■【成功企業・元気な会社・頑張っている社長】 食品工場の「カミ」を「ナシ」に 9a30
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■ 食品工場の「カミ」を「ナシ」に 9a30
人の口に入る食品には、食中毒や異物混入を防ぐため、厳しい安全衛生管理が要求される。このため食品工場や給食施設などは、食材の調理温度や洗浄液の塩素濃度など、さまざまな情報を記録している。ただ、その方法はペンと紙による手書きが一般的で、手書きの帳票が毎日数十枚から数百枚単位で発生する。現場で記録する担当者の作業負担は大きく、記入もれやミスも発生しやすい。
これに対し、「食品工場の紙をゼロにする」を掲げ、課題を解決する製品を提供しているのがカミナシ(東京都千代田区)である。紙に手書きしている帳票記録をすべてデジタル化するサービスで、例えば温度計で計測した温度をデータとしてクラウド上にリアルタイムに保存し、監査など必要な時にアクセスできるにようにする。テンプレートを使ってさまざまなチェック項目を簡単にカスタマイズでき、タブレット端末などで直感的・感覚的に操作することが可能だ。
2016年12月に同社を創業した諸岡裕人CEO(最高経営責任者)は「前職で航空会社の機内食を製造する工場を管理していた時の経験をもとに開発した」と話す。慶応義塾大学経済学部を卒業後、大手人材派遣会社を経て、父親が経営する会社の機内食製造部門を任された。だが、そこに待っていたのは「紙に溢れた現場」だった。「従業員には日本語の読み書きが苦手な外国人労働者もいて、記入もれやミスが発生しがちだった。また作業が終わった後に、責任者として帳票を1枚ずつチェックして転記・集計する必要があり、深夜まで作業に追われていた」と振り返る。
ただ当初は温度と時間しか測れないバージョンだったため、売れなかった。品質管理は会社や現場、部署ごとに違い、帳票自体もバラバラなためだ。そこで、クラウドを用いてどんな管理項目でも対応できるようにした。また、誤った数値を入れるとその場でアラートを出し、正解が出るまで何度もNGを出すことで、外国人でもルールを理解できるようにした。この結果、同業他社の機内食工場のほか、大手外食チェーンのセントラルキッチン工場やコンビニ向け食品工場などに次々と採用されるようになった。
厚生労働省はHACCP(危害要因分析重要管理点)という品質管理手法を義務化し、食品衛生の管理基準の厳格化を進めている。一方で人口減少による人手不足に伴い、今後も高齢者や外国人労働者が増えることは必至だ。ただ、独自のシステムを構築してIT化するには莫大な資金が必要。月額課金制を採用し、少ない予算で「どんな工場も即座に導入できる」「どんな人でも使える」ことを最優先に開発したカミナシは、まさに諸岡氏自身の「必要は発明の母」が結実した成果である。
出典: e-中小企業ネットマガジン掲載承認規定に基づき作成