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『COYOTE』寸評

2007-06-17 10:52:02 | 佐野元春

そういう時代なのか、
最近のポップソングには、むずかしく表現されたものが多い気がする。

そんななかで佐野元春の新作『COYOTE』は、
独特な言いまわしと、ありきたりでない視点と、精神の調べを感じさせる表現をもって、
荒地と化した現代社会をCOYOTEと呼ばれるある架空の男の視点を通じて
みごとに造形化している。

COYOTE(初回限定盤)(DVD付)  COYOTE (初回限定盤)(DVD付)

 佐野 元春
 価格:¥ 3,500(税込)
 発売日:2007-06-13


このアルバムのキーワードは、佐野さん自身が語っているように"Younger"。
「若々しく」はあるが、けっして粗野・稚拙-Young-じゃない。
若いミュージシャンとのコラボによる化学反応が楽しい今作だが、
イチかバチか or 偶然のサムシングじゃなく、
クールな計算が垣間見える作品に仕上がっている。
まさに、佐野元春の真骨頂だ。

人間の情熱の量などたかが知れたものだが、
ときに巨大な量を持って生まれざるをえなかった人がいる。
佐野元春が、その一人である。

佐野さんにおける生命の炎というべきものは、
もし彼がアーティストじゃなかったならば、不必要に多量すぎる。
佐野さんは幸いミュージシャンであったために、
その火に灼かれることなく生きつづけることができた。
佐野さんはその火を包みこんで発光させる作業をしつづけてきたが、
若いころは、白炎のようなその気体が、
オブラートに包みきれることなしに、生の炎として噴きだしていた。

この『COYOTE』は、多くのキャリアを経て成熟したサウンド・プロダクションでありながら、
ひさしぶりに佐野さんの生の炎-狂気といってもいい-を感じることができる作品だ。
僕は、佐野元春というミュージシャンを同時代に得たことに、誰彼なしに感謝をしたい。