「放射線治療」の最前線

ガンの放射線治療は、近年大きく進歩したようですが、まだまだ副作用などに悩まされることは多いようです。

この記事では前立腺ガンの患者が、手術支援ロボット「ダヴィンチ」をつかった手術を受けたところ、術後尿失禁と勃起不全に悩まされているという例が出ていました。

私の身近な友人も3人ほど普通の手術を受けていますが、やはり尿失禁などの問題は出ているようです。こういった問題を解決するために、手術に代わるものとして放射線治療が進歩しています。

放射線治療は、高精度の機器の登場で正常組織にダメージを与えず、ガンに強力に放射線を照射できるようになりました。高精度放射線治療には、「強度偏重放射線治療（ＩＭＲＴ）」と「定位放射線治療（定位照射）」があります。

ＩＭＲＴは、放射線強度に濃淡をつけることができ、例えば頭頸部ガンに放射線を照射するとき、脊髄と唾液腺を守るといったことが可能です。定位放射線は多方面からガン一点に放射線を高い精度で集中させる治療法です。

ＩＭＲＴは身体中のあらゆる臓器に適用可能です。また定位照射は肺ガンや肝臓ガンに用いられますが、今は「動体追尾照射」という方法もあり、大きな役割を果たしています。

肺や肝臓ガンは、呼吸でガンの位置が大きく移動することがあり、移動量を含めた広い範囲に照射せざるを得ませんでした。しかし動体追尾照射でガンを追いかけ照射できるようになり、照射範囲を狭くでき不要なところに放射線を当てなくて済むようになりました。

定位照射は、転移したガンに関してもこれまで脳転移、肺転移、肝転移などに用いられてきました。

わずかな副作用で良好な効果が得られていますが、最近海外の研究者によって、痛みなどの症状緩和の治療だけよりも、転移したガンに積極的に定位照射を行った方が、生存期間の延長が認められ今後の治療指針に変更が加わるかもしれないと発表されました。

ここで問題なのは、患者は生存期間延長を求めているのではなく、完治を目指しています。医療関係者は2年生存期間が伸びれば大きな進歩ととらえますが、患者からしたら何の進歩でもないという乖離が常に存在していることかもしれません。

さて放射線の拠点病院では、放射線治療の60％以上に高精度放射線治療が行われていますが、全国平均ではまだ10％程度になっています。

ガンと宣告されたら、高精度放射線治療の可能性を考慮して病院を選ぶといいますが、現実的には難しく、早くすべての病院にこういった機器が導入されることを願うしかないかもしれません。

それでもこういった放射線治療法は、年々進歩しているのは確かなようです。これは医療費の高騰につながるという問題もありますので、若者を優先的に治療するといったルール作りも必要かもしれません。