ごっとさんのブログ

病気を治すのは薬ではなく自分自身
  
   薬と猫と時々時事

100兆の「腸内細菌」健康に影響

2018-02-18 10:42:35 | 自然
腸にすむ「腸内細菌」が、体の様々な機能や病気に影響していることが最新研究で明らかとなってきています。

菌の力で炎症を抑える薬の開発や、健康な人の便にいる菌を腸の難病患者に移植する便微生物移植など、医療への応用も加速しています。

腎機能が次第に低下する慢性腎臓病は、国内の患者数が1300万人に上ります。この病気が、腸内環境の影響を受けている可能性を東北大学や慶応大学のチームが2017年に発表しました。

腎不全になると血中にたまる毒素の一部を、腸内細菌が作っていることがマウスの実験でわかりました。一方、人工的に腸内を無菌にしたマウスは、普通のマウスより腎機能の障害が悪化しやすく、菌が作る単鎖脂肪酸やアミノ酸が、腎臓を守る働きをしているようです。

人の大腸は長さ1.5メートル、小腸は6~7メートルもあり、あわせて1000種類、100兆個以上の菌が住んでいます。これが食べ物を分解したり、栄養素や毒素を作ったりしています。栄養素などは腸から吸収されて全身をめぐり、宿主である人の生命活動に様々な影響を与えますが、その詳しい実態は長らく未知の状態でした。

それが近年明らかになってきたのは、「次世代シーケンサー」などの遺伝子解析装置の進歩です。慢性腎臓病のほか、糖尿病や大腸ガンなど多くの病で、腸内環境の影響が報告されています。

無菌マウスは落ち着きがなく、ストレスに弱いという実験結果など、脳に与える影響も注目されています。多くの病気との関係が明らかになるのに伴い、医療応用を目指した研究も加速しています。

例えば、クロストリジウムという菌のうち17種類が、過剰な免疫反応を抑える「制御性T細胞」を増やすことを、東京大学などの研究チームが発見しました。これらの菌は炎症性疾患に効くと期待され、アメリカの企業が創薬に乗り出しています。

このような有用な菌を特定するのは簡単でないため、健康な人の腸内細菌を丸ごと移植する「便微生物移植」も注目されています。順天堂大学では、難病の潰瘍性大腸炎の患者に抗生物質を投与して、腸内環境をリセットしてから健康な人の腸内細菌を移植する臨床研究に取り組んでいます。

腸内細菌の構成は、居住国によっても大きく異なります。例えば約9割の日本人が、のりやワカメを分解する酵素の遺伝子を持っていますが、アメリカや中国などの計11か国の人では、この遺伝子を持った細菌のいる割合は約15%という結果も出ています。

日本人の腸内細菌の構成は、同じアジア圏内の中国人より、オーストリア人やフランス人などと似ていることも判明したようです。このように腸内細菌の特徴には、人種や地理的な近さ、食習慣では説明できない何かがあるようです。 


山下洋輔コンサートに行ってきました

2018-02-17 11:00:20 | 音楽
久しぶりにジャズピアニストの山下洋輔のコンサートに行ってきました。

今回は珍しく東京フィルハーモニー交響楽団との共演ということで、会場の東京オペラシティのコンサートホールとなかなか良いところですので楽しみにしていました。

開演は7時からでしたので、少し早く行きオペラシティの中で軽く夕食を摂るつもりで出かけました。ところが新宿で京王線と京王新線を間違えそうになり、かなり時間を取られてしまいました。やはり東京はすこし行かないといろいろ新しいことが起きており、田舎者は戸惑うことが多いようです。

やむを得ず駅の売店でサンドイッチを買い、コンサートホールのラウンジでワインを飲みながら簡単な夕食となりましたが、音楽会の雰囲気は楽しめました。

最初の演奏は東京フィルのジャズ作曲家の曲でしたが、それほど印象に残る曲ではありませんでした。席は2階の最前列で、ステージもよく見えなかなか良い場所でした。

2曲目からはピアノが中央に移され、いよいよ山下さんの登場で、曲目は2007年に山下さんが作曲したピアノ協奏曲第3番でした。メインテーマはかなりジャズらしい雰囲気の曲がオーケストラとピアノで交互に表れていました。ピアノ協奏曲といってもクラシックとは違い、特に第3楽章はジャズのビッグバンド風の雰囲気もかなり出ており、楽しい曲となっていました。

