今夜のBSプレミアムは、歌舞伎役者・坂東玉三郎が、ストックホルム出身の
グレタ・ガルボの足跡を辿るドキュメンタリー番組だった。20世紀初めハリウッド
映画界で活躍し、今も伝説の女優と名高いG・ガルボ。
ガルボに共通点を感じるという玉三郎が、今回初めて明らかにされたガルボの
恋文17通やガルボを知る人々を取材して、彼女の真実を解明しようとしていた。
豊かで美しい北欧ストックホルムの自然の中、玉三郎が紐解くミステリアスな
ガルボの生涯に、驚きを禁じえなかった。若くして映画界を引退し、故郷に帰る
こともならず謎多い生涯をアメリカで閉じた往年の女優を、痛ましく悼んだ。
玉三郎の抑えたナレーションも良かったし、マーラーのアダージョットも物悲しく、
緑したたる森の墓地に眠るガルボに捧げられたオレンジ色の薔薇に、玉三郎の
想いが伝わってきた。自らも歌舞伎の女形役者として生きる玉三郎の、永遠なる
美しきものへの憧憬が感じられる、上質なドキュメンタリーであった。