ブログ

 

藤原定家「明月記の世界」村井康彦

2020-11-06 | 読書

先月、旅行中に高松市内で購入。発行は10/21だそうで、出たばかりだったんですね。

「明月記」は平安末期から鎌倉初めに京都で活躍した歌人、藤原定家の数十年にわたる私的日記。原本は、現在、京都御苑の今出川通はさんで北側にある冷泉家の蔵の中にあり、と聞いた気がするけど、確か国宝だったはず。

明月記の研究本は過去にも何度かあったらしいけど、今すぐには読めなくなっているのでは。ハンディな新書で、全体が分かったのは大変良かった。

で、和歌を家の芸としている人に今さらではありますが、大変に筆まめだったということに感心。意外だったのが、健脚で物見高い。上皇、天皇の外出の行列を見物し、供回りの名前、服装など、手元を見ずに次々メモしているのもある。立ったまま、筆で。今で言うとキ―ボードのブラインドタッチ?素晴らしい。


定家は後鳥羽上皇の信任が厚く、新古今和歌集の選者としてあまりに有名。しかも、1201年11月、熊野詣から帰ってきて、日枝神社にお礼の参拝、その後すぐ始めている。

藤原定家と熊野詣、イメージとして結びつかないけど、和歌の好きな後鳥羽院が道中、何度も歌合わせをしたそうで、その選者として。さらに一行の一足早くを行き、その夜の宿を調達する大切な役目。

今の熊野古道、足元わらじか何かで、雨の日もあるし、先達の法師と一緒に毎日毎日、歩いて宿を決めに行く。登山のような道もある。昔の人の体力にただただ驚くばかり。

まあこの話は本筋とは関係ない。

一番の読みどころは歌の家として、いい歌を詠まなければというプレッシャーと自負、思うように貴族社会の中で位階が進んで行かない焦り、中高年以後は子供たちの活躍に喜ぶ親としての本音が吐露されていて、その部分だと思う。

勅撰集の選者、これは大変名誉なことであり、後世にいい歌を残す使命感もあり、全身全霊で務めたことだろう。これが前半生の山場。

・・・と、この後が手違いで消えてしまったのか、出てこないのか・・・

もう一度書き直す気力がわかない。

定家が身近に感じられたと同時に、著者は現在90歳。90歳でこのお仕事。文章も若々しく、定家が前妻の子に冷たく、後妻の小さな子を溺愛するところをたしなめたりして、面白かったです。

毎日の記録も続けていくと、一人の人間の人生、当時の世相、自然環境など、貴重な記録になるようです。

コメント (4)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

書評

にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
にほんブログ村

手織り

にほんブログ村 ハンドメイドブログ 手織り・機織りへ
にほんブログ村

日本ブログ村・ランキング

PVアクセスランキング にほんブログ村