内的自己対話-川の畔のささめごと

日々考えていることをフランスから発信しています。自分の研究生活に関わる話題が多いですが、時に日常生活雑記も含まれます。

テツガクシャは黒服がお好き? ― 稀代の晩学K先生の随筆集『テツガクより愛を込めて』(絶版)より

2019-11-18 21:53:33 | 哲学

 先週金曜日のことでした。授業を終えて、教室を出ようとしていたら、いつも最前列に座って熱心にノートを取りながら授業を聴いてくれている女子学生が、「先生、哲学の先生はなんでいつも黒い服を着ているのですか」と日本語で聞いてきました。ちょっと質問の意図を解しかねていると、「だって、先生はいつも黒い服を着ているし、私の高校の時の哲学の先生もいつも黒い服を着ていたんですよ」と言うんですね。
 「ああ、私の場合はね、火曜日の授業は全部日本語でやっているでしょ。それを担当している〇〇先生と今日の授業を担当している私□□とは「別人」だよっていうつもりで、火曜日は明るい色の服、金曜日は黒ずくめって決めているだけで、哲学とは関係ないよ」と答えたら、隣に座っていた学年一番の女子学生と一緒になって大笑いしていました。
 フランスの高校の哲学教師が黒服を好むかどうか知りませんが、私の場合は、ですから、完全に「遊び」です。
 今学期の最初の週、まず火曜日の日本語のみの授業「日本文明・文化」がありました。その日は明るい色の服を着ていきました。同じ週の金曜日の授業「近代日本の歴史と社会」のときは、上から下まで黒ずくめ。授業はフランス語のみ。
 その授業の冒頭、「皆さんは、火曜日に〇〇センセイの日本語のみの授業受けましたよね。彼と私は瓜二つで、名前も同じ、生まれた時間も場所も遺伝子情報もまったく同一なのですが、私と彼は「別人」です。彼はとても優しい先生ですが、私は違います。ものすごく点数も辛いし、性格もひねくれています。だから注意するように」って、真顔で言ったら、学生たち、ものすごく受けていました。
 火曜日と金曜日で私が服装を意識して着分けている(実は眼鏡も変えている!)ことには気づいていないぼんやり学生もいるかもしれません。まあ、それはどうでもいいことなのですが、金曜日の授業を哲学の授業だと思ってくれている学生がいるのは、ちょっと、いや、かなり、嬉しい。