川本ちょっとメモ

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新書『アベノミクスによろしく』をご紹介 アベノミクスのとんでもない実態を統計データで明らかにした

2017-10-20 19:06:18 | Weblog

前々回、前回と2回つづけて、ブログ冒頭に同じGDP折れ線グラフを掲げました。この折れ線グラフは、たまたま見た誰だったかのリツィートで紹介されていました。

この折れ線グラフの2本の線が乖離しているのを見てすぐに、わたしは「GDP数字にからくりがある」と直感しました。

直感したについては次のような経験がありました。


年金積立金の運用ポートフォリオ変更、株式主力へ

安倍政府が厚生年金積立金運用の主力を国債保有から株式投資に変更したことに怒りを持っていました。たいせつな国民の資産の主力運用を、安全最優先の国債から投機の一つである株式投資に切り替えるなどもってのほか。というのがわたしの持論です。

株が上がれば利益が出る。しかし株は必ず下がって損失を被る。わたしたちの大切な年金積立金を賭博ゲームにつぎこむなど安倍首相は正気か、というのがわたしの考えです。

 ○1989年(平成元年)以後の東証株価(日経平均225)

  1989年(平成元年)12月29日大納会 過去最高値 38,915.87円
  2002年(平成14年) 元年以後2番底 8,578.95円 ITバブル崩壊
  2008年(平成20年) 元年以後3番底 8,859.56円 リーマンショック
                          (金融危機)
  2011年(平成23年) 元年以後1番底 8,455.35円 東北大震災、
                          原発事故
  2017(平成29年)年10月20日 引け値 21,457.64円

民主党政権の時代は、上記1番底、3番底が象徴するどん底GDP4カ年の時代でした。これはどんなに優れた政治家が担当しても苦しんだであろう時代です。安倍政府・安倍自民は、なんでもかんでも民主党政権の失敗だと非難していますが、それは事実ではありません。

その一方で、福島原発事故について、2006年第一次安倍内閣当時に、国会で非常電源喪失対策を求められたにもかかわらず放置していた安倍首相は、福島原発事故の責任を問われるべき立場にあります。

GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)は政府の管理下にあります。
わたしはこういったことを調べて2016年1月、2月にブログに書きました。


■菅官房長官2016年7月参院選遊説「30数兆円の運用益を確保している」

わたしは上記のように、GPIFの運用収益を調べるために数カ年分の「報告書」を読んでおりました。

ですから、「30数兆円」という数字が、有権者をたばかる数字だとニュースで聞いた瞬間にわかりました。安倍政権以前からの実績も算入して、選挙対策数字を演出したのではないかと推測しています。その時点で安倍政権下の運用収益は14兆6000億円でした。


上の2つのことで、「安倍政府は平気で工作数字を宣伝する」ことがわかって以降、安倍政府・自民党が特に宣伝する数字・成果は信用できないと思っています。


『アベノミクスによろしく』 その実態を統計データで明らかにした

こういうところへ偶然に、「モノシリンの3分でまとめるモノシリ話」というサイトとGDP比較がグラフを紹介したリツィートに出会いました。見つけるのが遅すぎたという後悔が残ります。

このサイトの管理人は明石順平という弁護士さんで、つい最近『アベノミクスによろしく』(インターナショナル新書 税別740円) という本が刊行されました。わたしはきょう、この本を買ってきたばかりです。

この本で書かれていることはすべて、統計データを分析した結果です。以下、本書の紹介に代えて、カバー帯のコピー、最終章のまとめ部分、あとがき、をそのまま複写して転載いたします。

<1> カバー帯のコピー

  藻谷浩介氏「客観的事実のみを書いた、文句のつけようのない内容」
  井出英策氏「〝リアル〟がアベノミクスの正義と幻想を破壊する」

  豊富なデータにより、アベノミクスの本当の姿が今、明らかに!

