ごっとさんのブログ

病気を治すのは薬ではなく自分自身
  
   薬と猫と時々時事

薬が患者さんに届くまで

2015-02-23 10:44:42 | 
このところ薬の話から遠ざかっていたので、効き目を確認してから薬になるまでの話です。
前にも書きましたが、合成した薬に良い効果が出たものは、動物実験に進み病気の動物を治すことができるかを調べます。この試験にパスすると、開発に向けた色々な研究がスタートしますが、これ以後は私の手を離れてしまいますので、経過を見守ることになります。

まず重要なものが製剤研究です。薬の剤形には大きく分けて2種類あり、口から飲む経口剤と注射剤です。薬の種類で長期間使用するようなものは、経口剤でなくてはいけないし、重症になり入院しているような場合は注射剤のほうが適しています。しかし使いやすさからいえば、両方の剤形があることが望ましいといえます。薬の種類によっては、経口吸収性がほとんどない場合もあります。一般に水溶性が非常に高い薬は、あまり腸管吸収はよくなく、これは作っている段階で予測できます。

まず注射剤とする場合ですが、近年の薬はどうしても複雑な構造をもったものになります。薬をなるべく単純な構造にするというのは、我々合成するものの目標ですが、すでに単純なものは開発されつくしているのが現状です。ですからどうしても複雑な構造になると、水に溶けにくくなってしまいます。注射剤は水溶液ですので、水に溶けないものをいかに薬剤にするかが製剤研究者の腕の見せ所となるわけです。大部分が乳化という手法を用いています。この代表的なものが牛乳ですが、この中には水に溶けない成分がたくさん入っています。これをタンパク質の力によって、ナノオーダーという非常に細かい粒子にして、水の中に分散さているものです。薬も牛乳の真似をして、害のないその薬に最も適した乳化剤を探し、細かい分散液を開発するのです。この分散している微粒子は、いろいろな濃度でも安定でなくてはいけません。注射薬は、点滴の中に入れることも多いので、薄められても均一になることが要求されます。そのほか細かい留意点はたくさんあるのですが、大体こんな感じで注射剤が作られます。

経口剤の問題点は、もちろん腸管吸収性ですが、それ以前に胃の中は胃酸によってかなり強い酸性になっています。ですからその薬が酸に安定かどうかが重要になってきます。作る方もそのあたりは考慮しているのですが、酸安定性がそれほど高くないものもできてしまいます。この対処としては、錠剤やカプセルが胃の中では溶けず、腸まで行って溶ける工夫がされます。経口剤は、必ずしも水に溶ける必要はないのですが、消化管の中は基本的に水ですので、やはり溶けたときにうまく分散しなければいけません。

これ以外にも製剤研究の過程で、解決しなければいけない問題はいろいろあるのですが、こういった部分をすべて解決して、やっと薬の剤形が決定できるわけです。

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