ここで20分ほどの休憩があり、配られたパンフレットに目を通したりしていましたが、楽曲の解説はなかなか面白いものでした。後半はやはり山下洋輔作曲のピアノ協奏曲第1番「Encounter」が演奏されました。

この曲は随所に山下さんのピアノ曲フレーズが組み込まれており、オーケストラとピアノがパンフレットによれば「ああ言えばこう言う」という掛け合いが見事でした。山下さんの演奏は相変わらずダイナミックなものでしたが、さすがにフルオーケストラには飲み込まれてしまうという場面もありました。

第4楽章では和太鼓が加わり、これにより日本の祭りという雰囲気が出てきました。こういった和楽器が一つリズムを刻むだけで、曲の感じが変わり、オーケストラとピアノともうまく馴染んでしまうというところが、やはり基本はジャズなのかもしれません。

アンコールは挨拶だけかと思っていましたが、ジャズのスタンダードの演奏がありました。やはりこういった曲もフルオーケストラでやると迫力がありました。

こういった山下さんが楽しそうに演奏しているのを見ると、音楽の良さが伝わってくるような気がします。11時過ぎの帰宅となりやや疲れましたが、良い1日となりました。

インフルエンザの特効薬?

2018-02-16 10:46:20 | 
3月にも厚生労働省が承認予定のインフルエンザの新薬、ゾフルーザが注目を集めているようです。

私も昨年12月初めにインフルエンザに罹った時、タミフルを処方されました。この薬が効いたのかあまりひどい症状にならず治りました。

しかし私はこういったウイルス疾患の場合は、薬など使わなくとも人間の免疫力だけで十分やっつけることができるはずですので、極端に免疫が低下している人以外は抗ウイルス薬を使う必要はないと思っています。

特にインフルエンザなどは、それほど重い症状になるわけではなく、2,3日寝ていれば治る病気ですので、特に必要性が低いと感じています。何種類かのインフルエンザの薬が出てからインフルエンザによる重篤な症状が減っているのか、検証が必要な気がします。

現在主なインフルエンザ治療薬は、タミフル(錠剤)、リレンザ(吸入薬)、イナビル(吸入薬)、ラピアクタ(点滴)の4種類があります。吸入薬は、子どもや咳が出る人には効果が低いとされており、タミフルも子どもが使用した場合、異常行動を起こしたという事例がある(私は副作用ではなく、脳症だと思っていますが)ため、子どもには処方しないのが通例のようで、現状のインフルエンザ治療薬には課題が多くあるようです。

そこで現在、インフルエンザ治療薬の新薬「ゾフルーザ」が注目されています。従来の治療薬は、ウイルスが細胞の外に広がるのを防ぐ効果があるとされていますが、ゾフルーザは、ウイルスの増殖自体を防ぐ効果があり、1回服用するだけでもかなりの効果が期待できるとされています。

これは従来の治療薬がノイラミニダーゼ阻害という作用で、いわば細胞内で増えたウイルスは、細胞に固定されておりそれを外す酵素を阻害しているものです。

ところが新薬は、エンドヌクレアーゼ阻害剤というウイルスのRNAの複製を阻害するため、増殖自体ができなくなる作用機構となっています。この作用の違いで新薬は1回の投与で十分な効果が出るとされているようです。

そのため同じ飲み薬で5日間飲むものと1回飲むものを比較した時に、タミフルが新薬に置き換わっていく可能性は高いようです。従来の治療薬では満足な効果が得られなかった人も、ゾフルーザの登場でインフルエンザを効果的に治療できるかもしれないと期待されています。

私は治療薬は必要ないという考えは変わっていませんが、簡単に治るようになり1回飲むだけという簡単な操作で済むのであれば、使っても良いという気はしています。


「健康な肥満」のカギ?発見

2018-02-15 10:44:41 | 健康・医療
神戸薬科大学の研究チームが、肥満の人のうちメタボリック症候群になりやすい「高リスク肥満」と、なりにくい「健康な肥満」の差を作り出しているとみられるタンパク質をマウスの実験で見つけたと発表しました。

メタボリック症候群が引き起こす糖尿病などの新薬開発につながると期待される成果です。
研究チームは、肥満による症状の差を解明しようと、脂肪細胞の働きに着目しました。正常な細胞に多く、肥満になると減るタンパク質Fam13aを発見しました。