 ○ 異次元の金融緩和でもマネーストックの増加ペースは変わらず。
 ○ 実質賃金大幅下落で、国内消費が「リーマンショック時を超える下落率」
   を記録。
 ○ 3年間で比較すると実質GDP成長率は民主党時代の約3分の1。
 ○ 新しいGDP算出基準への対応を隠れ蓑にし、GDPを異常にかさ上げ。
 ○ 雇用改善は労働人口減、労働構造の変化、高齢化による医療・福祉分野の
  需要増の影響。アベノミクスと無関係。
 ○ 株価はも日銀と年金でつり上げでいるだけ。
 ○ 金融緩和の副作用は、それをやめた時の国債、円、株価の暴落。


<2> 私たちはこれからどうしていくべきか 総まとめ

 ① 異次元の金融緩和を行っても、マネーストックの増加ペースは変わらな
  かった。物価上昇は消費税の増税と円安によるものだけ。マイナス金利も
  効果なし。
 ② 増税と円安で物価は上昇したが、賃金がほとんど伸びなかったので消費
  が異常に冷え込み、経済は停滞した。
 ③ 経済停滞をごまかすため、2008~NA対応を隠れ蓑にした異常なGDP改定
  が行われた。
 ④ 雇用の数字改善は労働人口減、労働構造の変化、高齢化による医療・福
  祉分野の需要増の影響。これはアベノミクス以前から続いている傾向で、
  アベノミクスとは無関係。
 ⑤ 株高は日銀と年金(GPIF)でつり上げているだけ。実体経済は反映され
  ていない。
 ⑥ 輸出は伸びたが製造業の実質賃金は伸びていない。また、輸出数量が伸び
  たわけではない。円安で一部の輸出企業が儲かっただけ。
 ⑦ 3年連続賃上げ2%は全労働者(役員を除く)のわずか5%にしか当てはま
  らない。
 ⑧ アベノミクス第3の矢の目玉である残業代ゼロ法案は長時間労働をさらに
  助長し、労働者の生命と健康に大きな危険を生じさせる他、経済にも悪影
  響を与える。
 ⑨ 緩和をやめると国債・円・株価すべてが暴落する恐れがあるので出口がな
  い。しかし、このまま続けるといつか円の信用がなくなり、結局円暴落・
  株価暴落を招く恐れがある。

太郎 アベノミクスってはっきり失敗だったけど、大きな痛みなしに終えることができないということか……かといってこのまま現実逃避を続けても、結局円と株価の暴落が待っているかもしれないし……引くも地獄、進むも地獄って感じだね……嫌になっちゃう。

モノシリン これだけの現実を見て「民進党よりマシ」って言えるかな?

太郎 う~ん。これだけの現実を見せられると民進党よりマシって言えないよ。だって実質GDPは民主党政権時代の3分の1しか伸びてないし、実質貸金は下げられるし……挙げ句の果てにGDPをごまかす改定するし、その上、超特大の副作用を残すし。残業代はゼロにされそうだし…・‥。

モノシリン アベノミクスの現実を知ればそうなると思うんだよね。輸出が伸びたこと以外はほぼ何も良いことなかったんだから。その輸出の伸びだって肝心の国内消費を犠牲にしたものだしね。でも、国民のほとんどはこの現実を知らない。みんなアベノミクスという言葉は知っているけど、中身とその効果については全然知らない。

太郎 うん。そういう状況だとアベノミクスって選挙対策としてはいいよね。中身は知らないけどなんか「頑張ってる感」は出るし、株価とか為替とか目立つ数字だけは好調に見えるから「民進党よりマシ」って考えにつながりやすいよね。

モノシリン そう。だから、「自民党以外に頼れる政党がない」っで考えになる。本当は史上悪の経済政策を実行して、出口も見つからずに現実逃避をしているだけなのにね。ただ、これは野党も悪い。いつも経済を主要争点にされて負けているのに、経済統計をちゃんと分析してアベノミクスの失敗を国民に知らせることをしてこなかったんだから。

