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ドライアイを防ぐ特殊な脂質

2020-05-17 10:19:05 | 自然
涙に含まれる特殊な脂質がドライアイを防いでいる仕組みを、北海道大学の研究グループがマウスを使った実験で解明しました。

ドライアイの主な原因は涙の外側に存在する油層の異常ですが、従来はその仕組みが分からず、油層の異常を標的とする薬はありませんでした。

パソコンやスマフォの使用などでドライアイの患者が増えるなか、効果的な治療薬の開発につながると期待されています。眼球を覆う涙のうち、空気と接する外側の部分には油層があり、これが内側の液相の水分の蒸発を防ぐ障壁の役目をしています。

油層の脂質は、まぶたの裏側にある「マイボーム腺」と呼ばれる器官から分泌されます。この様に水と油の層が安定している仕組みの解明は涙研究の重要な課題でした。

油層には、水と油の両方に溶けやすい性質を持つ特殊な脂質「オーファ(OAHFA)」が少量だけ存在します。

これはオメガ水酸化脂質と呼ばれる物質の一種で、グループはこれが液層と水に溶けにくい大部分の油層との間をつなぎとめている可能性があるとみて、まずオーファを作り出す酵素を特定しました。

次にこの酵素の遺伝子を皮膚以外で欠損したマウスを作り、目に異変がないかを調べました。この遺伝子を完全に欠損させたマウスは、生後すぐに死亡することが明らかとなっています。

グループは欠損部位を色々変えることにより、皮膚には発現させるようにすると、死亡することないマウスを作ることに成功しました。このマウスはまぶたが閉じ気味で、涙が下まぶたにたまっていました。

またマイボーム腺の異常のため脂質が減って水分が蒸発し、ドライアイになっていました。この酵素がないことにより、オーファが正常なマウスの約20%しかないほか、正常なマウスにはあるオーファ以外の他のオメガ水酸化脂質も消えていることが分かりました。

正常なマウスでは涙中の脂質が水に溶けやすいものから、溶けにくいものへと層状に分布することで液層を上手におおい、ドライアイを防いでいることも解明しました。

ドライアイの原因の8割は油層の異常とされますが、治療薬は今のところ液層に働く物しかないようです。

研究グループは、ドライアイの防止に油層の正常な形成が重要であることを、実験で明らかにしたことは大きく、油層をターゲットにした目薬、さらには飲み薬なのど開発につながると期待されるとしています。

私は最近特にパソコンを見ている時間が長くなりましたが、今のところドライアイの症状は出ていません。目というのは最も重要な情報収集器官ですので、こういった研究はなかなか面白いと感じています。


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