ごっとさんのブログ

病気を治すのは薬ではなく自分自身
  
   薬と猫と時々時事

短時間睡眠と遺伝子変異

2019-10-06 10:38:56 | 自然
近年の研究では「7時間睡眠」の重要性が示唆されています。

睡眠時間が短い人の脳は老化が早く、風邪をひくリスクが高まり、さらに慢性的な睡眠不足は脳の自己破壊を引き起こすとされてきました。

しかし睡眠時間が短くてもすっきりと毎日を過ごすことができ、何ら健康状態に問題のない「ショートスリーパー」という人がいることも事実です。私が昔出向していたところの先輩は、1日4時間程度の睡眠で十分のようでした。

カリフォルニア大学の研究グループは2009年に最初のショートスリーパー遺伝子を発見し、今回ふたつめの遺伝子の存在を明らかにしています。この発見以前は睡眠時間を遺伝学的には考えていませんでした。

最初の発見も一部のショースリーパーを遺伝的に説明できても、全てのケースを説明するには不十分だったようです。

今回研究チームは、3世代揃ってショートスリーパーの家族を特定し、DNAシークエンシングと連鎖解析という二つの手法を使って、この家族に特有な突然変異をゲノムから探し出しました。

特定されたのは「β-1アドレナリン受容体遺伝子(ADRB1)」と呼ばれる遺伝子における、ひとつの塩基置換の突然変異でした。またこの家族でも同じ突然変異がない人たちは、ショートスリーパーではありませんでした。

ヒトゲノムのデータベースによると、この突然変異をもっているのは約10万人に4人ほどの割合で、ヒトでは珍しいようです。興味深いのはこの遺伝子変異が睡眠や覚醒に及ぼす影響です。

多くの人は目覚まし時計が鳴っても一度のアラームですっきり起きられるわけではなく、起きても頭はフル回転には程遠くしばらくボーっとすることも多いようです。

ところが「ADRB1」に同じ変異を持つマウスで実験すると、ショートスリーパーの家族と同じく睡眠時間が短くなったのはもちろん、どんな深い睡眠状態からでも一気に覚醒できるようでした。

研究チームは、ADRB1が睡眠の調節に関与する脳幹の橋背部でとくに発現していることを突き止め、この受容体が発現しているニューロンは、レム睡眠および覚醒中に活性化することを確認しました。

この変異を持つと覚醒しやすくなり、より長く活動的でいられる脳を構築することが明らかになりました。このようにたった一つの遺伝子変異で、睡眠不足が有害でなく、楽観的でエネルギッシュで、マルチタスクに向いている傾向があるようです。

またより痛みに強く、時差ボケもあまり影響されないといいます。睡眠・覚醒調節の根底にある複雑な回路を解明するにはさらなる研究が必要で、研究チームはショートスリーパーを通して質の良い睡眠と全体的な健康の関係を調べていくとしています。