

シンガポール アンソニー・ローリーと申します。シンガポール・ビジネス・タイムズの者なんですけれども、ちょっと私、遅れて参加したものですから、その点、聞き逃してるかもしれませんけれども、日本の新聞およびテレビの企業文化でありますけれども、そのような企業文化は長年続いてきたものであるわけです。しかし、そういうような企業文化につきましては、安倍政権以来、もっと抑圧的になってきたというような印象をお持ちでしょうか? 同様にそういった自己検閲するというような、自主検閲の機構というものも、安倍政権以来、より強くなってきたという風な印象をお持ちでしょうか?

◎古賀 ええと、いま受けた質問は、実は私話したいなと思っていたんですけど、話したいと思っていたことだったんで、ちょうど良かったと思います。

なぜ安倍政権になって、「報道の自由」という問題がこんなに言われるようになったのか? いま私がいろいろ挙げた項目というのは、ある意味、たとえば民主党政権のときもそうだったじゃないかという風に言えると思うんですね。現に民主党政権のときも、もちろん、いろんな圧力というものはありました。

私自身、民主党政権の最後のころにですね、民主党政権の批判をして、この本の前の「日本中枢の崩壊」という本を出しましたけれども、そのときにもテレビに出ると、官房長官から直接電話が「報道ステーション」にかかってきたりとかいうこともあったんですね。ですから、それぞれの話っていうのは、安倍政権になって突然変わった話じゃないんです。

 ■安倍政権の特徴――現場に日々圧力をかけ続ける、メディアのトップを押さえる

で、それはですね、安倍政権、ある意味、非常に優秀だと思うんですけども、ここに挙げたような日本のプレス (報道機関) をめぐるさまざまな要件というものをようく理解したうえで、それらのすべてを organize (組織する) された形で活用すると。それを徹底的に行うということを組織的にやっているということだと思います。

安倍政権のもう一つの特徴は、現場への圧力日々かけ続けるんですけれども、それとは別に、トップを押さえるということを非常に力を入れてやってます。

 毎日のように菅官房長官がメディアの幹部だったり、あるいはコメンテーターと食事をすると。安倍さんが社長たちと会食をしたりゴルフをするというようなことでですね。それをしかも見せちゃうんですね、仲良しですよというのを。

これは現場にいる記者に対して非常に、なんて言うんでしょう、「あ、うちの社長は
すごい仲良しなんだ」というのを見せるというのは非常に大きな影響力があると思います。

その一つの操作として、ええなんだっけ、日本放送労働…組合だっけ。あのう、テレビ局で働いている人の組合があるんですけど、そこがやはり声明を出したことがあって、その中にわざわざ、トップが会食したりゴルフしたりするのを困りますよね、みたいなのを書いてあるんですけど、それを書かれるということは意識されてるということなんですね。

だから、トップが安倍総理と親しいんですよというのを見せながら、現場に圧力をかけていくと。これが非常に効果的です。

 ■社内事情――現場の自主規制は、こうして始まる

そしてあの、記者の立場から見るとですね、安倍政権と問題を起こした場合に、ものすごく仕事が邪魔されるということになるわけですね。なぜなら、仮に自分が抵抗していってもですね、最後、上から来たら負けるというのが想像されるので、自分がやってることは正しいと思っても、仮に何かクレームが来たら、「うるせえ、ほっとけ」という対応ができなくて、一応、真面目に応えなきゃいけない。

ところが毎日毎日、日々のニュースを書かなきゃいけないのに、そんなことのために時間をかけるというのはとんでもなく煩わしいことだということになってですね、だったらここのところをちょっと表現をこのようにしておいた方がいいな、というように、少しづつ自主規制されていくということが現実に起きていると思います。

 ■社内事情――上はこうして現場を叩く

そして時々大きな問題が起きるんですね。たとえば報道ステーションで、原子力委員会のことを批判するビデオを流したときに、ちょっとしたまちがいを起こしたというようなときにですね、ええ、その、日ごろ政府批判をしているようなディレクターとかプロデューサーにたいして、ここぞとばかり、そういうときにですね、ものすごいプレッシャーをかけてきます。

何か小さなミスをしたときにですね。それに対してトップが、まちがいをしたんだから処分をしなきゃいけないというような対応をすることがあって、それはまあ、一種の見せしめになるというようなことも同時に行われてます。

 ■テレビ局が政権に飼いならされている

そういうことが重なっていって、メディアを支配していくと、で結果ですね、たとえば私がやめる前に起きたことですけれども、選挙の前に自民党が圧力をかける文書を東京のキー局に送った件でもですね、すべてのテレビ局がそれを隠したということがありました。

それから報道ステーションでは局宛ての圧力ではなくて、報道ステーションのプロデューサーに対して、しかも特定の日付の特定のビデオについてですね、内容が不適切だというような圧力をかける文書が、これはこの本にも出てますけども、なんていうか、そういう圧力文書が来ているんですけども、これもテレビ局が隠したんですね。

 隠しただけじゃなく、局内に周知すると。こういうのが来てますから気をつけてくださいね、というような行為にまで及ぶというですね、あの、そこまでテレビ局が組織として、政権に従順というか、飼いならされてきたと。それはもう2015年ぐらいまでにだいたいできているということだと思います。

 ――次回(4終)につづく



 
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