親本は2015年、文庫版は2016年の発行。
人気のジャーナリストと、博覧強記で知られる元外務省勤務、現在は評論などで幅広く活躍する作家との対談。
もう5年前に出た本で、当時はフランスの経済学者ピケティの「資本主義が進むと格差が拡大する。それを解消すべき」という論調が世間に迎え入れられて、ちょっとしたブームになったころ。
資本論を今の時代にどう読むべきか、というのが全体を貫くテーマ。佐藤氏はこの前にも資本論に関する本を何冊か上梓しており、これはそれを踏まえた対談集。
難しい解説ではなく、今起きている出来事を資本論の中の考え方で解釈し、その解を探すという試み。
資本論は難しい。しかししっかり読み解けば、考える力が付き、自分が直面する問題に対処できる力が付くという啓蒙書とも読める。
巻末にはピケティ氏との対談もある。
ピケティ氏はマルクスの労働価値説を理解しておらず、資産を持てる者が貧しいものに回していくシステムで解決すべきというところに限界があると、面と向かってではなく、この本の初めの方に書いている。
ピケティ氏の価値は後世に定まると思うけれど、資本は自らの欲望にのみ忠実なコントロール不能のシステムではないかと。一人の人間は何があっても生き延びる。そのための知。知識は邪魔にならない。その大切さをほかの著者の本同様、教えられた。
この中では具体的な話もてんこ盛り。イスラム国の日本人人質の身代金、一万円札なら重さで2トン、金なら5トン。そういわれたところが交渉の始まり。しかし当時の政府は何もしなかったのは拉致被害者とも同じ。当時も今も同じ首相。当時粘り強く交渉して国民を取り戻した国もありましたよね。
労農派と講座派、どちらが先鋭的だったか、私はこの年まで勘違いしていた。今さら知ってもと思いつつ、知るにしくはなし。
ところで資本論読みますか?私は読まないと思う。
思うけど、向坂逸郎訳の文庫本、ロングセラーだそうで、まだ発行されているのに驚く。