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とは言え、政局も世相もあいかわらずのカオス状態だ。
余談だが、「政局」に相当する英語はないらしい。
辛うじて「 the political situation 」という慣用句があるらしいが、
厳密には日本語の「政局」とは趣を異にする語感だという。
さて、政治家の先生たちの間ではよく、
現代の政治の混迷具合を幕末になぞらえて、「平成維新」などといったりする。
しかし、僕がみるところ、今の政治家に
坂本龍馬、高杉晋作、西郷隆盛、大久保利通…etc
といった維新の志士らしきひとは見当たらない。
もちろん、篤姫などいるはずもない。
平成の御代の政治的混迷は、「維新」なんかじゃなく、
さしずめ「応仁の乱」もどきだろう。
山名宗全のような二流の権力者たちが、民衆を置き去りにして、
大義もなく、正義もなく、道議もないままに、
エゴイスティックな勢力争いや家督争いに明け暮れて、日本中を瓦礫の山にしている。
まさに応仁の乱だ!
乱後まもなく書かれた『応仁記』に、当時の世相を呪う記述がある。
以下に孫引きする。
万民憂悲苦悩シテ、夏ノ世ノ民ガ桀王ノ妄悪ヲ恨ンデ、コノ日何カ亡バン。我、爾トトモニ亡バント謳ヒシガゴトシ。モシコノ時、忠臣アラバ、ナドカコレヲ諌メ奉ラザランヤ。シカレドモ、タダ天下ハ破レバ破レヨ、世間ハ滅ババ滅ビヨ、人ハトモアレ我身サヘ富貴ナラバ、他ヨリ一段瑩羹様ニ振ル舞ハント成リ行ケリ。
〈以下、いい加減な意訳〉
武家も大変なら、民衆も生活に困っている。かつて中国の夏国で、桀王の悪政に民衆が怒り、王を道づれにして滅んでやる、といいあったのと同じだ。もし、こういうときに忠義の臣がいれば、王や将軍にきびしく意見をいうだろう。しかし、今の風潮は「天下は滅びるなら滅びればいい、世の中が乱れるなら乱れればいい。他人はどうあろうとも、自分さえ豊かであればいい、他人よりきらびやかな生活がしたい」というような状態になってしまった。
歴史では、
応仁の乱により下克上の風潮が強まり、日本は戦国時代に向かうことになる。
もし、本当に今が平成維新の黎明期だとすれば、
現代の日本に維新の志士は現れるのだろうか?