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バニラの香りに鎮痛や筋弛緩作用

2019-06-04 10:20:41 | 化学
普段よく出会うバニラの香りでリラックスできるという研究が発表されました。

川崎医療福祉大学の研究グループは、バニラの香りの主成分「バニリン」に痛みに対する感受性を低下させたり、筋肉の緊張を緩めたりする作用があることをマウスの実験で突き止めました。

研究グループは、手軽なリラックス法として人気がある香りの効果に着目しました。菓子や香料などに広く使われているバニラのほか、マツタケ、ブドウ、バラの香りでも試験しました。

実験はバニラの香りを20分嗅いた群と、嗅がなかった群にそれぞれ10匹ずつ分けて行動を比較しました。バニリンを嗅いだ群では、55℃に温めた板の上に乗せたところ、脚をひっこめるるなど熱さに反応するまでの時間が平均約6秒かかり、対照となる群(約4秒)よりも長くなりました。

金網を引っ張り握力を測定する実験でも、バニリンを嗅いだ群の方が平均15%ほど弱くなり、バニラ以外の香りでは大きな差は出ませんでした。この実験だけでは、鎮痛作用や筋弛緩作用があるとの結論は難しいのですが、その他の色々な実験から結論を出したようです。

このバニリンという化合物は本当に強いバニラの香りがあり、この容器のふたを開けただけで実験室中に香りが充満するほどです。

余談ですがこの構造式と匂いというのは非常に面白く、特にバニリンと類似化合物は一部の置換基が代わるだけで、ミントの香りなど色々な植物の香りとなります。

この構造にはメトキシフェノールという特徴があり、これにアミンが入るとドーパミンなどの神経伝達物質と類似の構造となります。たぶんこの部分構造が人間のレセプターとの相性が良く、嗅覚などに強く作用するのかもしれません。

またこの仲間であるフェネチルアミン系の化合物は、さまざまな覚せい剤とも構造が類似しており、バニリン系化合物というのは人体に非常に多くの作用をする基本骨格と言えるのかもしれません。

こういった構造的な意味からも、バニリンが筋弛緩作用などのリラックスさせる効果が出るのも理解できるような気がします。研究グループによると、バニリンは痛みなどに関与する特定の神経の経路に作用しているとみられるようです。

詳しいメカニズムはわかりませんが、バニリンを吸入することで鎮痛や筋弛緩作用が得られることは確認できたとしています。新たなリラックス法の提案だけでなく、香り成分を活用した新薬の開発にもつながる可能性があるようです。

バニリンだけでなくこの類似化合物は、人間に対しての受容体結合物質という点での宝庫かもしれません。

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