余談ですが、私が数年前COPDになりかかっていると診断され、これに関する情報を集めていた時、このタンパク質が出てきました。確か喫煙者又は元喫煙者を集め、COPDの兆候が出ている群と全く健康な群に分け、その差がどこか来ているかを調べる実験で出てきたのがこのFam13aでした。

これは直接タンパク質を調べたわけではなく、その遺伝情報からこのタンパク質をコードする遺伝子に変異があると、COPDを発症するというものでした。このタンパク質はその他色々な機能があるようで、この抗体も実験用に開発されているようです。

本題に戻りますが、このタンパク質が多いマウスと全く持たないマウスを使い、血糖値を下げるインスリンの効果を調べたところ、タンパク質が多い場合は太らせてもインスリンの効果は低下しませんでした。

一方タンパク質がないと、痩せていてもインスリンの効きが弱く、太らせると糖尿病の兆候が顕著に表れました。

日本国内では、40歳以上の男性の2人に1人、女性の5人に1人がメタボリック症候群かその予備軍とされ、総数は2千万人に上ると推定されています。メタボリック症候群は「内臓脂肪症候群」とも呼ばれ、複数の病気や異常が重なっている状態を表します。

内臓脂肪の蓄積によって、高血圧や糖尿病、高脂血症などの生活習慣病の重なりが起こっていることを示しています。この状態は、心筋梗塞や脳梗塞の原因となる動脈硬化を急速に進行させてしまいます。

それぞれの病気の診断基準を満たさない予備軍や軽症の状態でも、それらが2つ3つと重なっている場合は、動脈硬化の進行予防という観点からすでに手を打たなければいけない状態といえるようです。

こういった定義からは今回の成果は、単に糖尿病に関する発見だけであり、メタボリック症候群全体に関与しているかは微妙なような気がします。

研究チームは、このタンパク質がメタボになるかならないかの差を生んでいる可能性が高く、増減の仕組みを解明できれば、糖尿病の治療や予防につながるとコメントしています。


ゲノム合成開発加速

2018-02-14 10:43:35 | 化学
生物のゲノム(全遺伝子情報)を人工合成する技術の開発が国内外で進みつつあるようです。

最近天然痘と類似のウイルスが人工的に合成できたという発表があり、賛否を含めた議論が活発になっているようです。研究としては合成の費用を10年で千分の1にする計画も始まっています。一方で、生物兵器やバイオテロへの悪用も懸念されています。

ウイルスを人工的に合成したのは、カナダのアルバータ大学とアメリカ製薬会社で、天然痘ワクチンの改良などを目的に行いました。研究チームは、約21万2600塩基対ある馬痘ウイルスの全遺伝情報を担うDNAの塩基配列を、10個の断片に分割しました。

各断片の作製を民間会社に発注し、送られてきた断片を実験室でつなぎ合わせて完全なDNAを合成し、生物の細胞に感染して増殖する能力があることも実験で確認しました。

こう書くと簡単なような感じになりますが、このDNA合成は基本的には有機化学です。実際核酸塩基というのは4種類しかありませんので、いわば原料の準備も単純で、反応的に言うとリン酸エステルを作るだけのものです。

私はあまりこの核酸合成はやっていませんが、40年ほど前私が勤務していた研究所でこのDNAの自動合成機を購入する際に、その検証をやった程度です。当時は10~20個程度の核酸をつなげるだけでしたが、やはりいろいろ問題があり自動とはいえ難しい手順が必要でした。

反応自身は非常に収率よく進むのですが、それでも若干の不純物が混入してしまいます。その精製操作も半自動ですが、それなりの工夫をしないと純度の良いものが取れませんでした。当然その後こういった自動合成機は進歩したはずですが、1万以上をミスなくつなげていくというのは、どんな困難があるのか予想もできません。

さて今回は馬痘ウイルスですが、これはヒトには感染せず発病することは有りません。しかしこの技術を使うと人に感染する天然痘ウイルスを作製できる可能性が高く、海外の専門家が懸念を示しています。極端な意見では、この論文は出版されるべきではなかったとか、バイオセキュリティー(生物学的脅威への対策)の失敗などと批判しています。

しかし私は、今回のウイルスを作り出せたということは、ゲノム関連化学の大きな進展であり評価されることと思います。実際に天然痘ウイルスは自然界に存在する状態で、わざわざ人工合成する必要など全くないと考えています。

どうも過去の戦争で使われた生物兵器や化学兵器に少しでも関連がありそうな事象に、あまりにも過敏に反応し過ぎているような気がします。