ごっとさんのブログ

病気を治すのは薬ではなく自分自身
  
   薬と猫と時々時事

遺伝子治療で慢性痛を治療

2021-04-02 10:24:33 | 健康・医療
慢性痛というと関節炎の痛みや椎間板ヘルニア、慢性頭痛、坐骨神経痛などさまざまな種類があり、治療法もさまざまですが、単に鎮痛薬で我慢している人も多いようです。

カリフォルニア大学サンディエゴ校の研究チームが、遺伝子治療を用いた慢性痛の有望な治療法の研究成果を発表しました。

何らかの慢性痛で悩んでいる人は日本全国で2000万人もいると推定されており、そのうちの8割近くは治らないとあきらめているという報告もあります。今回発表された治療法は、痛みを感じる遺伝子を永久的に変えるのではなく、機能を低下させることで実現しています。

マウスを使った実験では、健康上の大きなリスクを伴うことなく、1回だけで数カ月の痛みの緩和が可能であることが示唆されています。

この慢性痛はアメリカでも問題になっているようで、様々な推計がありますが2018年の調査では、アメリカの成人の20%が慢性痛を経験し8%が日常生活に影響を与えるほどの深刻な痛みをかかえていることが分かっています。

痛みを和らげる治療法は数多くありますが、ほとんど場合が短時間の緩和しかできません。モルヒネ類のようなオピオイドといった強力な麻薬性鎮痛薬を使えば痛みを大きく軽減することはできますが、依存症やその他の深刻な副作用のリスクもあります。

研究チームは「SCN9A」という遺伝子に関する論文に注目しました。

この遺伝子は脳や脊髄以外の神経細胞、末梢神経でよく発現していますが、SCN9A遺伝子が機能しなくなる突然変異があると、人が痛みを認識したり感じたりすることがなくなり、またSCN9Aの発現を増加させる突然変異があると、痛みに対する感受性が高くなります。

SCN9Aはナトリウムチャンネル特にNav1.7と呼ばれるサブタイプを制御します。神経細胞に存在するNav1.7は、脳に送られる痛みのシグナルを認識するのに重要な役割を果たしていると考えられています。

これに注目した研究チームは、遺伝子治療によってNav1.7の働きを安全に弱める方法が見つかれば、慢性痛を抑えることができると考えました。

そこで最近開発されたゲノム編集技術のひとつクリスパー・キャス9とジンクフィンガータンパク質を利用した手法を、一般的な2つの遺伝子操作実験をマウスに行いました。これはSCN9A/Nav1.7の発現を永久に止めるのではなく、一時的にブロックするための方法です。

遺伝子治療を受けたマウスは、痛みに対する耐性が高くなり、全般的に痛みの緩和が長続きしました。

今後霊長類での実験を行うとしていますが、遺伝子編集技術を使ってどんな操作をするのか分かりませんが、いよいよ遺伝子操作によって治療をするというような時代になりつつあるのかもしれません。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