太郎 でもさあ、批判するだけなら野党に投票する気にならないよ。「自民党も嫌。野党も嫌。入れるとごない。だから選挙に行かない」って考えになるじゃん。

モノシリン そうだね。だから民進党をはじめ与る野党には、批判するだけではなく、もっと自民党とは違った政策をアピールしてほしいところだね。

太郎 民進覚って労働者側政党なんでしょ。もっとその点をアピールした方がいいよね。民進党がそういう政党だったなんて僕知らなかったし。

モノシリン そうだね。労働力人口がどんどん減少していくこの国において、貴重な労働力を使い
潰すことにつながる長時間労働をなくすことが、この国の一番の課題と言えるんじゃないかな。そしてそれは使用者側政党である自民党には実現できない。現に残業代ゼロ法案を提出して長時間労働撲滅に逆行することをしでいるしね。長時間労働を撲滅できるのは、労働者側政党しかないんじゃないかな。

太郎 そうだよね。僕、人間らしい生活がしたい。死ぬほど働かされるなんて嫌だよ。だけど、今のまんまじゃアベノミクスはまだ終わらないよね。どうなるんだろ。

モノシリン いつかの時点で円と株価の暴落が起きて経済に大混乱が起きれば、さすがに国民も目を覚ますかもしれない。

太郎 気づいた時には日本終了じゃん。嫌だよそんなの。

モノシリン 太郎、もの凄いインフレが起きるとか、とっても痛い目にあうかもしれないけど、この国が消えてなくなるわけじゃない。諦めちゃいけないよ。もう痛い目にあわずに済む方法はないかもしれないけど、どん底に落とされたってそこからはい上がればいい。君たちの大先輩が敗戦後の瓦礫の山からこの国を立て直したようにね。

太郎 う~ん。ま、頑張るしかないね。僕、なんだかんだ言ってこの国好きだし。

モノシリン その意気だよ。絶望してはいけない。諦めは何も生まない。少子高齢化で大きな経済成長が期待できず、社会保障費が膨らんでいってしまうのは先進国であればどこも直面する問題だ。日本はその間題の最先端に立たされていると言ってよいだろう。君たちが頑張つてこの大問題の解決の筋道を世界に示すんだ。

太郎 なんか話が大きくなってきたね。うん、頑張るよ。そのためにはもっといろいろ勉強
しなきゃだな。

<3> 本書 あとがき

「アベノミクスって思ったよりうまくいってないかもしれないけど、民主党政権時代よりはマシだろう」

 自分で統計データをいろいろ調べてみるまでは、私もそう思っていました。調べてみたら、まるで遠いました。アベノミクスは想像を絶する大失敗に終わっていました。

 これはみんなに知ってもらわなくてはならない、ということで、ブログに書いたのが「アベノミクスによろしく」でしだ。まえがきにも書きましたが、佐藤秀峰先生が二次利用フリーで公開している『ブラックジャックによろしく』を使わせていただくことで、訴求力が格段にアップし、多くの方にブログを読んでいただくことができました。

 大多数の人にとってなじみの薄い、かつわかりにくい「経済」の話に興味を持ってもらうためには、この漫画の存在が必要不可欠でした。佐藤先生には心より感謝申し上げます。そして今回、光栄なことに書籍化のお話をいただき、ブログ版を大幅にパワーアップして本書を書きました。

 なお、ブログ版は暦年データを中心にして作っています。他方、書籍版は年度データを中心に作っていますので、数字が異なります。

 例えば、名目賃金は暦年データでみるとアベノミクス3年間で0・1%しか伸びていませんが、年度データで見ると0・5%伸びています。また、暦年データで改定前の実質民間最終消費支出を見ると、2年連続で下がる現象はリーマンショックの際にも起きています。

 このような違いが生じますので、ブログ版を読まれた方は、くれぐれも暦年データと年度データを混同しないよう注意しでください。

 自分でとことん調べてみて、「民主党政権時代よりマシ」だなんて口が裂けても言えなくなりました。そんなものはただの思い込みにすぎませんでした。

 確かにアベノミクスは、ごく一部の人たちに利益をもたらしました。しかし大多数の国民には何の恩恵も与えていないし、それは今後も変わらないでしょう。為替と株価という目立つ部分が良く見えるだけです。


 その上、私たちはアベノミクスが生んだ特大の副作用と闘わなくてはならない運命にあります。一人でも多くの方に、この現実を知って濁らいたいと強く思います。

2017年8月吉日
                              明石順平




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