内的自己対話-川の畔のささめごと

日々考えていることをフランスから発信しています。自分の研究生活に関わる話題が多いですが、時に日常生活雑記も含まれます。

集中講義第一日目

2016-07-26 00:16:35 | 講義の余白から

 昨日25日から集中講義が始まった。「現代哲学特殊演習②」という科目名の博士前期課程選択科目の一つである。毎年のことだが、初日になってみないと実際に何人出席するのかわからない。登録名簿には七名記載されていたが、実際に出席したのは前期課程一年生の四名。他の三名について出席者に聞いてみらたら、一名はそもそも前期全然出席しておらず、一名は仕事の関係で時間の都合がつかないらしいとのこと、一名は二年生で彼らもよく知らないらしい。昨日は、第四日目の和辻哲郎をテーマにする日を担当してくれる大学院生も出席してくれた。
 学生たち四人とは昨日が初顔合わせであるから、最初は、例年通り、演習の進め方についてあれこれと小一時間ほど、ときどき脱線しながら説明する。
 続いて、今回の演習のテーマである「技術・身体・倫理」への導入として、村田純一『技術の哲学』(岩波書店、2009年)序章「なぜ、現在、技術は哲学の根本問題となるのだろうか?」を一緒に読み、今、技術を哲学の問題として考えることの重要性について、いくらかでも共通理解を得るところから、実質的に演習を始めた。
 ところどころで学生たちに問いかけたところ、最初からかなり積極的に反応してくれ、しかも面白い質問や的を得たコメントが返ってきた。幸先の良い滑り出しである。
 それに、私と学生たちだけだと、初対面ということもあり、どうしても学生たちの方が気後れしがちなのだが、今回は博士論文準備中の他大学の院生が積極的に参加してくれたことで、より議論しやすい空気が醸成されたと思う。これはまさに望んでいた通りであった。
 学生たちは、西田の『善の研究』を学部時代に演習で読んだ以外には、まったく日本の哲学者を読んだことがないとのことだった。これは毎年同様で、特に驚くに当たらない。
 『技術の哲学』序章を走り読みした後、西田、三木については、私が両者の哲学についてそれぞれ簡略な図式的説明を示し、和辻については院生に同様な説明をお願いした。その説明の後、学生たちに質問を促すと、四人中三人は和辻についての質問であった。やはり三人の中では一番取っ掛かりが見つけやすいからだろうか。
 第二日目以降の課題を与えた後、残りの時間で、技術というテーマについて自由に感想を述べてもらった。それぞれ技術について持っているイメージが随分違うのが面白かった。
 今日26日の第二日目から28日の第四日までは、西田、三木、和辻のテキストをそれぞれ読みながらの議論になる。実りある演習にするべくこちらも準備したい。