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マラリアワクチンの開発が加速

2019-06-15 10:24:49 | その他
マラリアは日本には全く入っていませんので、話題になることは少ないのですが、世界的に見ると現在でも最も多くの患者が発生する非常に危険な感染症と言えます。

抗マラリア薬は古くから使われているキニーネをはじめとして、多くの薬剤が開発されていますが、それでもまだ患者数や死亡者数は減少していません。

そこでマラリアのワクチン開発が盛んになってきました。何十年という研究期間にもかかわらず、マラリアワクチンはいまだに広く利用可能なものにはなっていません。

第1の理由は、マラリアを引き起こす微生物であるマラリア原虫のライフサイクルが非常に複雑である点です。比較的シンプルなライフサイクルを持つ細菌やウイルスと違い、この寄生原虫は蚊の体内でもヒトの体内でも発育します。

特に難しい課題は、特定の細胞型の中にいる寄生生物を、他の細胞型に侵入する前に、例えば肝臓から赤血球に侵入する前に標的にすることです。これはマラリア原虫の一つひとつのステージが非常に短い事によります。

第2の理由は、ワクチンは「人体に本来備わっている免疫システムに対して、侵入者と戦うように促す」ものです。例えばインフルエンザの場合は、不活化したウイルスを接種して抗体の産生を大幅に増加させ、この抗体が外界に存在するウイルスから守ってくれるわけです。

しかしマラリア原虫から身体を守るには、ウイルスよりずっと高度な免疫反応が必要なことが、これまでの研究で分かっています。現在までに二つのマラリアワクチンが開発途上にあります。

そのひとつである「RTS」というワクチンがアフリカで臨床試験が行われました。5か月から17カ月の乳児のグループを対象とした臨床試験で、RSTはマラリアを40%近く減らすことができました。この結果を受け世界保健機構(WHO)は、このワクチンの試験的導入を進めています。

もう一つはマラリア原虫のタンパク質を使う代わりに、低線量の放射線によって不活化したマラリア原虫全体を使うワクチンも開発されつつあります。「PfSPZ」と名付けられたこのワクチンは、2017年にマリで研究されています。

この治験では、プラセボ(偽薬)を与えられた参加者は93%マラリアに感染したのにたいし、ワクチンを投与された参加者は66%に留まりました。このように現在開発中のワクチンはまだ防止率は低いのですが、確実に進歩していることは確かなようです。

こういったワクチンを作るためには、蚊の唾液腺から1匹ずつマラリア原虫を取り出すという、大変な作業が必要となっています。

年間2億2000万人が感染し、50万人近くが死亡するという感染症を少しでも減らすように、こういった研究は応援したいものです。

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