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競争に負けるミジンコは休眠卵で生き残る

2024-06-26 10:31:20 | 自然
動物性プランクトンであるミジンコは面白い生き残り戦略を持っているようです。

東北大学などの研究グループが、異なるミジンコが共存している場合、飼育下では負けて絶滅する側の集団が、休眠卵を早めに産むことで長期に生き残る戦略をとっていることを明らかにしました。

9年にわたる観測で休眠卵が不適な環境を乗り越えるだけでなく、競争による絶滅の回避や共存にも重要であることが分りました。ミジンコ類は湖沼に生息する代表的な動物プランクトンで、日本にいるミジンコは北米大陸からの侵入種です。

オスとメスが交尾して子供ができることはなく、単為生殖によってクローンを生産し続けます。水温20度下では約3日のペースで全く同じ遺伝子を持つ卵を育房に産み、脱皮時にクローンである子供が外に出ます。

子供は約1週間で成熟して卵を産むようになります。温度が低く餌となる植物プランクトンが取れない冬は、体外に産み出した乾燥にも耐えることができる休眠卵が湖沼の底に沈んだまま春を待ちます。

東北大学の研究グループは、山形県にある広さ約19ヘクタール、最深部約8メートルの畑谷大沼に、見た目や住む場所、食べる餌はほぼ同じだが遺伝子型は異なるミジンコ2集団(JPN1とJPN2)がいることに気づきました。

研究グループは2009年から2018年まで1カ月に1度調査に通い、2集団の個体数を記録しました。調査時にはミジンコを捕まえて1匹ごとにDNAを取り出して遺伝子配列を読み取り、JNP1かJNP2を特定しました。

それぞれの個体密度と割合を求めると、おおむねJNP1の方がJNP2より多くなっていました。室内で水層に同じ数のJNP1とJNP2を入れて育てる実験をすると、JNP1が競争に勝って数を増やし、JNP2は絶滅することから2集団ではJNP1が競争優位集団でJNP2は劣位集団となります。

室内飼育だとJNP2は絶滅しますが、野外では毎年生き残っています。これは休眠卵の数自体が多いためではないかと考え、湖底にある休眠卵を数えると差はありませんでした。

個体数はJNP2の方が少ないのにもかかわらず、休眠卵数に差がないのは、JNP2の個体あたりの休眠卵数が多いことを示しています。

JNP1とJNP2をべつべつの水槽に入れて高密度で飼育してから、この飼育水を用意して実験を行うと、JNP1を高密度で育てた飼育水に入れられたJNP2は即座に休眠卵を産み始めました。一方JNP1では同様の環境で休眠卵の増加はみられませんでした。

野外観察と室内実験の結果から、競争では劣位なJNP2集団が優位なJNP1集団と長期にわたって共存しているのは、JNP2が競争者の増加を察知し、排除される前に休眠卵を産むことで翌年以後の個体群を形成できるからだと分かりました。

この休眠卵を用いた自然の生き残り戦略は、なかなか優れたものと感じました。 


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