日々雑感「点ノ記」

備忘録(心の軌跡)

徒弟制度の話

2005年07月20日 | インポート
小屋の補修をしてくれている大工さんの、修行時代のこと。

大工さんの棟梁の所に弟子入りしてから、4年間は見習い期間ということで、1ヶ月に2万円の手当てをもらっていたという。

その4年間が過ぎると、あと1年間は棟梁の「加勢」ということで、正規の大工さんの給料の半額の手当てをもらう期間だったという。

弟子入りしてから、満5年の経験を積んで、やっと一人前の職人として認めてもらえるような、徒弟制度の厳しい修行を積んできている。

既に30年以上の経験に裏打ちされた技能と、その誠実な仕事振りは、見ていて気持ちが良く、洗練されていることを感じる。

無駄な動きが無く、どのようなことにでも、臨機応変の適切な対処がすぐにできている。
本物のプロフェッショナルとは、こういう人のことを言うのだなと思ってしまう。

しかも朝は、8時よりも早目に来て仕事を始め、夕方は7時過ぎまでの、密度の濃い作業だ。

鍛え上げられた太い腕が、長年に亘って力仕事を続けて来たことを物語っている。

中学生の頃はヤンチャもしていたということだが、その後の30年間を、地道に大工さんとして過して来たという風格がある。

隣の家のお母さんが、22年前のそのお宅の新築工事の時に、玄関の吹き抜けのところをやってくれていた大工さんだということを覚えていて、休憩している時に話しかけてきてくれた。

徒弟制度の修行時代を終えて、その棟梁の下で一人前の大工として働き出していた頃の彼のきびきびとした働きぶりが、とても印象に残っていたということだった。

その後、しばらくして独立し、現在に至っているのだそうだ。

今でもその頃の棟梁のことを「親父さん」と呼んで、敬っていることが分かる。

徒弟制度の中で培われた師弟関係は、一生もののようだ。

明日はどんな技能を見せてくれるのか、とても楽しみだ。

豊田かずき